本文23 調合始め
朝八時半です。ロイさんの店まで30分近くかかるし、お腹も減って来たので、屋台冷やかしてから向かおう。
…お金はいつまで持つのだろうか。早く調合士にならないと給料が貰えない。そして調合士になるためには先行投資てお金が要るような気がする。道具とか道具とか道具とか…。
木工も役に立つまでは時間掛かるだろうし、杖の金額考えたら当分無給だろうし、てかあっても受け取れない。…餓死したらどうしましょう…
家を探している時も既に結構出てたけど、屋台多い。
腹持ちがいいのが望ましい。と思ったら焼おにぎり有りました。米はいい!素晴らしい!三つ一組で5圓です。値段も素晴らしい!
二つでお腹が膨れました。昼用にもう一組買い求め、ロイさんの店に向かうことにしました。
「おはようございます。やってますか?」
引き戸を開けながら、挨拶をする…けど誰もいない?
あ、奥からロイさんが出てきました。
「おう。早速来たのか。杖はどうだ?」
「凄くつかいやすいです。戦闘は一回しかしてませんけど」
「そうか。手伝いだったな。こっちに来な」
奥に呼ばれた。…店番いいんですかね?
「用がある奴は大声だすから店は気にしなくてもいい」
あら、そうですか。
「さてと、何からやって貰おうかな」
「その事なんですが、お手伝いするのに異論は有りません。寧ろ手伝わせて欲しいのですが、サイモンさんと調合士になる約束もしてるんです。先立つモノが必要なので、クエストもしなくてはいけないかも知れないんです。なので目処が立ってからこちらに来る、と言う形でお願いしたいのですが、いかがでしょう?」
「ふん、じゃあ目処が立つ前にここに来た訳は?」
「昨日はっきりと『何時から』と言う約束をしなかったのと、幾つか聞きたいことがあったからです」
「聞きたいこととは?」
「杖なんですが、接近戦用ですよね。それに小さい物には当てにくい。だから投槍器か投石器みたいな物が無いかと思ったんです。あ、今すぐ必要な訳ではないですよ。少なくとも調合士になるまでは外に出る予定は無いです」
今出たら死ぬ自信があります。
「『投槍器』とはどんなもの指してる?」
記憶にある投槍器を説明する。確かあれは素人でも命中率が良かったはずだ。
「長い棒状なような物に短い槍を置く溝と端に引っ掛ける部分があって、手に持って投げる奴です」
「…アトラアトラだな。ちょっと練習すれば使えるようになる。となると『投石器』は縄状の片手で投げるスリングの事か?」
「はい、多分それです。投石器は扱い難しいと聞いてますので使いこなせるか解らないんですけど」
麻で編んだ奴とか、石置く所は皮で作ってるのとかあった。
「遠距離で弓に行かず何故そっちに行った?」
「弓は両手が常に必要なのと、絶対あるだろうから聞かなくてもいいと思ったんです」
この手のゲームで弓矢が無いことは無いだろう。使えるかどうかは別として。
ちょっと顎に手をあてて考えてる風です。なんだろう?何か変なこと言ったかな?
「調合士と言ってたな。あてはあるのか?」
「全く無いんで、役所にでも聞こうかと思ってます」
「紹介してやる。付いて来い」
さっさと歩き出します。黙って俺に付いて来い、ですか?お店はいいんですか?と思ったらお向かいさんでした。…隣解体してるっていってたよな?看板出してないけど職人さん街なの?ここ?
「爺さん、いるか?」
お約束ではお婆さんでしょう!と心の中ではつっこむ。
「なんじゃ、ロイか。怪我でもしたか?」
「いや。調合士志望の俺の弟子を連れて来た。嬢ちゃん名前なんだった?」
「庚です。あ、あの弟子と言うのは…」
いつの間に弟子入りしたんですか、私。
「嬢ちゃん、この爺さんは薬師だ。毒師でもあるけどな。爺さん、嬢ちゃんを頼んだぞ」
そう言うと帰ってしまいました。え、あの私どうすれば…
「調合士志望とな。なんでじゃ?」
「人と約束したんです。役所に回復ポーションを納めると」
この人は、西門さんと知り合いなんだろうか?…名前は出さない方がいいよな、多分。
「そうか。こっち来なされ」
と奥に入っていきます。…この世界の人黙って俺について来い、な人ばっかなの?話し早くていいけど。
奥は調合場所のようでした。
山のようにある〔薬草〕と乳鉢と乳棒。
「ほれ、使って良いからすり潰せ」
…展開早いよ!?
