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歯車たちの英雄譚  作者: 彩衛門
第一章 桜都編 ―夜桜に剣は眠る―

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8/22

名を持つ怪物

お待たせいたしました。

第8話です。日付が変わってしまいましたが確認と修正を経て何とか表現できたと思います。

今回の話は私が書きたかった世界や物語の核になったり芯をとらえた話の一話になると思います。

是非ご覧いただければと存じます。

ミオが吹き飛ばされたまま、動かない。


「……ミオ……?」


自分の声が、やけに遠く感じた。


返事はない。

呼吸しているのかどうかも、分からない。


視界の端で、シュラマルが別のコーボルトたちと交戦しているのが見える。

剣は冴えている。動きに無駄もない。

それでも――数が多すぎる。


すぐには、こちらへ来られない。


そして。


目の前。


地面を踏み砕きながら、巨大な影が一歩、前へ出た。

ただ“大きい”だけじゃない。


立っているだけで、空気が歪む。

圧迫感が、肺を締め付ける。


――これは、敵だ。


理屈じゃない。

本能が、そう告げていた。


その瞬間だった。


音もなく、ウィンドウが展開された。


Name : Kobold(コボルト) Kaiser(カイザー)

Category : Unique(ユニーク) Enemy(エネミー)


……カイザー?


皇帝。

そんな意味の言葉が、どこかで引っかかる。


理解するより先に、

足元の感覚が、遠のいた。


(……でかい)


(……強い)


(……勝てる気がしない)


思考は、妙に冷静だった。


シュラマルを見る。

彼は別方向から押し寄せるコーボルトの群れを捌いている。

こちらに来られる状況じゃない。


ミオは、まだ動かない。


そして――

カイザーが、武器を振り上げた。


風が、唸る。


「――っ!」


考える前に、身体が動いた。


いや、違う。


考えていた。

必死に、どうにかならないかと、ずっと。


距離が足りない。

速度が足りない。

力が、圧倒的に足りない。


分かっているのに、止まれなかった。


(間に合え……!)


ミオの上に、影が落ちる。


鉄塊が、完全に振り下ろされる軌道。


俺は叫んでいた。

声になっていたかどうかも分からない。


剣を握る手に、力を込める。


――でも、届かない。


そう思った瞬間。


世界が、音を失った。


踏み込んだ足の感触が消える。

心臓の鼓動だけが、やけに大きく響く。


視界の端に、淡い光。


Skill Assist — Activate

Just Counter

Complete...


意味を理解する暇はなかった。


剣が、勝手に動いた。


振り下ろされる鉄槌の“芯”へ、

刃が吸い込まれるように滑り込む。


衝突。


――轟音。


衝撃が、全身を叩く。


だが、叩き潰されない。


弾かれた。


巨大な武器が軌道を逸らされ、地面を抉る。

爆風のような衝撃が走り、土と木片が舞い上がった。


「――っ!!」


身体が、後ろへ吹き飛びそうになる。


それでも、剣は離さなかった。


足が地面を削りながら、どうにか踏みとどまる。


視界の向こうで、

ミオの指が、わずかに動いた。


――防いだ。


ただ、それだけ。


倒していない。

怯ませただけ。


カイザーはすぐに体勢を立て直す。

赤い眼が、俺を捉えた。


さっきまでとは違う。


明確な“敵意”。


(……やっぱり、足りない)


分かっていた。


このままじゃ、勝てない。


それでも。


身体が、異様に軽い。


呼吸が乱れていない。

全身が熱を帯び、鼓動が心地よく響く。


胸の奥が、ぞくりと高揚していた。


(……まだ、動ける)


(もっと、いける)


剣を構え直す。


ミオと、カイザーの間に立つ。


恐怖は、確かにある。


それ以上に――

根拠のない万能感が、身体を満たしていた。


その瞬間。


再び、視界に光。


Skill Assist — Activate

Over Slash

Complete...


拒否する理由は、なかった。


思考より先に、身体が理解する。

世界が、異常な速度で回り始める。


踏み込む。

軸足が沈み、筋肉が悲鳴を上げる。

それでも止まらない。


視界が引き伸ばされ、景色が線となる。

剣が空を切り裂き、円を描く。


常識を超えた速度。

常識を超えた威力。


自分の身体ではない。

だが――楽しい。


口元が、勝手に歪む。

笑っている。自覚がある。


斬撃が、Kobold Kaiserの巨体を叩きつける。

肉を裂き、血が舞う。

それでも倒れない。


なら――もっとだ。

痛みも、限界もない。

ただ、斬る。斬り続ける。


カイザーが反撃に転じ、横薙ぎを振るう。

だが、見える。遅い。


「...ジャストカウンター!!」


刃が芯を捉える。

勢いを弾き返し、踏み込み、そのまま切り込む。


最後の一撃。

剣を叩き込む。

轟音と共に、巨体が崩れ落ちる。

土煙が森を覆い、静寂だけが残った。


加速が止まり、ようやく世界は元の速度に戻る。


息を吐く。

身体の奥まで、満たされている。

全能感。多幸感。


「……はは」


声が、漏れる。

その笑みがどんな顔なのか――

自分でもわからなかった。


森の奥。

桜の花びらが、静かに舞っていた。

第8話ご覧いただきありがとうございます。

今回の話はいつもとテイストが違っていると思います。

このような展開ばかりではありませんが、私の世界やハヤテくんたちにとっては非常に重要な一話となっております。

そして、皆様はミオやシュラマルがどうなったか、この後どうなるか気になってくださっているかと思います。(そうだったらいいなという願望も交じってます!)

ですので、この後も引き続き執筆していきます。

とりあえずひと段落着くまでは寝ずに投稿を続けたいですね。

書き込みはあるんですが、修正をしていたり内容を読み返して納得がいかなかったり、前書きや後書きで悩んでしまったりで遅くなってしまっています...


とりあえず今回私が書きたかったシリアスな描写は書けたかな?と思っております。

次回以降どういう展開になるのか是非ご期待ください。

それではまた次回もよろしくお願いします!

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