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そのに!    「決戦の日はいつですか?」

 伊月の友人達が全員登場します。

奈々さんはルビをふろうとしましたが、できませんでした……。


(2014/6/3)↑ルビ変更できました! 助言を下さった読者の方、ありがとうございます!

 まぁ、かと言って、すぐにそのお相手が見つかる訳もなくて。

 ましてや、恋愛経験ゼロに近いあたしには、どう行動に移したらいいのか、なんてわからず。

 結果。


「よろしくお願いします、結美ちゃん先生!」

「ふふ、やる気十分ね伊月」

「うんっ」


 結美ちゃんにご協力いただくことになった。

 ちなみに今は恋愛強化月間宣言をした2日後の昼休みだ。諦めるの早すぎ? 細かいことはいいの!


 いや、最初は一応、自分でなんとかしようと思ったんだよ?

 だけど、帰宅部のあたしに出会いの場なんてないし、校内の男の子にむやみやたらと声をかけるのは、ちょっと……どうかと思う。じゃあ、休日に駅前で素敵な出会いを探そうかなって考えていたんだけど、結美ちゃんに止められました。


『ふぅん、そんなことをするなんて、ふふ、伊月ってば冗談、よね……?』


 なんて、にっこり笑いながら、圧力をかけてきた訳じゃないよ? うん、違う。あたしは何も見ていないよ。

 ……ところで、なんで止められたのかな?


「それで、結美ちゃん。決戦の日はいつですか?」


 片手を挙げて、質問をした。敬語なのは気分なのです。

 結美ちゃんは、食後の紙パックの紅茶をストローで飲んで、ふうっと一息ついた。


「そうね……早くて次の日曜で向こう予定が合うみたいだけど、伊月は空いてる?」

「うん、大丈夫!」

「なら、決まりね。伝えておく」

「わーい!」


 今からでもそれが楽しみで、両手を上げた。

 実は、なんとあたし、合コンに参加します! 協力者は結美ちゃんの彼氏さんの田崎たざきけい、通称景さん。

 合コンって言っても、彼氏さんが恋人のいない男友達を誘って、あたし達と一緒に遊ぶだけ。

 だから、正確には男女混合で遊ぼうってことみたい。


 結美ちゃん曰く、『恋愛若葉マークの伊月でも、緊張しちゃわないように』だって。さすが結美ちゃん! 頼りになるね!

 なんちゃって合コンだけど、そういうのに参加するのは初めてで、今からでもワクワクだ。


 紙パックに入ってるモーモー印の牛乳を吸い上げているけど、あたしのほっぺが緩んでいるのはそのまま。

 その時、教室の後ろ扉が大きな音を立てて開いた。


「たっだいまー!」


 なっなになにっ!?

 顔をそっちに向けた瞬間、身動きが取れなくなったんだけどっ?


「いっちゃーん! 会いたかったよー!」

「わっわわ!?」


 ふわふわしてる柔らかい髪が耳くすぐっててむずがゆいよ。それに、いい匂い……じゃなくて!

 えええっ? いつの間にかあたしの首に腕が回されてる!

 だ、だれだれ!? なにが起きてるのっ?


「奈々、伊月がテンパってるから」

「あ、ちょっとさっつん。奈々の補給を邪魔しないでー!」


 あ、拘束がなくなった。

 慌てて周りの様子を確認すると、ツインテールの女の子がポニーテールの女の子に捕まってた。襟首の後ろをつかまれて、それから逃れようと必死に暴れてる。


「奈々ちゃん、サキちゃん、おかえり」

「ただいまー」

「ただいま」


 ツインテールの奈々ちゃんが笑って、ポニーテールの子が頷いて返事をしてくれた。二人とも、結美ちゃんと同じようにあたしの友達。

 ツインテールの女の子は、葉山はやま奈々こと奈々(なな)ちゃん。ちょっと気の強そうなつり目に、少し癖のあるふわふわした髪で、長毛種の猫っぽく見える。身長は平均より低いけど、あたしより10センチは高い。……うう、羨ましい。

 ちなみに、可愛い物が大好きで、見かけるとついつい抱きついちゃうんだって。それはなんでかあたしも含むみたいで、さっきみたいに会うたびに抱きついてくるんだよね。

 好きでいてくれるのは嬉しいんだけど、いきなり後ろから抱きついてくるのは、変な声上げちゃうから、ちょっとやめてほしいな……。


 背の高いポニーテールの子は、遠野とおの咲子さきこことサキちゃん。

 水泳部に入ってる恩恵か、出るべきところは出てて、引っ込むべきところは引っ込んでる理想の体をしてる。でも、彼女は元々水泳部になったのは、甘いものが好きだから太らないためって言ってた。

 面倒見がよくて優しくて、皆のお姉さんって感じ。でも、時々すごく疲れた表情になるんだよね。なんでかな?


