本文10 検証
声の主は技術者さんの一人だった。深夜のハイテンションで称号について話していて「異世界転移はチート必要だよね~これぐらいいっとく~?」と言ったノリで造ったネタ称号だそうだ。気持ちは解るけど自分に付けては欲しくなかったかも。造った本人もまさか誰かが獲得するなんて思わなかったんだろうけど。
「外せないんですか?」
造ったのなら消せるんじゃない?
「無理だそうだ」
疲れ切った声を出す西門さん。…それで半泣きか。
「せめて0一つ消すとか…」
「それも無理だったそうだ。ステータス以外のデータは相変わらず確認できないらしいし、君のステータスを弄れないようだ。後で確認してみるがね」
「…その称号に呼ばれたってことはないですかね?」
「…無いと信じたいな。デスゲームに巻き込まれた、とか衛兵の殺害者とかも造ってたらしい。それらは消させた。後で総ざらえしてみることになったが」
「お疲れのでませんように」
称号の詳細を口を開けて見ていた木下さんがボソッと言った。
「マイナス補正ばかりでなくて良かったのかもしれないですね」
それは確かに。
「検証を続けるか…装備欄開いてくれ。何か書いてあるか?」
「防御力は16(+1)。鑑定不能品が。…十個ですね。三つはアクセサリー欄です」
タップしてみても詳細も全部鑑定不能。
「下着は上下で1点として何点身に付けてる?」
下着上下・シャツ・ハイネック・コート・Gパン・靴下・靴で7つ。
「眼鏡含まないなら7点です」
「眼鏡はアクセサリーだな。後2点はなんだ?」
「ポーチ外せませんか?後はベルトとか?」
木下さんの言う通りでした。ポーチとベルトを外したらアクセサリーが2点減った。
「では次にアイテム欄だ」
おぉ。ここにも鑑定不可能品が。
「アイテムボックスに9点です。全部の鑑定不能品の後に(鑑定不能)が付いてます…」
鑑定不能がゲシュタルト崩壊するわ!
「…これをポーチに入れてみてくれ。」
差し出されたのは鉛筆。
「〔鉛筆(鑑定不能)〕が追加されました。」
「ポーチはポケット扱いか」
どういうこと?
「隠し設定なんですが、ポケットは容量内なら物が入れられて、アイテム欄に〔アイテム名:ポケット〕となるんです」
「なんで隠し設定?」
何隠してるの?ポケットに物入れるって普通じゃん?
「物はアイテムポーチとアイテム欄に入る。ポーチにもアイテムボックスにも個数制限はあるが、どちらも容量制限は無い。取り出す際はその物体を思い浮かべるだけでいい。わざわざ服にポケットを付ける必要が無いのだよ」
「ポーチとボックスの違いは戦闘時に使用出来るか否かだ。ポケットはアイテムボックスだが、ポケット内の物は戦闘時に使用出来るのだ。ポケットから物理的に取り出す事が必要になるが」
「更にポーチとボックスの違いにデスペナルティがある。ポーチ内の物はロストする可能性があるが、ボックス内の物はロストしない。つまり戦闘時使用可能な物をポーチ以外にも持ち歩く事が可能で、しかもロストしないんだ。とは言えポケット内の物はボックスの破損無効、時間停滞も重量無視も働かない。壊れる可能性もあるし、街中で掏摸に会う可能性もある。普通のポケットだな」
木下さんの顔を見て解った。これも「エンジニアさんの拘り」の一つだな。
「なら大容量ポケットを造ったら沢山持てる?」
「気付くプレイヤーが居たらね。プレイヤーメイド以外ではポケット付きの服を入手する事は不可能だ」
「ポケットには物が入る、までは気付くかもせれませんが、戦闘時に使える事に気付く可能性は低いかもですね。でも、誰か気付いたら拡散して皆大容量のポケット持つのでは?」
「ポーションの瓶は割れるし、消費期限のある物は時間経過で劣化する。耐久度がある物は衝撃を受ければその分劣化する。メリットとデメリット、計りにかけてどちらを取るかはプレイヤー次第だよ。あぁ、世界人の掏摸は結構優秀だよ」
「嵩は低いけど高価なものをピンポイントで狙う?」
「その通り」
あはははは、と西門さんが笑う。「おのれ運営!」とか言われそうだけど、それも楽しんでるんでしょうね~
「さっきは書けなかったけど、今回は行けるんじゃないか?」
紙を渡された。さっきの鉛筆で書いて見ろってことですね。
…立派なへのへのもへじが書けました!
