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眠気の果てにて!!  作者: 蒼真晟仁
眠気を纏った救世主
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眠気を纏った救世主ー契約ー

 急にまたぶっ飛びやがったぁぁぁあああ!!

 


 し、しかし、ここでまた下手に言うと泣かせちまうかも知れないし…



「な、なんの契約なんだ?」


「さっき場所の話でここが逞太さんの暮らす世界でいう地獄、っていうのはご理解いただけましたか?」


「なんとか、な」


 なんか危ない単語だったから頭に入ってはいるが……



「つまり、ここ(エデス)で暮らす者は全員悪魔なんです!」


 レティは人差し指をビシッと突き出してそう言い放った。


 なんだかな〜。


「あ……うん」



 もう………慣れた。

 人間の適応力って、すごい。


 あ、いやでも…


「あのぉ…悪魔って俺らのこと襲ったりするんじゃないの…?」


「はぁ…そうなんですよね。実世界(スルブー)の方の認識はそういうものなんですよねぇ」


 な、なんかしみじみしだした…



 この子、なんかよく分からんな。


「違うのか?」


「はい! 襲うなんてとんでもないです! むしろ仲良くしたいくらいですよ! 実世界(スルブー)の方の迷信です!」


 再びレティは指を突き出してきた。

 これ好きなのかな?


「わ、わかったわかった。信じるよ。レティを見てれば悪魔が悪者みたいな考え方はできないしな」


「ありがとうございます」


 レティは嬉しそうにそう答えた。




「それで、契約ってなんなんだ?」



「はい、言葉そのままなのですが……あえて言い換えるなら、私のパートナーになるってことですね」


「ぱ、パートナー!?」


 まーたこの子は…………冗談がすぎるぜ。

 しかし、口調は多少軽いが冗談を言ってるようにも聞こえないので、一応最後まで聞いておこう。


「そうです。逞太さんには私のパートナーになっていただき、(エルア)側の軍の天使を粛清する任務を私と共に行っていただきたいんです」



 なんか無駄に壮大だな、おい。


 ていうか――


「天使を追い払うのか!? ま、まぁ悪魔なんだし敵対するのは分かる気がしないでも無いが…」

 人間として天使と戦うってのはなんつーか………やっぱ気が引けるよな……



「私も、出来ることならこのような争いごとはしたくないのですが………」


 あ、またしみじみしだした。



「何かあったのか?」


「はい。先代の(エルア)エリアの君主が亡くなられてからのことです。現在あちらのエリアを治めているルチフェルという暴君がいまして…あの方が(エルア)の新たな君主になった頃から、これまで上手く関係を築いてきた天使たちの態度がおかしくなってしまいました。そして、ある頃から武力での争いが頻繁に起こるようになってきてしまいました。今では、悪魔と天使が顔を合わせればその時点で戦闘が起こってしまう始末です」


 

 レティは悲しそうな目をして語った。

 

 いや、でも待てよ?


「うん。悪魔と天使の仲が悪くなっちまって、大戦争並みにこの世界が荒れちまってるってことも理解した。しかし、だ。それになんで俺が関与する? 俺じゃなくてももっと頼もしい奴は腐るほどいるだろ」


 俺は平和主義なんだ。いくら異界の世界だからって、争いごとに参加するのは流石に御免なんだが…



「ごもとっともです。でも、これを頼めるのは逞太さんだけなんです!」


 レティは真剣な表情で、俺の目をしっかり見てそう言った。

 

 美少女にこんなことを言われるなんて、実は俺すごい奴なんじゃないか?




 いやいやいやいや。

 平々凡々なこの俺だぞ? ……何か裏があるんじゃないか?


「なんで俺なんだよ」


「逞太さんは………すごい眠気をお持ちだからです!!」




 …………………眠気、ね。


 ふむ。



「ふざけてる?」

「ふざけてないです!」



 ふざけてはいないらしい。



 ふむ。



「からかってる?」

「からかってもいません!! 大真面目です!」



 うーん…


 大真面目ですか………



 俺だってこんな子が必死になってるんだから信じてあげたいよ? もっとまともな理由だったなら。


 しかし………眠気だぞ? 眠気が理由だぞ?


 馬鹿にされてるとしか思えないじゃないか。



「それは…もっと詳しく聞かせてもらえるかな…」


 いくら俺だって、そうかじゃあ契約しましょ、なんて言えねーよ。

 しかも相手は堂々と悪魔だって言ってるんだぜ? 悪魔と契約って言えば、いい意味に捉えられる楽観的な奴はそうそういねーぞ。

 

もっと納得できる理由が欲しいよ。



「眠気と言ってもただの睡眠欲とか、そんなのじゃないんです! 逞太さんの眠りは、特別なんです!」


「特別というと?」


「逞太さんは眠りの深さを死の状態と同じレベルまで到達させることが出来る、唯一の存在なんです!」


「ほ、ほぉ……」



 え、何? 何それ。

 俺寝てるとき死んでるってこと?

