表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
歯車たちの英雄譚  作者: 彩衛門
第一章 桜都編 ―夜桜に剣は眠る―

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/22

刃と妖術、その距離

お読みいただきありがとうございます。

今回は原生生物というワードが登場しますが、何となくそんなん要るんだな程度に考えていてもらえれば大丈夫だと思います。

この世界の食生活ですが、日本とほぼ同じ(ただし基本和食のようなものしかなくて、食材も日本のそれとは少し異なります。)

例えばサクラダンゴやサクラココアというものを以前ハヤテくんたちは食しましたが、サクラダンゴは読んで字の如くの見た目ですが、串にささった桜色の団子に桜色の練り餡のようなものが入っています。これは想像通りかもですね。

しかし、サクラココアは見た目としては桜色の流動性はありますが少しとろみのある液体です。

そしてお味の方ですが、桜の花びら食べたことある人いますでしょうか?

僕は幼少の頃色々あって一度食べたんですが、あれ意外に酸っぱいんですよ...

ざっくりレシピを考えたんですが桜を細かく刻んで煮出したその酸味に桜都原産のハナミツという蜜を入れます。

そこにこしあんを混ぜたら甘酸っぱいサクラココアです。

桜都の門を抜けると、空気が少し変わった。


街の中よりも湿り気を帯びた風が、頬を撫でる。

土と草の匂いが濃く、遠くで鳥の鳴き声が重なっていた。


「ここから先は、森だ」


シュラマルさんがそう言って、足を止める。


「桜都の外縁に近いが、それでも油断は禁物だ。人の気配が薄くなるほど、生物は姿を現す」


俺は無意識に、腰の剣に手を添えていた。


買い替えたばかりの剣。

手に馴染んでいるはずなのに、心拍に合わせて微かに震える感触がある。


「緊張してる?」


横からミオが声をかけてきた。


「……ちょっと」


正直に言うと、ミオはくすっと笑った。


「大丈夫大丈夫。最初はみんなそうだから」


そう言いながら、彼女は軽くクナイを指先で回す。

その動きに無駄はなく、遊んでいるようでいて、いつでも投げられる距離感だった。


森の中へ踏み込むと、足元の感触が変わる。

石畳から、柔らかい土へ。

桜都の整った風景とは違い、枝は無秩序に伸び、視界も悪い。


「ハヤテ」


前を行くシュラマルさんが、低い声で呼んだ。


「前だけを見るな。音と、匂いと、影を見ろ」


「影……?」


「動かぬものの中で、動く違和感だ」


言われて、意識を広げる。

木々の隙間、葉の揺れ、地面の僅かな掘り返し。


——その時だった。


「止まって」


ミオが小さく手を上げる。


視線の先。

低木の向こうで、何かが蠢いた。


次の瞬間、地面を叩くような重い音と共に、それは姿を現す。


「……カチコミクマだな」


シュラマルさんが静かに言った。


熊に似た体躯。

だが毛並みは短く、体の節々が異様に発達している。

縄張りを荒らすものに、一直線で突っ込んでくる原生生物。


「で、でか……」


「動くな、刺激するな」


そう言われた直後、

カチコミクマは低く唸り声を上げ、地面を蹴った。


来る。


「散れ!」


シュラマルさんの声と同時に、俺は横へ跳ぶ。


風圧。

すぐ横を、巨大な影が通り過ぎた。


「ミオ!」


「了解!」


ミオの手が翻る。

クナイが一本、弧を描いて飛び——


「《桜花狐火(おうかきつねび)》」


刀身ではなく、クナイそのものに淡い桜色の焔が“染み込む”ように宿る。


それは爆ぜもせず、音も立てず、

ただ静かに——


カチコミクマの肩口へと突き刺さった。


次の瞬間、獣が大きく身を震わせる。


傷口から、桜色の焔が滲むように揺らめき、

内部を焼くように、じわじわと蝕んでいく。


「……効いてる」


致命傷ではない。


「うん。すぐには倒れないけど、動きは鈍るよ」


「今だ、ハヤテ! 正面から行くな、脚だ!」


言われるがまま、俺は低く構え、踏み込む。


剣を振る。

鈍い感触が手に返ってくる。


——効いてる。


完全じゃない。

だが、確かに刃は通った。


怒り狂ったカチコミクマが、こちらへ振り向こうとした、その瞬間。


「遅い」


シュラマルさんの剣が、獣の首筋を正確に捉えた。


重い音を立てて、巨体が崩れ落ちる。


しばらく、誰も動かなかった。


「……終わった?」


俺がそう言うと、ミオが肩の力を抜いた。


「うん。これ以上は来ないと思う」


シュラマルさんは周囲を確認し、ゆっくりと頷く。


「悪くない動きだった、ハヤテ」


その一言で、胸の奥が少し熱くなった。


「でも、今のは前哨戦だ」


そう続けて、彼は森の奥を見る。


「本命は、この先だろう」


風が吹き、桜の花弁が一枚、宙を舞った。


その向こうで、

聞き慣れない、甲高い鳴き声が響いた。


——コーボルト。


俺は剣を握り直す。


次は、逃げ場のない戦いになる。

今話もお読みいただきありがとうございます。

前書きに書きたかったんですが、長くなりすぎたので後書きに書き込みます。

はい、ほんとはヒスイチャっていうお茶を出したかったんですが、これ桜都に荷馬車が来ない影響で品薄ですっていう設定が合って急遽サクラココアを考えました。

字面が可愛いですよね!

次回は3人が遂にコーボルトと決戦です!

本日中に仕上げますので是非ご覧いただければと思います。

P.S.前回間違えてタイトルを書いちゃったので更新しました。今回が本当の刃と妖術、その距離です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