「…なんでへのへのもへじ…」
「趣味です」
考えた人凄いですよね。造作素晴らしいです。
木下さんは呆れた顔してますが西門さんは笑ってます。西門さん意外と笑いの沸点低そうですね~
笑いながら渡されたのは先ほど口に入らなかった飴(仮定)。
「食べるんですよね?」
一応確認を取ります。頷かれたので口に放り込むと、オレンジのような味が広がった。
「食べることもできるようだな」
「次はフレンド登録が出来るかどうかだな。フレンド登録の説明をしながらやってみよう。登録は対面しないと出来ない。後、相手のゲーム名を知らないと申し込めない。木下のゲーム名は知っているな?【フレンド】をタップ、『新規』をタップ、名前を入力、『申請をだしますか?』が出たら『はい』をタップだ」
…ここで『いいえ』を、とか考える人は多分多いだろう。実行する人は少ないだろうけど。
そんな事を考えていたら[ポーン]と機械音がした。
「許可だしました~」
「もう一度フレンドをタップしたら『タッカー』があるはずだ。機械音はしたか?」
「どっちも『はい』です。」
「【お知らせ】が点滅してるはずだ。機械音は【お知らせ】が届いた音だ。未確認の物があれば【お知らせ】が点滅し続ける。それをタップすれば内容が読めるようになっている」
タップしてみたら《タッカーさんから承認を貰いました》と書いてあった。
「【フレンド】のタップでフレンドリストが出る。フレンド名が明るければログイン中、暗ければログアウト中だ。名前の横の『メール』『コール』は送信したい場合にはタップ、相手から送られている場合は点滅する。メールやコールが来ている場合は名前が上に来るから解りやすいと思う」
と言いながら指を動かしている西門さん。
また[ポーン]と聞こえた。
【メール】が点滅しているのでタップ。差出人は『サイモン』。
〈フレンドでないが相手の名前を知っていれば、こうやってメールを送る事が出来る。しつこい勧誘や迷惑メールを送ってくる相手は着信拒否できる〉
『サイモン』さんは西門さんなんでしょうね。
[ポーン]今度は【お知らせ】
《サイモンさんからフレンド申請が来ています。承認しますか?》
「私だよ」
解ってますよ。他に人いないじゃないですか。『はい』っと。
「パーティーだが、フレンド同士でしか組めない。【パーティー】をタップ、フレンド名をタップで『パーティー勧誘をしますか』と出る。誘われた場合は【お知らせ】に『パーティーに誘われています。承認しますか』だ。相手が既に別のパーティーに入ってたら『勧誘出来ません』だな。パーティーの最大枠は6」
「二つのパーティーで同盟、三つ以上で連合だ。パーティーを組むメリットは、パーティー員のみのメール、チャットが使える事。同盟、連合もそうだ。それとパーティー単位のクエストクリア報酬だな。後パーティーホームで共用の金庫・倉庫を置くことが出来る。これはギルドホームでも可能だ」
「因みにギルドは役所に行けば誰でも組めるし、人数制限は無い。登録料金が割高だし複数掛け持ちはできないから、一人ギルドの意味は無いと言っていい」
「第二世界では戦闘報酬経験値は戦闘に参加した者のうち、戦闘終了まで生き残った者全てで頭割りだ。パーティー外の人間が参加しても、人数に入る。召喚獣・家畜・ペットと言った使役獣も人数に入る。家畜・ペットは一人当たりの半分だけだ。戦闘に参加とは、攻撃だけじゃ無く、回復、ブースト、ダメージを喰らうことを意味する。つまり完全なる寄生は出来ない」
「また一部モンスターには特殊アイテムドロップがあるが、クエスト用アイテムを除けば、参加人員の中でランダム配布になっている」
「…攻撃して、トレインして、余所にぶつけて倒して貰って、経験値やドロップアイテム貰うことも可能ですよね?横殴りとか」
マナー違反で嫌われそうだけど。
「可能だよ。改善要求も来てるがね。プレイヤーのマナーに期待するよ。…実の所その手の行為は回数でマイナス補正の技能の取得や称号取得に繋がってる。それでもする者は居るだろうがな」
「戦闘報酬に関してだけ言えばあまりパーティーを組むメリットは無いんだが、役割分担・連携なんかは同じ人員のがやりやすい事も多いだろう」
「選択はプレイヤーに任せる、ですね」
「その通りだ」
お読みいただきありがとうございます。




