タイトル未定2026/03/01 23:52
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朽ちたように見える城と、汚らしい城下町。雑草の茂った手入れのされていない草原と、幾つかの集落。それがその国のすべてだった。そんな国ですら、他国から戦いを仕掛けられることもある。
この国の勇敢な兵士たちは命のある人間とは思えない無謀な戦いの仕方をした。統率するリーダーがいないからだ。全員が一兵卒みたいなものだった。
言うまでもなく、大量の死者が出た。たいていの兵士たちはほとんど無駄死に近かった。錯乱した仲間に切られた者も少なくはなかった。
そんな国では命ある人間に対する敬意など、知れたものだった。墓など作られたためしがなく、いつも腐臭を嗅ぎつけた動物たちが兵士たちを処分していた。肉片や骨片に交じって、死肉を漁る動物たちのした糞が一面に散らばる平原。生きている人間は誰一人そんなこと気にはしなかった。毎日風に乗ってやってくる臭いにも、慣れっこだった。
その国のために命を捧げて闘い命を落としたと信じ込んでいる、亡くなった兵士たちは平原のありさまを見ていて、ようやく気が付いた。これは何とかし開ければなるまいと。一人一人の墓を建てろとまではいかないが、せめて墓碑の様な物すら建てようとする意志が誰にも見られないとは。なんと嘆かわしい。
こうして何万の亡者兵たちの会議が始まった。それぞれの年齢の男たちが死者の立場から幾つもの耳を傾けるべき説得力のある意見を出し続けていたため会議は一向に終わることなく続いた。
その中には亡者特有の理由、時間が無限にあるという理由のせいで、皆で集まって意見を言ったり聞いたりすること自体に楽しみを見出すものも出てきたため、関係のない話が始まってしまうこともあった。
亡者たちの会議はこの後も続いたが、必要以上に時間をかけたために誰も議題を思い出せないまま解散した。




