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歯車たちの英雄譚  作者: 彩衛門
第一章 桜都編 ―夜桜に剣は眠る―

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7/22

桜の焔、森に散る

第7話です!

前回に引き続き3人での冒険となります。

今回もお楽しみ頂けますと幸いです。

森は、奥へ進むほどに静かになっていった。


枝葉の擦れる音も、鳥の声も、いつの間にか遠のいている。

足元の土は柔らかく、踏みしめるたびに湿った感触が返ってきた。


「……ここから先、嫌な感じがする」


ミオが小さく呟く。


俺も同意見だった。

空気が重い。

森そのものが、こちらを警戒しているような――そんな感覚。


「気配がある」


シュラマルが足を止める。


彼は腰を落とし、静かに周囲を見渡した。

黒を基調とした和服に、紅の差し色。

その姿は、森の闇に溶け込むようだった。


「数は……複数。こちらを囲もうとしている」


「よし、いつでも来い...!」


俺は剣を握り直す。

刃が、かすかに光を反射した。


次の瞬間――


茂みが、弾けた。


「――ギャッ!」


小柄な影が飛び出す。

歪んだ顔、鋭い歯、粗末な槍。


「コーボルト!」


一体、二体、三体。

次々と姿を現し、あっという間に包囲される。


「多い……!」


「落ち着け」


シュラマルの声は、静かだった。


「群れではあるが、統率は取れていない。焦るな」


そう言うと同時に、彼は一歩前へ出る。


速い。

一閃。


派手さはないが、確実に急所を断つ剣。

一体が地に伏す。


「今だ、ハヤテ!」


「はい!」


俺は踏み込み、正面のコーボルトに斬りかかる。


――浅い。


反撃の爪が迫る。


「っ……!」


間一髪、身を引く。

心臓が跳ねる。


「桜花狐火!」


ミオの声。


クナイが飛び、突き刺さった傷口から淡い桜色の焔が広がる。


動きが鈍った隙に、俺は剣を振る。


倒した。


「よし……!」


だが、終わらない。


左右から、さらに迫る影。


「数が、減らない……!」


「想定より多いな」


シュラマルが低く言う。


「ミオ、何か策は無いか?」


「……使うしかないね」


ミオは一瞬だけ目を閉じる。


桜花纏想(おうかてんそう)


その瞬間、彼女の瞳に桜の紋様が浮かび上がった。

焔が体をを包み込むようにミオに纏わりついている。


空気が変わる。


踏み込みが鋭くなり、動きに迷いがなくなる。

クナイが舞い、近接戦でも切り込む。


「時間制限、あるから! 一気に行こう!」


「了解した」


俺も必死に食らいつく。


斬る。

避ける。

また斬る。


呼吸は荒い。

腕は重い。


それでも、不思議と身体は動いた。


――これが、仲間と戦うってことか。


倒れたコーボルトが、地面に積み重なっていく。


「……いける?」


俺がそう思った、その瞬間だった。


――――ドンッ!!


森が、揺れた。


重低音。

空気を叩き潰すような衝撃。


「――っ!?」


視界の端で、ミオの身体が横から吹き飛ぶ。


「ミオ!!」


桜の紋様が砕け散り、彼女は地面を転がった。

焔も消えている...!


「ぐっ……!」


立ち上がろうとするが、動けない。


その奥から、重い足音。


一歩、また一歩。


現れたのは、明らかに異質な存在だった。


巨大な体躯。

分厚い筋肉。

鉄塊のような武器を担いだ、コーボルト。


赤い眼が、こちらを捉える。


「……コーボルト共の親玉か」


シュラマルが、低く呟く。


俺は、息を呑んだ。


ミオは倒れている。

シュラマルは、他のコーボルトに囲まれている。


そして――俺は。


(――まだ、何もできていない)


その事実だけが、胸に重くのしかかっていた。

第7話お読み頂きありがとうございます!

ミオの新技が登場しました!

ミオがピンチになってますね...

一体この戦いはどうなってしまうのでしょうか?

次回も是非ご覧下さい。

次回第8話は本日中に公開予定となります...!

P.S.トラブルがありまして、7話と8話の書き込みは進んでいたのですが、投稿が遅れてしまいました...

歯車たちの英雄譚を引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。

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