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第二世界  作者: 長月 萩
76/115

本文75 亜人の風習

「ここにいたのね。…テイラーちゃんあなた編み物できたの?」


 コボルト達と編み物をしているテイラーさんを見つけてドミニクさんが意外そうな声をあげた。


「…悪いか」


「そんなこと言って無いじゃない。なんにせよ、出来ないより出来る方が良いに決まってるじゃない。ちょっと意外だっただけよ。シフォンちゃんもチュールちゃんも裁縫出来るらしいし、シザーちゃんは皮革するのよね?あなたも職人志望だったの?」


「俺は…違う。俺は冒険者がやりたいんだ」


「そうなの。…皆暇そうにしてたから、帰る準備してたんだけど、もうちょっといる?グスタフは…そう言えばなんでいるの?」


「弟子の嬢ちゃんがここにおるからの」


 それは逆じゃないのか?普通、師匠に弟子がついて行くんであって、弟子に師匠がついてくるんじゃ無いだろう。それじゃ師匠じゃなくて保護者だよ。…間違ってなさそうな気もするけど。


「庚ちゃんは何してたの?」


「何も出来ないので見学です。皆さん凄いです」

 本当に見てただけだった。


「コボルト達は手先が器用なのよ。指先仕事に技能の適性が有る子が多いわね」


「解らない記号は教えたし、俺も構わん。お前、造らせるならちゃんと教えておけよ」


「何の話よ。あら、それ…」


「秘密。造る。喜ぶ!」


「造って親を驚かせる為に持ち出したのね?いいわ。黙っててあげる。…大人には教えてあったのよ。子供達には親から教えるだろうと思ってたの」


 発想は子供らしい。でもそういう事する子供って、もっと小さい子なんじゃないだろうか?見た目で歳は解らないけど、複雑な模様のセーター編んだりしないと思う…。



「ところで、クエストはもう良いんですか?」


「どうするのか、あいつ等に聞いてみないと。拠点がここのままだが、宿屋に泊まる分には問題無いから、一旦帰って、出直すつもりなのかもしれん。前にそんな事も言っていた」


 そっか。死に戻らなければ問題無いのね。部屋を出て行こうとすると編み物の子達が、彼を呼び止めた。


「ラー、ありがと。これ、お礼。お守り」


 差し出されたそれは、飾り結びで房の上に石が付いた根付けのような物だった。


「あら、良いもの貰ったじゃない。人気有るのよ、それ」



「いいのか?あんなのお礼を貰うような物じゃないんだが…」


 戸惑っているテイラーさんに、そっと近付くと、ドミニクさんが小声で何か言っている。何言っているか聞こえなかったけど、それを聞いたテイラーさんは、目を見開くと、慌てて、受け取り「ありがとう。とっても嬉しいよ」と言っていた。



 気になったので聞いてみる。何を言ったんだろう?


「亜人には色々風習があってね。コボルトでは「お礼」と言って差し出された物を受け取らなかったら、それが気に入らないって意味になるのよ。あの子達を落ち込ませたく無いなら受けとんなさいって言ったの」


「「お礼」の言葉が無ければ別に断っても良いのよ?でも「お礼」の言葉があって受け取らなかったら、用意した人は落ち込むだけじゃなくて、恩人を喜ばせる物を用意出来なかったって、村で軽く見られるようになるのよ」 


 そ、それは怖い風習だ。覚えておかなきゃ。


「他にもそんな風習の有る亜人が居るんですか?」


「ゴブリンは食事を食べ残したら、美味しくなかったって取るわ。手を付ける前に、これは食べられないと言うのは構わないの。こんなに食べ切れません、と言ってもいい。そしたら減らしてくれるから。逆に全部食べて、お代わり要求されたらスッゴく喜ぶわよ。…あの量食べきるのは至難の業だけどね」


 どんな量なのか怖いぞ。


「オークは反対。食べきると足りない、と思って次から次へと出て来るのよ。まぁ、オークの一食も、かなりの量だから、普通は食べきれないんだけどね」


 これは、近所の国の習慣で有りましたな。


「厄介なのがマーマンよ。初めてあったら、かなり盛大にもてなすの。更に帰り際にお土産、と称して大量にしかもすんごい高価な物を渡されるのよ。そこで受け取ったらダメなの。あいつは卑しい奴だ、とされて、次から誰も相手にしてくれなくなるわ。断るのもただ断っただけでは、見る目が無い奴、と下に見られるようになるわ。お土産を褒め称えて、かつ、ここまでして貰う謂われは有りません。おもてなしだけで心から満足しましたって、遠慮しなくちゃいけないの。それを三回繰り返して、四回目に出された物は、有り難く受け取って、初めて対等に扱って貰えるようになるわ」

