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そのいち!   『不本意だよ!』

 ごきげんよう、梅津です。この小説は「1月2日のサンタ」の続編となっています。

 「1月2日のサンタ」のアドレスはこちら。


  http://ncode.syosetu.com/n0525bs/



 そちらのほうを先に読まれたほうが、話がわかるかと思います。

 では、ラブ度(みたいなの?)が増した伊月ちゃんとサンタくんの物語をどうぞ!


 じぃぃぃぃいいいいいい。


「……」


 あたしは、観察対象を見ていた。いつもはあたしを見下みおろしついでに見下みくだしてくる人の頭部を、ここぞとばかりに見下ろす。日頃の恨みを込めて眺める。コノウラミハラサナイデオクベキカ。

 チビなんて言う彼が縮めばいいんだ。背の低い人の苦労を思い知れ! ついでにハゲちゃえ!

 念を込めて、観察を続けた。


つき?」


 むむむむむむむ! 届け、この思い(恨み)!


「伊月ってば!」

「え?」


 誰かがあたしを呼んだような。

 あ、横にいた。


ちゃん。どうかした?」


 席に座っている私の隣に、いつの間にか結美ちゃんが立っていた。高さの関係で、あたしは彼女を見上げる。

 立っても変わらない? ハハハ、ナンノコト? 気ノセイダヨ。


 この子の名前は藤塚ふじつか。高校入学時からの付き合い。席が隣同士だったことで話すようになって、友達になったの。

 彼女を見ると、名は体を表すって本当のことなんだなって思う。だって、すごくキレイなんだもん。美しいが実を結ぶと名付けたご両親は、未来予知をしたに違いないよ。


 友達のひいき目じゃない証拠にほら、クラスの男子達がチラチラこっちを盗み見てる。

 だ、け、ど! 残念だったね、男子よ。そんな結美ちゃんは、彼氏もバッチリゲットしてる。他校に通っている彼氏さんは、彼女の幼稚園からの幼馴染み。

 一度紹介してもらったんだけど、彼もまた美人さん。マイナスイオンでも出してるのかなってくらい、癒し系で優しい性格の人。ちょっと抜けてるところもあるんだけど、それがいいんだって。

 ノロケるのはいいんだけど、あたしの目の前でイチャつかないでほしかったなぁ……。一人身には毒だよ。

 でも、うらやましい! あたしもいつか恋がしたいなぁ。


「い~つき~?」

「はっ」


 手?

 ブラブラと振られる結美ちゃんの手が、目と鼻の先にあったよ。

 少しの間、思考を飛ばしてたみたい。

 心配そうに顔を覗き込む結美ちゃんに、何でもないよ~、と笑顔を見せる。


「ちょっとボウッとしてただけ。えと、それで?」


 なにか聞き逃しちゃったかな?


「なんかずっと窓の外見てるから、気になったの。一体何を……あ」


 そう言いいながら窓の外を見た結美ちゃんは、すぐに口を閉めた。

 え~と、なんで納得してるのかな?


「ふぅん、三田みた君?」

「……」


 彼女が三田君って言った人物。彼こそが、あたしが見ていた観察対象だった。

 彼、三田君こと、サンタくんは今年に入ってから、あたしとよく会話(という名の言葉の殴り合い)をしている相手だ。


 始まりは、冬休みのある深夜、1月2日。その夜、コスプレをした彼が、あたしの部屋に不法侵入をしてきたことから。時期に乗り遅れすぎたサンタの姿をした彼は、不法侵入だけじゃなくて、あたしにチビだのアホだの言ってきた。

 話しているうちに、彼はただの変態かと思っていたんだけど、事情があったことは説明された。

 ムカつくことを言われたりされたりしたけど、あの人はあたしが変わるキッカケをくれた恩人……一応、だけど。


 彼が、同じ学校の生徒、それも同学年だったことを知ったのは、冬休み明け。

 再会後からは、顔を合わせるたびにあたしに何かと絡んでくる。

 クラスは違うけど、廊下でたまにすれ違ったりするときに、チビだのアホだの言われる。変態眼鏡め!


 そんなサンタくんは、今、校庭で箒を使って枯葉を集めている。今週は掃除当番みたいで、おざなりに掃除しているのがここから見てもはっきりわかる。ざまあみろだ。


「む~うぅぅ」

「ほら、威嚇しない」


 頭を優しくなでられた。結美ちゃんの手あったかいなぁ。

 あたしは彼女に事あるごとに、頭をなでなでされる。なんでだろ?


「ふふ、かわいい」

「えへへへへ~」


 美人さんに笑顔で頭をなでなでされるのは嬉しい。至福~。

 男子達が羨望の目でこっちをうかがってる。ふふん、羨ましいいだろ~、でも、このポジションは渡さないよっ!


「それにしても、仲いいね。前もじゃれあってたよね?」


 …………。

 ……?

 !!!!!!

 ええええええええ!?


「誰と誰がっ?」

「伊月と、三田君」

「なっないないないない!」


 ブンブンと酔うくらいに首を振る。

 いやいやいや、違うから!

 っというよりも、不本意だよ!

 異議が大アリのあたしは、断固訂正をお願いする。


「仲いくない仲いくない!」

「そう? でも、よく話してるよね?」

「あれは喧嘩をしてるの!」


 どこをどう見たらそう思うのかなっ?

 会うたびにあたしの身長について暴言を吐いて、頭の上に手をおかれたら「軽いな。中身、入ってないだろ」なんてことも言われたりしたんだけど!


