そのろく! 「あの、サンタくん?」
キリがいいところで話を分けているので、ものすっごく短いです。
次回からは元の長さに戻ります。
樫木くんがドアノブに手をかけようとする前に、扉が外から先に開いた。
「お待たせしました。ご注文の……何してる」
で、出たああああぁぁぁぁぁぁっ!
さっき頼んでた飲み物を運んでこようとした、サンタくんの声が聞こえた。
というより、なんでまた鬼の進化バージョン魔王モードのボイスなの、サンタくん!?
ああ、もうほら! あんまりよく見えないあたしでも、目の前にいる樫木くんが硬直してるのわかるよ! そりゃ間近で魔王に出会って威圧されればなるよね!
振り返らなくても、みんなが固まっているのは察せちゃう。だって部屋の空気が外みたいにすっごく寒いんだもん! 暖房がかかってるはずなのに、おかしいよ、絶対!
その原因は間違いなく、この魔王サンタだ!
なんでか機嫌がすごく悪いみたい。涙のせいで見えないけど、きっとあの無駄に整った顔は無表情でどす黒いオーラを出してるはず。
どうせ出すならマイナスイオンとかにすればいいのに! すこしは景さんを見習ってよ!
樫木くんとつないであたしの手が、急に自由になった。
温かくなくなったな、と思ったら、次は誰かに手首を取られた。見えてないけど、なんとなく、サンタくんのような気がする。
「手を離せ、格下が。目障りだ、退け。失せろ。それともお前は見かけ通り猿並みの脳しかないのか」
す、すごい暴言。今まで聞いてきたサンタくんの嫌味シリーズで一番ひどい内容かも。
え、え~と、もしかしてだけど、なんかサンタくん、怒ってる?
ど、どうしよ。魔王モードで怒るなんて、あたし、どうすればいいの? な、なにかお供えすれば機嫌直ったりしないかな?
あたしがグルグル考えてる間に、サンタくんは次々と行動をしていく。
「おいチビ。お前のカバンはどれだ」
「え? えっと、入口の近くの椅子においてるグレーのだけど……?」
ち、チビじゃないもん! とはさすがにこの状況では主張するのをやめとく。あたしは空気が読める女だからね、えっへん。
それにしても、なんでそんなの聞くの?
「これが、チビのカバンか。……帰るぞ」
「へっ? あ、あの、サンタくん?」
状況がわからないまま、サンタくんに手首をつかまれ、あたしは引きずられるようにさらわれた。
あいかわらずオレンジのせいで視界が見えないから、みんなの顔とか様子もわかんないし。でも、みんな何も言わないでサンタくんに拉致られるあたしを、黙って見送ってた。
は、薄情者~っ!
な、何が一体、どうなってるのぉおおおっ?
***
結美「うふふ。計画通り、ね」
景「そうだねぇ。計画通りに進んでよかったねぇ(結美の笑顔はいつ見てもかわいいなぁ)」
平常運転の、のんきなバカップルがいたとかいないとか。
今回も読んで下さり、ありがとうございます!