 

 …なんてしちめんどくさい風習だ。


「これのせいで、マーマンとの交渉は大変だったのよ。この風習が完全に理解されるまではね。でも、一度済ませてしまえば、その後は完全に対等に扱って貰えるから、そんな事も無くなるわ。もてなしもお土産もあっても普通のレベル」


「…それっらって、もし亜人がこっちに来たらしなくちゃいけなかったりするんですか?」


 他はいいさ。マーマンのはしんどかろう。


「それがまた違うのよ。自分の習慣で対応して大丈夫。下手に同じようにしようとしたら、機嫌損ねるわ。特にマーマン。自分達の国の自分達の風習だって、プライドが有るのかしらね」


 本当に厄介だな、マーマン。


「あ、でも、その後行く予定がないなら大量に高価なもの貰ってとんずらとか…」


「それがね、お礼を言って受け取ろうとすると、箱に詰めますって言って一旦全部引き下げるのよ。で、箱詰めされた物を開けると、全部偽物になってるの」


「うわぁ。それは…」


「受け取ろうとした段階で、マーマンからは相手にされなくなるから、文句行う場所も無いしね。最初のうちは、マーマンとはやっていけないんじゃないか、って言われてたわ」


「亜人を魔物と勘違いするぐらいだもの、異邦人はやらかしかねないわよね」


「知らなきゃやらかすでしょうね…」


「あなた達、知り合いに教えてあげてね?他はフォローも効くのよ。コボルトとゴブリンは習慣を知らなかったんだ、って謝り倒せば何とかなるわ。オークは食べ過ぎで調子壊すぐらいで済むわ。実際、際限無く出てくるから、いつか食べきれなくなるし。マーマンだけはやらかしたら取り返しが付かないのよ。その人は一生マーマンと交渉が出来無くなっちゃうのよ」


 マーマン怖い。


「オーガとリザードマンは特に聞いたこと無いわ。マーメイドは友好的種族と言って良いかどうか微妙なのよね。まず一発攻撃してから、相手が友好か敵対か判断する種族だから。認められた一部の人しか交渉してないの。マーマンと違ってほぼ水中生活だから街も水中に有るしね。普通の人は行けないわ」


「一発目で死ななくて、こちらが攻撃しなければ、とても友好的に話しかけてくるらしいのよね」


 マーメイドも怖いな。まず攻撃ってなんだ。どっかの兄弟のように殺してから、では無いだけましなのか?イメージとしてはマーメイドは人魚姫なんだが…。


「マーメイドのイメージが…」


 テイラーさんが呟いてる。だよね。


「マーメイドは見た目が若い女の子だからね。男性は見た目に惑わされる人多いわね。男のマーメイドはマーフォークって言うんだけど、街から出ないのよ。マーメイドの街に行くまで、男性が居るなんて、誰も知らなかったわ」


 マーメイドはアマゾネスだったのか。何でそんな設定になったんだ?誰の趣味だ、運営さん?


「マーマンはどんな外見なんですか?」

 イメージとしては半魚人、上魚の下人なんだけど、マーマンは水中生活じゃないのよね?


「そうね…形状はヒトよ。全身鱗で水掻きがあるの。髪は無いわね。色は色々居るわ」


 想像がつきません!


「半魚人では無いのか?」


「半魚人と呼ばれるのはギルマンね。顔は魚なのよね」


「それも亜人?」


「ギルマンはまだ、よく解ってないのよ。現段階で国の上層部が交渉できないか検証中。いきなり攻撃したりしない方が良いのは変わらないわね」


「あ、上半身が魚のサフアギンてのが居るけど、それは魔物よ。もしかしたら亜人なのでは、って意見も有るんだけど、今はまだ認められてないわ。意志の疎通が全く出来ないのよ。装備持ってたりするから、何らかの文明は有りそうなんだけど、ヒトをみたら攻撃してくるし、生け捕りにしても言葉が通じないのよ。向こうも言葉を発しないから理解が出来ないの」


「ヒトを見かけたら攻撃してくる。ヒトが死ぬか自分が死ぬかまで戦闘を止めない。そんな種族と交流が、持てると思ってる人は少ないわね」


 完全獣形態でもない限り、こちらから先制攻撃をするのは止めた方が良いって事ですかね。





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