 二人はお弁当派じゃなくて学食派だから、お昼休みはあたしや結美ちゃんとは別々にご飯をとってるんだ。

 それで、ちょうどついさっき、帰ってきたみたい。


「二人とも、何の話ししてたの?」

「えっとね、合コンの日にちとかの確認だよ」

「あ、いっちゃん、予定オッケーだったんだ。これでみんなで行けるねー」


 奈々ちゃんが首を傾げて聞いてきたから、牛乳を飲みながら答えた。奈々ちゃんはにこにこ笑って頷いてる。うんうん、楽しみだよね!

 あたしも自然と笑顔が表情に出ちゃうよ!

 女性陣で参加するのは、あたし、結美ちゃん、奈々ちゃん、サキちゃんの四人。ここにいるみんなで参加するの。

 思わず、奈々ちゃんと顔を見合わせて、声をそろえちゃった。


「「楽しみだねぇ~!」」

「……はぁ」

「……ふふ」


 うん? なんかサキちゃんがため息ついて、結美ちゃんが微笑んでる。


「結美、伊月のこと、しっかり見ててよ? 私は奈々のほうを見てるから」

「伊月は……そうね、見ておく。奈々は、そんなに心配する必要はないと思うけど?」

「……それもそうか。奈々は腹黒だから」

「へ? 腹黒?」


 お腹が黒い……とかじゃないよね? となると、やっぱり、性格のことかな?

 あたしの言葉を肯定するように、サキちゃんはすっごく濃いお茶を飲んだみたいな、渋い顔をしてる。もう一人の結美ちゃんは、変わらず笑顔を浮かべてるから、真意はよくわかんない。

 視線を動かして、腹黒と言われた奈々ちゃんを見てみたけど。


「え~? 奈々、よくわかんなぁ~い」


 ぽわぽわした笑顔に、そんな様子は少しも見えないよ。砂糖菓子みたいで、女の子らしい。あたしも、こんなふうに可愛くなりたいな。

 だけど、それを見たサキちゃんは、特大のため息を吐いた。


「嘘つかない。奈々は自覚ありでしょ。ま、無垢むくすぎる伊月の前では、取りつくろいたいのもわかるけど」

「奈々は~いつでもこうだよ? さっつんてば、ひどいよ」

「……はいはい。全く、何をたくらんでいるんだか」

「何もないよ~?」


 頬を膨らませる奈々ちゃんを、サキちゃんが短い言葉でいなした。

 それにますます膨れる奈々ちゃんを見ずに、サキちゃんは結美ちゃんに向き直った。


「……それで? 私は、今回の騒動がどういったわけなのか、よく把握してないんだけど? どうして合コンなわけ?」

「一言で言っちゃうと、例の噂を聞いた伊月の発想の結果ね」

「とてもわかりやすい説明、ありがとう」


 どうしたのかな? サキちゃん、ちょっと疲れた表情を浮かべてる。

 ……そもそも、騒動ってなに? しかも『今回の』って。これじゃ、いっぱい騒動が起きてるみたいに聞こえるよ。


「……それで? どうしてそれを結美は進んで手伝っているの? 厄介なことになるのは、見えているでしょ?」

「私、面白いこと大好きなの」


 結美ちゃんが美しく微笑みながらそう呟いて、それにサキちゃんはまた一つ溜息をこぼしてる。


「だめだこの子たち、なんとかしないと」


 すごく疲労に満ちた顔をしてる、サキちゃん。大丈夫かな? 体調でも悪いのかな?


「うふふふふぅ~。日曜日は気合入れて虫除けしなくっちゃ!」


 奈々ちゃんは、ルンルンしながらギュッと握りこぶしを作ってる。

 山とか川とかいく予定じゃないし、そもそも冬だから虫なんているのかな?

 よくわかんないよ。


 みんなの考えを、この時のあたしは知るよしもなかった。



 ***



 彼女達が、前作の「1月2日のサンタ」の閑話にてサンタくんが見た伊月の友人です。

 それでは、今回も読んで下さり、ありがとうございました!


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