 確かに誰に何されても起きたことないけどさ。


「実は、逞太さんをこの世界まで呼び出せたのはその眠気があってこそなんです。私は、先ほど言った天使を撃退する、守護者(ガーディアン)という役を担っています。この役目は、約1000年程前に天使と同じような争いをしていてできたものなのですが……その時にも逞太さんと同じように実世界(スルブー)からこちらへ呼び出し、いわゆる『召喚』をされた方がいらっしゃいました。逞太さんは、ここ虚世界(ヒュズー)に1000年前勇者として召喚された方の血族の方なんです! しかもその中でも強力な眠気を持った、特別な方なんです!伝説の再来なんです!」



 ……………つまり、まとめるとこうか。


 俺は物凄い超人じみた眠気を持った唯一の存在。それでこの俺がここまで召喚された。1000年前にも俺と同じような人が来て、その人は俺の先祖、さらに言うと伝説の勇者、と。



「うん………だいたい、なんとな〜く分かったと思う。それのついでに聞いておきたいんだが」


「なんですか?」


「俺をここに召喚した奴は誰なんだ?」



 そのくっそ迷惑な奴は誰だゴルァ!?



「私です! 守護者(ガーディアン)に古来より伝わる秘宝をここぞとばかりに使わせていただきました!」



 ……………………………………………。


 ずいぶん楽しそうに言いやがるぜ、この美少女はよぉ。


 なーにが秘宝だ。なーにが伝説だ。



 俺別に人助けは嫌いじゃないし、むしろ役に立てるならしてあげたい側の人間だよ?

 しかもこんな美少女に、わざわざ呼び出されてまで来てるんだ。



 通常なら、多少の面倒ごとでもやってやろうかな〜なんて気持ちの一つは出てくるさ。


 あくまで通常なら、だ。



 だがここはどこだ?


 異世界だよ!

 天界なんだってよ!



 なら恩も義理もない。



 よって――



「悪いけど、断らせてもらいたい」


「え!? ど、どうしてですか!?」



 なーにを聞き返してるんだ、この子は?


 普通にいい返事が貰えるとでも思ってたのか?



「だってさ、ほら。俺はここに来ることはできても、戦う度胸も力も何も無いただの人間なんだよ。そんな奴が戦争まがいの出来事に首突っ込んだって足手まといになるだけだろう」



「そんなことありません! 確かに今は逞太さんに力はありません。しかし、私と契約してくだされば魔力も逞太さんの体に宿ることになるんです! さっきこの机や椅子を出したのをごらん頂きましたよね? こんな物体出現魔法なんかよりすごいことも逞太さんは出来るようになるんです!」



 ま、魔力が宿る!? 俺に!?

 しかも相当すごいことが出来るようになるみたいな口ぶりじゃないか。


 それは実に魅力的な………


 いやでもしかし…


「うーん………」


「お願いします! 私たちを助けてください!」





 うぐっ…………


 ずるいよ…その目は……………



 仕方ない。

 悪魔さん、この俺がお人好しだったことに感謝してくれ。



「負けたよ」


「え!?そ、それじゃあ…!」



「うん、契約するよ。それにしても、まだ小さいのにすごいね、レティは。いろいろと」


 ほんと、いろいろと。



「ありがとうございます!まだまだ未熟な悪魔ですけどね。でも逞太さんよりは遥かに年上なんですよ?」


 レティはうふふと笑って見せた。


「え? 嘘でしょ?」



「嘘じゃありませんよ。私は182歳です。もうすぐ183歳になります」



「えっ」

 …………ロリババァだったのか。


「あ、因みに人間で言うと10〜12歳くらいです」


「あ、あぁ」


 よ、よかった……。


 そうだよな、悪魔なんだもんな。



「では早速、契約の儀式を行いたいと思いますのでこちらにきてくださ――」



 !?


 キラキラ輝く矢が飛んできて、そいつが俺たちの前にあった机を貫通した。


「な、なんだ!?」


「天使です! もう!後ちょっとで契約できたのに!」


「て、天使!? それってやばいんじゃ…」



「はい、かなりやばいです。………仕方ありません。逞太さん、私が生きていたら、また会いましょう」


「え? 何言ってるんだよ!?」



 レティは俺の言葉も聞かずに、何かをぶつぶつと唱え始めた。


「また、会いたいです」





 それだけ聞くと、俺の意識は遠ざかり、気づくと元の世界の学校の席に座っていた。


今回は長くなりました~。


読解しにくい部分も多々あるかと思われますが、よければコメントなどで質問等々書いてってください。


楽しんで読んでいただけると幸いです。

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