ゴリゴリゴリゴリゴリゴリ…
「薬師の基本は根気じゃ。まだ荒いぞ。もっと細かく」
薬師じゃなくて調合士なんですけどね。
ゴリゴリゴリゴリ…
「すり潰し終えたらこっちに移すのじゃ。この器が擦り切れいっぱいになるまですり潰せ」
ゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリ…
ゴリゴリゴリゴリゴリゴリ…
…意外と持久力持つな。
「ふむ。そんなもんかの。嬢ちゃん結構力あるな。次はこっちでこれじゃ。皮むきからするのじゃぞ。包丁はここじゃ。皮と種は要らんからの」
リンゴですね。大きめな気がします。クルクル剥くのは面倒なので八つ切りにしてから皮を剥く。八つ切りしたリンゴを薄目に切って、また…ゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリ…
あ、〔調合〕が生えてる。セット!ちょっとは楽になるかしら?ゴリゴリゴリゴリゴリゴリ…あまり変わらない気が…
「そんなもんかのう。では井戸はあっちじゃ。鍋のここまで水を汲んでくるのじゃ」
結構大きな鍋です。水いっぱいに入れて持てるかな?鍋は以外と軽い。このサイズなら運べるだろう。井戸井戸井戸~。滑車考えた人凄いよね~。3回汲んで指定された処まできました。ちゃんと目盛りのある鍋なのね。ふと庭をみると見たような草が大量に生えてる。…まさかな。見なかったことにしよう。
「汲んできました」
「…力あるのう。ポーチ使えば楽なのにのう。いっぱいなのか?ではコンロに火を点ける」
ポーチとボックスの存在忘れてたよ…。
「あ、〔着火〕持ってます」
「火魔法かの?」
「生活魔法です」
そういや魔法(火)も本持ってたな。今度書き写しておこう。
「そうか、そうか。では頼むぞ」
「『着火』」
ちゃんと火が点いてくれました。
「では、蓋をしめて鍋を置いて、水のうちから薬草を入れるのじゃ。薬草はその器の分全部じゃぞ」
了解です!スクレイパーも渡されたので、綺麗にこそぎ落として入れます。…このスクレイパー素材なんだ?シリコンみたいな感触だけど。
「後は水が次の線が見えるようになるまで煮詰めて、リンゴを足す」
…リンゴすり潰すの早すぎませんでした?酸化して茶色くなっちゃいますよ?味は変わらないけど。
「結構元気そうじゃの?じゃぁ、残りもすり潰すのじゃ」
指し示されたのはさっきの薬草の山。お爺さんは空の器をどんどん並べてる。
…全部やるの?
「休憩しながらでいいぞ。たまに鍋の様子を見るのを忘れないようにの」
「解りました」
ゴリゴリゴリゴリ…
ゴリゴリゴリゴリ…
「鍋が沸騰してるのは構わないんですか?」
「気にせんで良い。量だけ気にしておけ」
なるほど。…当分先だなこりゃ。
ゴリゴリゴリゴリ…
ゴリゴリゴリゴリ…
持久力が半分ぐらいになったところで次の線が見えた。
「リンゴ入れていいですか?」
「よし、入れなされ」
スクレイパーで綺麗になるまで入れる。
「後は更に次の線が見えるまで煮詰めるのじゃ」
「解りました」
では、またゴリゴリゴリゴリ…
ゴリゴリゴリゴリ…
「線が見えたら火から降ろす。熱いから気をつけるのじゃぞ。この瓶に漉し布を張る。この枠を嵌めれば布がずれるのを防げるのじゃ。しっかり嵌めたか?では、鍋から移すのじゃ。零さんようにの」
瓶も鍋も大きいので瓶は床に置いて慎重に移していく。
「移し終わったら最後、漉し布を軽く絞る。あくまでも軽くじゃぞ?力一杯やると目が荒くなるからの」
「そうじゃ。その漉し布はこっちに広げて置いておけ。この絞りカスも使えるのじゃ」
「これで冷めるまで置いて、ポーション瓶に入れ替えて終わりじゃよ」
…ポーション瓶って100mℓぐらいの瓶よね?どんだけ作らせてるのさ?って私既に調べてあったじゃないですか。
「正確な処方法を言うぞ?良いか?」
「丁寧にすり潰した薬草500gを水10ℓで8ℓまで煮詰める。リンゴを200g加えて5ℓまで煮詰める。それを漉して冷ましてから瓶に移せば完成じゃ」
…本の10倍でした。単純計算で50本分です。
「これで〔調合〕も覚えたじゃろ?」
ええ、お陰様でしっかり覚えましたとも。レベルが4にあがってますよ。
「薬草も1kgほどすり潰せたようじゃの。リンゴが400gあれば後二回造れるぞい。リンゴの量は目安で、多少上下しても問題無いのじゃよ。リンゴ味が濃くなるか薄くなるかだけじゃ」
ふぉっふぉっふぉっと笑うお爺さん。
「この量に理由ってあります?」
本の10倍なのに意味はあるんだろうか?纏めてやった方が楽な気もするけど、すり潰す量は代わらないんだよね。
「リンゴが無駄にならない量じゃ。これくらいのリンゴで皮と種を取れば丁度200gぐらいになるからの。それに煮詰めるのに時間が掛かれば、その間に他のことが出来る。お嬢ちゃんが1kgの薬草をすり潰したようにの。そんなにすり潰せるとは思わんかったがのう」
あ~むきになってすり潰してました…。殆ど持久力枯渇してます。
所持金121圓
【技能】技能ポイント9(25+4)
メイン
観察レベル4/筆写レベル3/会話レベル1/歩くレベル6/魔法(無)レベル1/生活魔法レベル2/調合レベル4☆
サブ
採集レベル2/捌きレベル0/柔軟レベル0/読書レベル5/魔法(土)レベル1/受けレベル0/知識(植物)レベル0
取得技能
関節技レベル0/知識(材木)レベル0/杖術(短)レベル0/水汲みレベル0
魔法
生活魔法(3)
着火レベル1/照明レベル2
無魔法(5)
空間把握レベル3/睡眠レベル1/簡易修復レベル1
土魔法(3)
穴掘りレベル1/隆起レベル1/鉱物探知レベル1
☆新たに増えた技能




