本文12 ホームへ
「強制ログアウトがかからないかどうかは後3時間ほどで解るな。場所を移動しよう。付いてきてくれ」
そう言って西門さんは歩き出した。
3時間?あぁ、連続ログイン時間の強制ログアウトか。…かかったらどこに行くのかなぁ。帰れるといいんだけど、余り期待しない方がいいな。
ざわざわと音がして人が動き始めた。
「動いた!?え?なんで?まだ時間じゃ無いですよね!?」
「少しの間稼動させた。止めてると戸も開けられないからな」
と?と…「戸」?
と考えてながら歩いてると西門さんが「ここだ」と立ち止まった。
「隣は運営のホームだ。まずは、これにサインしてくれ」
渡されたのは〔ホーム使用登録証〕
「ホームは個人ポートを設定できる個人宅なんだが…ポートの詳しい説明はいるか?」
「お願いします」
木下さんに顎をしゃくる西門さん。説明役は木下さんですか。
「えっと、ポートの説明ですね。ポートはログイン・ログアウト・死に戻りをする拠点です。共有ポート・簡易ポート・登録型ポートがあります」
「基本第二世界はどこでもログアウト可能です。ですがポート外でログアウトするとアバターが少しの時間残ります。ポートではアバターを残さず、瞬時にログアウト出来ます」
「アバターが残る時間は1分程度ですが、街中やセーフティーエリア内でも掏摸などの犯罪に有る可能性は有りますし、落書きなどの悪戯に会うこともあります。フィールド上では魔物に襲われる危険性も高いので、ポート外でログアウトする事はお勧めしません」
「共有ポートは街の中心広場とポート設定の石碑のあるセーフティーエリアにあります。簡易ポート・登録型ポートを設定しなければログイン場所と死に戻り場所はここになります。ログインと死に戻り専用と思ってもらえればいいです」
「街の共有ポートは何処の街にもあります。広場の入口に設定用の石碑がありますので、設定するのを忘れないようにしてください。共有ポートは上書き式です。共有ポートの複数登録は出来ません。設定の確認は【ステータス】の『異邦人』の横です。今は『テグ』ですね」
「石碑のあるセーフティーエリアはフィールド上やダンジョン入り口や内部にあります。セーフティーエリア内でのログアウトはアイテム〔テント〕を使用する事を勧めます」
「簡易ポートは一時利用のポートです。宿屋とアイテム〔テント〕です。簡易ポートでログアウトすると次回ログイン時、同じ場所にログインします。あくまでも一時利用なので登録も上書きもされません。死に戻り場所は登録したポートです」
「宿屋のポートは個室のベッドです。相部屋ではカーテンを閉めて個室化すればポートの利用が可能になります。先払い式で宿泊料金を支払った者しか利用出来ません」
「ログアウトしてから次回ログイン時までの時間は内時間で経過します。先払いした分をオーバーすると、追加料金を請求されます。払えないと衛兵詰め所に連行されます。開始暫くは、宿泊料金を惜しんで利用しない方もいますね」
「アイテム〔テント〕は街中を除くセーフティーエリアで使用できます。〔テント〕内は犯罪や悪戯を防ぐだけでなく、簡易ポートとしても利用できます。また、魔法の〔野営〕はフィールド上にセーフティーエリアを作ることが出きます。魔法はログアウトすると無効になりますが、アイテム〔テント〕を使用すれば、セーフティーエリアは残ります。ログイン時に〔野営〕一回分の魔力は減るんですけどね」
「登録型ポートですが、ホーム・パーティーホーム・ギルドホームを購入した際に、それらに設置出来ます。これは共有ポートとは別登録になり、ログイン時にどちらにログインするか選択出来るようになります」
「ホームのポートはホームを購入・登録した人のみ使えます。先程渡した〔ホーム使用登録書〕にサインした人ですね」
「パーティー・ギルドの場合は一区画の設定ができます。ホーム購入の際、役所に使用者の登録が必要です。また、人員の入れ替えがあった場合も同様です」
「登録型ポートは別の街にホームを持てば、複数登録可能です。ポートからポートへ移動できますので、移動を短縮出来ます。大抵は一カ所に拠点のホームを造って、他の街では安い一部屋のホームを購入する事が多いですね」
「質問はありますか?」
「パーティーホームやギルドホームの場合、他の街にも同様規模のホームが必要?」
一人だけあちこち行けてもねぇ。かと言って各人一部屋買うのもアホらしいんじゃなかろうか?
「パーティーホームもギルドホームもそれ専用があります。複数利用可のポートが。一部屋とは言えかなり高額なんですけど。最初は有料の転移陣を使うことが多いです。門の脇に転移陣があって、行ったことのある街なら転移可能です」
なる程合理的。
「まだあるか?」
「今のところ無いです」
「サインはしたか?」
「書くもの鉛筆しかないんですが、構わないんですかね?」
「…それは駄目だな。これを使え」
取り出したのは…羽ペン!?
