眠気を纏った救世主ーピンチー
「ふぅ……。なんとか逞太さんを無事に実世界に返せたみたいですね。しかし――」
先ほど放たれた矢、この輝きからして間違いなくあれは天使の矢。
このタイミングで来てしまいましたか。
しかも五人も…
「あ〜れ〜? こんなとこで悪魔さん何やってんの〜?」
一体の天使が話しかけてきた。
「悪魔が闇にいて、何か問題でも?」
「問題大有りだよ〜。俺たちは巡回者だぜ? 闇は闇でも、ここは最近の戦争で天使の領域になったところでしょ~。」
天使はケラケラと笑いながらそう言った。
「そちらが勝手に仕掛けてきたのでしょ! あんなに綺麗だった場所が、こんな……お母様とお父様まで………!」
この戦争で私のお母様もお父様も、残虐な天使に殺されたのに…
こんな、こんな天使なんかに…!
「お〜こわっ。てかあれ? 君、どこかで見たような〜。 あれれ〜?」
まったく、天使も落ちぶれてしまって……
昔は上手くやっていけていたのに。
これも全部、あの暴君のせい………!
「気のせいじゃないでしょうか? 私はあなた方のような、野蛮な天使なんて存知あげません」
「野蛮だなんて心外だなー。あ、そうだ君、闇の守護者にいた子じゃん! いや〜、闇もこんな小さな子を守護者にしなきゃいけないなんて、ずいぶん困っちゃってるみたいだね〜」
天使はわざとらしく大声で笑った。
いちいち感に触る人たちですね…!
「黙ってください! いくら私でもこれ以上言うようなら――」
そもそも光のせいでこんな事態になっているというのに……!
「はいはい。で………まぁどっちにしろ今の時代、天使と悪魔が顔合わせたらどうなるか、分かってるよね?」
急に顔つきが変わった。
さっきまであんなにチャラチャラした感じだったのに。
「くっ…!」
天使と悪魔が顔合わせる、それは――
「楽しい楽しい血祭りを始めようかぁあああ!! 小娘でも容赦しねーぞぉおお!!」
「………やるしか、ないですか」
1対5……
大ピンチです。
流石に、キツそうですね………
そんなことを思っていると、天使の一人が早速といった感じに矢を放ってきた。
それに続いて他の四人もレティを狙い打つ。
「オラオラ! 悪魔はこの輝く矢に弱いんだろう!」
あの輝く矢は天使特有のもの。
悪魔があたれば、かすっただけでも大きなダメージになってしまう。
あ、あたるわけには…!
天使は次々に矢を放ってくる。
くっ! これでは防戦一方じゃないですか!
けれど、攻撃できる隙が…ない!
「どーしたの守護者さ〜ん? まぁこんな大人数相手に反撃できる余裕なんてないか〜。こっちも仕事だからさ〜、あんま遊んでられないわけよ〜? そういうわけでトドメいっちゃうぜ〜!!」
天使は5人で密集して魔法を唱え始めた。
こ、このままでは…
「終わりだー!!」
「もう……ダメ――」
レティがそう思った瞬間、天使たちの目の前で爆発が起こった。
「んなっ!こ、こいつは爆発の魔法!? こんな上級クラスの魔法あんな小娘に出来るはずが…。はっ! 誰だ!?」
レティの目の前に、黒い立派な翼を使って羽ばたかせ、色鮮やかな鎧を纏った美女が現れた。
あの鎧は――
「アクラ!」
「あ、アクラ!? あの戦場の舞姫のアクラか!?」
天使たちの顔から、血の気が引いていくのが分かる。
アクラ。
レティと同じ守護者だが、この戦争において天使にも名が知られるほどの上級悪魔。
アクラ! 来てくれたんですね!
「無事みたいだね、レティ。 ここはあたしに任せて、あんたは休んどきな」