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眠気の果てにて!!  作者: 蒼真晟仁
眠気を纏った救世主
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眠気を纏った救世主ー夢ー


「あれ……?」



 こ、ここは……? 

 

「よっ」

「おわっ!なんだ朝夜(ともや)か」

「やっと起きたか。昼休み終わってから今までずっと寝てやがって。もう放課後だぞ」

「え……あ、あぁ」


 寝て……た?


「おいどうしたんだ? いつまでもぼーっとして。夢の世界はもう終わりだぞー」



 朝夜はおちょくるようにそう言った。


 夢…か。


 そうか………あれって…夢、だったのか。


「ほんと大丈夫か? いつも以上にぼんやりしてるぞ、お前。悪い夢でも見たのか?」


「あぁ、大丈夫。ちょっと、な」



 いや〜。


 妙にリアリティーのある夢だった。



 まだ夢だったっていう実感が無いくらいに、しっかり覚えてる。


「ちょっと…? なんだよ、聞かせろよ」



 楽しげに口元をニヤつかせながら朝夜は、面白そうだな、と顔で喋っている。



「いやそんな大したことじゃないって。ちょっと変な夢を見ただけだ」


「だからその夢の内容が聞きたいんだって」



 興味を持ったら引かない奴だなー、昔から。


「ほんとくだらないぞ?」

「いいから話せって」

「笑うなよ?」

「お前がそう言って、俺が笑ったことがあるか?」

「…………無いな」



 ………ったく。ほんといい奴だぜ、こいつ。





 こうして俺は、夢であると思えどももしかすると実話かもしれなかった不思議なあの出来事の話を、語ってみせた。



 気づいたら地獄みたいなとこに立ってたこと。

 そこには美少女がいて、その子によれば本当にそこは地獄であるというのを聞かされたこと。

 そして俺は以前そこで勇者とされていた人間の血族で、その少女に協力して欲しいから契約をしてほしいと言われたこと。



 俺が覚えてる限り、始めから終わりまで全部話した。

 

「どうだ? 満足したか?」


「ふーん。お前は、今の話がほんとに起こったことだと思ってるわけだ」


「いやだから、そうかもってことだよ」


「俺は後ろの席で、お前が寝てるのをずっと見てたけどな」



 そりゃそうだよなー。


「やっぱ夢だよなー」


「でも夢だとしても、メルヘンチックないい夢でよかったじゃないか。それに夢じゃなかったら、勇者として呼ばれたはずのお前は何も出来ずに帰って来ちまったことになるだろ? 夢ってのはいいとこで覚めちまうもんなんだよ」



 まったくその通りだ。

 

 あんなほんとに夢みたいな話、夢に決まってる。

 俺が勇者になる、なんてのも夢のまた夢だ。いや、もうちょい先かも。




「あー。勇者になりたかったな〜」


「そうだねそうだねー。ま、現実を見ろ」


「へいへい」



 一言余計だチクショー。

 もう少し干渉に浸らしてくれてもいいじゃないか。



「ほらよ、いつもの」


 朝夜はそう言うと、俺にノートを渡してきた。


「ありがとうございます」


 俺は深々と頭を下げて受け取った。


 これは授業ノート。

 学年トップ様が、居眠りばかりしている俺に毎回貸してくれるありがたいノート。


 これにはほんとに助けられる。



 これだから憎めないんだよ。



「じゃ、学校も終わったことだし帰ろうぜ」


「おう」


 もう過ぎたことだし、夢なら夢で仕方ないか。

 



 こうして俺たちは、少し陽の傾いてきてオレンジに染まった教室をあとに、ゆっくりと帰路についた。





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