手にとってしげしげと眺めます。羽ペンみるの初めてだわ~。意外と軸が太い…軸別物?それより、羽ペンてインク要るんじゃなかったっけ?
「インクは必要無いんだ。錬金術で造ってあってな。カートリッジ型だ。羽ペン型の万年筆だと思えばいい」
錬金術すげ~。でも万年筆造ったら良かったんでない?
「主力は付けペンの世界だからな。下手に万年筆なんか使ってたら目立ってしまう。プレイヤーの生産者が製造するまではこれが限界だ」
「NPCの錬金術師はいないんですか?」
「錬金術師はかなり上位の職業でな。数が少ない。NPCは想像力も創造力もあまりないから、新たに作り出すことはほぼ無いな」
「…独創性の無い錬金術師になんの意味があるんですか…」
チョコのないポッ○ーみたいだよ?
「研究と効率化、生産だな」
「想像力が無いのに研究?」
「所謂古代の技術は今よりも上だった、という設定だ。文明程度以上のアイテムが沢山あるからな」
「大人の事情ってやつですね」
「それは言ってはいけない、とも言うな」
木下さんなんとも言えない顔しています。
サインし終わると[ポーン]と鳴った。【お知らせ】
《プレゼントボックスにプレゼントが届いてます》
入ってたのは〔拠点設定陣〕
「〔拠点設定陣〕は届いたか?」
「はい。これは?」
「ポートの設定に使うものだ。これでここは君のホームだ。ホームの説明は中でしよう。扉を開けてくれ」
扉を開けて中に入る。…二人は入って来ない?
「〔ホーム使用登録書〕を出して、フレンド入室許可を出してくれ」
【フレンド入室許可】ぽちっとな。これで入ってこれる、みたいですな。
ホームは2LDKでした。入って廊下、左右に部屋があって、廊下突き当たりにLDK。部屋は空っぽでした。クローゼットがどっちにもある。
リビング広いです。既にソファーが二脚あります。長ソファーの方は寝れそう。おぉ!暖炉がある!薪は入ってない。キッチンはシステムキッチンみたいですが、シンク上にも下にもタンクがある。なんだこれ?コンロも一寸変わってますね。冷蔵庫みたいな箱があるけど扉が無い。触ってみたら【倉庫】。冷蔵庫ではないんですな。
ここは、洗面所ですか?結構広い。洗面台の上下もタンクですね。ここはお風呂だ。おおぅ!身体が伸ばせそうな風呂釜です!トイレは無い?
リビングの向こうに扉がある。開けてみると謎なスペースがあって、タンクがまたあった。水廻りにタンクがあるみたいだな。もう一つ扉を開けると結構広い庭がありました。…手入れ大変そう。今は芝が植わってるみたいですが、芝刈りしなくちゃですか?芝刈り機ありますか?あ、井戸もある。組井戸ですね。朝顔を周りに植えないようにしましょう。
窓が何カ所かあったけど、全部曇りガラスみたいだ。表面加工では無さそうだから、そういうものなのか、そう造ったのか…透明度が低いって事は不純物が多いんだっけ?気泡が多いんだっけ?あれ?両方だったか?
壁の材質はなんだ?柱や梁は木っぽいけど壁は?
っと二人を置き去りにしておうち拝見してた事に気が付いた。
二人共ソファーに座ってました。
「ごめんなさい…」
二人の向かいのソファーに座った。
「いえ、やっぱり女性ですね」
何気に失礼ですよ?ジト目でみてやる。
目線に気が付いたのか慌て出す木下さん。
「あ、いえ、その…」
「ホームの説明お願いします」
「ホ、ホームはですね、個人宅です。広さは色々で役所にお金を支払えば後で拡張する事も出来ます。工房や実験室何かも付け加えられます。庭も拡張可能で畑や家畜を飼うことも出来ます」
「台所にあった箱はアイテム倉庫です。あそこにあるのは500種類入ります。同じ物なら99個スタック出来るのはポーチやボックスと同じですが、倉庫内の物は、倉庫に触らないと取り出せません。また、取り出せるのはホームの登録者だけです。アイテム倉庫内も時間停滞していますので、劣化しません。作った料理を熱いまま、とか凍らせた物をそのままにしておくことが出来ます」
「ホームでは宿を取った時と同じ様に安全に寝ることが出来ます。体力・魔力・持久力の回復は時間経過でもしますが、寝るのが一番早く回復します。何をするかにもよりますが、初期の頃は1時間も動きっぱなしにしたら、疲れ果てると思ってください。持久力は技能レベルがあがると共に増えていきますが、体を動かす系の技能の方が増えるのが早いです」
「パーティーホームやギルドホームの場合は共有の倉庫と金庫が設置可能です」
「ホームの玄関扉は外側からは登録者しか開けられません。出て行くのは誰でも出来ますけどね」
それで鍵穴がなかったのか。
お読みいただきありがとうございます。




