プロローグ worker's
――西暦二〇二二年。世界では、三度目の大戦が繰り広げられていた。
巨大な戦火は数多の都市を焼き払い、人々は残された土地で細々と生きている。いつ自分たちが住んでいるこの場所も、焼け野原となるのかと恐怖を抱きながら。
だが人々は知らない。
この世界大戦が、国家同士の政治的問題という表向きの理由で始まったのではなく、一般的に全く知られていない、あらゆる国家に存在している無数の闇の組織が一枚噛んでいるということに。
――世界の情勢や裏社会のあらゆる情報をも収集する情報屋
――どんなモノだろうと世界中の何処へでも運送する運び屋
――特定の人物の動きを逐一観察して依頼主に伝える監視屋
――如何なる破損状態でも確実に物を直す技術を持つ修復屋
――家庭のゴミから遺体だろうと希望通りに清掃する掃除屋
――護れと言われれば命を捨てる覚悟を持つ者が集う護り屋
――金も宝石も人間であれ危険な場所でも盗みを働く奪い屋
――マフィアに雇われることが多い暗殺を得意とする始末屋
――どのような内容の依頼も報酬次第で引き受ける何でも屋
国や軍などは、表の社会では知られていないそれらの特殊な職業に就くプロフェッショナルの力を借りていた。中には一国家と同等の戦力を持つ強大な組織も存在するため、世界は『我が国が最強』と慢心してしまい、それが原因で世界大戦が勃発してしまうこととなる。
現在はあらゆる国が軍事力の代わりに、有名所の組織名を出すことで牽制し合い、しばしの休戦状態に陥っているのだが、戦火はまだ水面下で消えずに燃え続けているのだ。
雇われている組織の者たちはというと、我欲のため、組織のため、仲間のため、大切な人のため、それでも金になるからと今日まで戦いの手を休めることなく働き続けている。
いつしか、そのような職業があると世界中でウワサが囁かれ、人々はそんな特殊である職業に就く者たちを、敬意と畏怖の念を込め――〝Worker’s〟と名付けた。