 あ~思い出しただけでも、腹立つなぁ!

 眉間にしわを寄せていると、結美ちゃんはあたしの顔を覗き込んできた。


「ふぅ~ん?」

「な、なに?」

「べっつに~?」


 な、なんなの!? なんでそんな、含み笑いをしているのかなっ?


「知ってる? 私達のクラスのここ最近の話題」

「?」

「『いつ、三田君と伊月が付き合うか』よ」

「へっ?」


 なにが?

 あたしは口を大きく開けて、結美ちゃんの発言を頭の中で繰り返した。


「もう一回言ってくれるかな?」

「だから、『いつ、三田君と伊月が付き合うか』」

「……ァ、アハハハハハァ~?」

 

 耳の調子悪くなっちゃったのかな? おかしいな、しっかり耳掃除してるんだけど。

 結美ちゃんはにこにこと笑ってる。あたしは戸惑っているのにな~。


「三田君と伊月が仲良しに見えるのは、このクラスメイトの常識」

「そんな常識、打ち砕きたいよ……」


 お煎餅みたいに、バリバリに割りたいなぁ。もしくは、ヤギさんに食べてもらいたい。

 どうしたらその認識を上書きできるのか考えてるあたしに対し、結美ちゃんは楽しそうだった。


「ふふ、よかったじゃない。結構、三田君て人気あるよ?」

「よかったかどうかはともかくだけど……まぁ、だよね」


 サンタくん、外見は頭良さそうなイケメン眼鏡だからね。中身は変態でサドでドジだけど。おまけに口悪いし。


「大体、どうしてそんな勘違いが生まれるのかな? あたしとサンタくんは、そんな関係じゃないよ」


 口を尖らせて文句を言う。

 「違うからっ!」と声高に叫びたい気分だ。


 あたしとサンタくんは、そういうのじゃない。『じゃあなに?』と聞かれても困っちゃうけど。

 う~ん、とりあえず友達はないよね。あんな面と向かって悪口言う人は違うと思う、絶対。ちょっと話す知り合い程度くらいかな。


 一言で言い表しにくいのは、サンタくんの特殊なアルバイトを知ってるのが要因なのかも。あの仕事について、校内の誰にも教えてないってことは、彼本人から以前聞いた。

 あたしだけがそれを知っている、ということがあたしとサンタくんを繋ぐ唯一のことなのかも。


 とと。いつの間にか考えてることがズレてた。元の話題に戻そう。

 そもそも、だけど。もし、この話がサンタくんの耳に入った場合が怖い。多分、思いつく言葉の限りけなされる。主にあたしが。


『こんなクソチビと俺が? ハッ!』

『エイプリールフールには早すぎるだろ。誰がこんなチンチクリンと』

『あと10年育ってから言え。ま、どうせ頭も胸も身長も成長しないだろうがな、全く』


 ……うん、なんでかな、想像だけなのに音声が聞こえて映像が浮かぶんだけど。そしてものすっごくムカつく。

 あんまり考えないようにしよおうっと。


「あの……ちなみに、その勘違いはこのクラスだけ?」

「さぁ?」

「さぁって……」

「他のクラスの噂まで把握してないもの。まあでも、十中八九、そんなものなんじゃない?」

「うわぁ……」


 なんてこと。頭を思わず抱えちゃうよ。これでサンタくんによるあたしの精神イビリ(予定)に一歩近づいたよ。さらに頭が痛いのは、彼に好意を持ってる女の子に妬まれるかもしれない可能性があること。


 今からでも、なんとか回避できないかな?

 けど、否定して回るとなると、皆が余計に面白がって盛り上がるのは予想つくし。その話題に皆が飽きるか、それが嘘だとわかるような出来事がないとダメかもしれない。


 ん? なんか、ひらめきかけたよ。

 あたしとサンタくんが、そういう風に見られているのは、両方とも恋人がいないから、が一番の理由だよね。

 ということは……。


「よし、決めた!」


 抱えていた頭をバッと振り上げて、あたしは結美ちゃんに宣誓せんせいをした。


「あたし、彼氏作る!」

「話の流れからなんとなく理由はわかるけど、急にどうしたの?」


 困ったように笑う結美ちゃんにガッツポーズを見せながら、あたしはその勢いのまま説明をする。この熱いパッションは誰にも止められないよっ!


「あたしに恋人ができれば、そんな噂すぐに消えるから!」


 サンタくんじゃない人と付き合っていれば、そんなの事実じゃないって皆わかるはずだよ。

 自分でもいい案だと思う! 少なくとも、噂の自然消滅を待つよりよっぽどいい。

 それにもともと、恋をしてみたかったし。いい機会だよね、うん!

 噂が消えるし、彼氏もできるし、恋もできる。まさに、一石二鳥じゃなくて一石三鳥。


「恋をするぞ、お~っ!」


 宙に拳を振りかざし気合を注入。あたしはやればできる子なんだから、頑張るぞ~!

 ウキウキするあたしは、結美ちゃんが小声で呟いていたことを聞き逃していた。それをちゃんと聞いてれば、後であんな目に合わなくて済んだんだけど、その時のあたしは知りもしなかった。


「あの三田君が、そんなこと許すわけないと思うんだけど」


 かくして、あたしの恋強化月間は始まった!




 ***



 伊月の闘いは始まったばかりだ! 梅津の次回作にご期待下さい。

 ……とはなりません、大丈夫です(笑)。


 次は明日に投稿予定です。よろしければ、引き続きお読みください。

では、読んで下さりありがとうございました!

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