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歯車たちの英雄譚  作者: 彩衛門
第一章 桜都編 ―夜桜に剣は眠る―

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9/22

揺れる心と咲いた華

第9話目です。

そういえば触れていませんでしたがハヤテくんは両刃剣を使っていて、シュラマルさんは刀を使っています。

この世界ではどちらもわりとメジャーな武器ですが、最近はハヤテくんの持っているほうの剣が使われている割合が多めですね。

地面に叩きつけられた瞬間、身体の熱さで意識が遠のく。

桜花纏想の余韻がまだ全身に残っていて、痛覚はほとんど感じない。

もう何かを考える余力も気力も残っていない。

それなのに、胸の奥が妙にざわつく。――目の前の光景に、心が引っ張られていた。


「……ハヤテ……!!」


声が、掠れる。届くはずもない。

でも、確かに見えていた。彼が、私に迫る脅威に向かって駆け込む姿が。

危険だ、彼もやられてしまう。



その動きは、目の前の敵に比べるととても遅いように感じられた。


絶対に間に合いそうにない状況で、彼は間に合っている。

私のすぐ前で、鋭い剣先が振るわれ、私に振り下ろされた鉄槌を受け流した。

――瞬間、息が止まった。


「……すごい……!」


驚愕という言葉だけじゃ足りない。

心臓が跳ねる。頭が熱い。恐怖と――期待とがぐちゃぐちゃに混ざって、体中を駆け巡った。

彼は……私を守ってくれた。間一髪で。

安堵で胸がいっぱいになる。


でも、体は桜花纏想の反動で限界に近かった。

体温は上がり、排熱もままならない。

焔が身体を包むような感覚が重く、思うように動けない。


息が、荒い。視界がぼやける。

でも、遠くで踊る光の軌跡が見えた――ハヤテの剣の動き。

弧を描く、巨大な剣の残像。

その一撃ごとに、胸の奥が熱くなる。

――恐怖と絶望と、でも――希望が、交錯していた。


ああ、こんな気持ちになるなんて思わなかった。

守られることに、これほど心が震えるなんて。

そして同時に、自然と……彼のことを意識してしまっている自分がいる。


私の意識は、徐々に薄れていく。

それでも見える。ハヤテは笑っていた。

狂気じみた笑み――だけど楽しそうで、誇らしげで、止まらない。


あの笑みを見た瞬間、胸がぎゅっと熱くなる。

――ああ、私、彼のこと、好きになっちゃったかもしれない。


意識の端がふわりと揺れる。

でも、まだ、見える。戦いの全てが、私の目の前で展開している。


「……ハヤテ……」


小さく、呟く。

怖い。怖くて震える。

でも、同時に……信じている。

あの人なら、きっと――私を、皆を、守ってくれる。


森の奥で、桜の花びらが揺れる。

その淡い光と影の中で、私は夢見心地のまま、彼の戦いを見つめ続けた。



...森の奥。群れの喧騒が耳を打つ。

前方のコーボルトを一閃で制する。

刃は正確に、決して力任せには振るわない。乱れた群れを押さえ込む。

背後に倒れた仲間の姿がちらりと見えるが、ここを離れるわけにはいかない。

今、私が目の前の群れを抑えなければ――ミオも、ハヤテも、すぐに危険に晒される。


視界の端に、異質な動き。

――ハヤテだ。

距離があるのに、剣の軌跡が見える。

一撃一撃が、あり得ない速度で弧を描く。

私は目を見開き、内心で分析する。


(……異常だ。あの動きは今の彼の限界を軽々と超えている……)


通常の剣速では届かない状況、通常の力では弾けない威力。

それに、そんな角度からどうやってあの剛力と真っ向から渡り合える?

――間合いもタイミングもデタラメだったはずなのに、打ち込まれる一撃があまりに正確すぎる。


群れのコーボルトが押し寄せる。

位置を微調整しつつ、目の前の敵を斬り伏せる。

だが注意の半分は、ハヤテに向いている。

――あの少年は、今、この場の誰よりも脅威である。

目の前で、それを誰もが目にしている。


「……くっ、だが……ここを離れられぬ!」


理性と本能がせめぎ合う。

私が一切を気にせずに刀を振るえば、この場を片付けられるかもしれない。

だが、ハヤテが戦ってくれている今、無闇に動けない。

ミオもまだ倒れたままだ。

この状況での判断は一つしかない――私が一人で群れを抑え続けること。


胸の奥で、微かな感情が芽吹く。

――信頼だ。

たとえ異常に見える動きでも、ハヤテならやり遂げる。

その確信が、私の内心を支配していた。


戦術的焦りと、信頼の交錯。

この森で、誰も倒れてはならない。

私の仕事はここで彼らを守り続けること――そう自分に言い聞かせ、刃を振るう。


だが、視界に飛び込む光景は、予想以上のものだった。


森の中で、空気が歪むように見えた。

ハヤテの剣が弧を描き、あり得ない速度で敵を切り裂く。


(……あれが……技か……?)


いや、単なる技ではない。

彼の身体そのものが、信じられない速度と力で制御され、戦場全体を切り裂いている。

群れのコーボルトが吹き飛び、一部の個体からは肉片が散る。

彼は笑っている――狂気じみた笑みを浮かべながら、止まる気配はない。


息を呑む。

状況の異質さと、戦場の圧力――その二つが同時に襲いかかる。

もし、この剣が私に振り下ろされたら……少なくとも今の私では到底受け止められない。


そして視界に映るのは、ついに親玉――巨大なコーボルトが崩れ落ちる瞬間だった。

剣が振るわれた勢いそのまま地面に突き刺さり、土煙と共に巨体が地面に崩れ落ちる。

森の奥に、轟音が響いた。


一瞬、全てが静止したかのように見える。

ハヤテは息を整えることなく笑っていた。

あの笑み――狂気じみているが、どこか楽しげで、誇らしげで無邪気な少年のようでもある。

私の考えすぎだろうか...?


刃を握ったまま、視線をそらせない。

恐怖と戦慄、そして……信頼。

あの少年の動きを、私は信じていた。

そして、この戦場で彼がもたらした勝利――その圧倒的な力を、目の当たりにした。


その中で気づく――あの少年の存在が、この戦場の景色を塗り替えたことを。

そして、この戦いを、誰も忘れられないだろうことを。

彼は世界にとって敵なのか、味方なのか...

森の奥で、桜の花びらがゆっくりと舞う。

第9話を読んでくださってありがとうございます。

ミオさんがひとまず無事でよかったですと言いたいところですが、彼女の気持ちに変化があったようですね...

シュラマルさんは何やら葛藤されていた様子...

個人的に恋愛要素や恋の描写って書くの苦手なんだなって今回の話を書いてて思いました...

書いててすごく楽しかったんですが、ミオさんの気持ちを上手く伝えられているかが自分では不安です。

さて、今回は二人の視点から見たハヤテくんの戦いの様子でしたが、次回は戦いのその後を書いていく所存です!

少し眠気が限界なので、寝て起きてからの投稿になるかもしれませんが投稿した際はXのポストでもお知らせしておりますので是非そちらもご確認いただきまして、第10話を楽しんでいただければなと思います。

次回もどうぞよろしくお願いいたします。

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