桜都に芽吹く刃
作品中で現実世界の放課後は我々の認識している時間帯で相違ないです。(見ての通り現状部活などを割愛してますので15時から17時頃)
主人公が夜付近にログインしているだけで、桜都には朝も昼も夕方もあります。
今回はハヤテがプレイしているゲームの名前を出しました。サクラオンラインですね、颯くんのいる日本には電脳ネット用のタイトルが複数あります。
サクラオンラインはその中の初心者向けというか、最初期のタイトルなんです。
だから、現在はみんな新しいゲームをやっててオンラインゲームなのにオフラインゲームみたいになっちゃってますね...
休み時間、教室には軽い雑談が広がっていた。
「昨日のクエスト、クリアできた?」
「うん、ギリギリだったけどな」
手馴れた様子でゲームの話をする友人たち。
「そういえばハヤテは初めてのログインだったんだろ?昨日はどうだった?」
「うん、まだ慣れてなくて、ピンチになったところをNPCの人に助けてもらったよ…」
「マジかよ!」
「NPCを助けたんじゃなくて、助けてもらったってのがハヤテくんらしいな!」
教室に笑い声が広がり、ハヤテも自然と笑顔になる。
現代の学校は、登校する意味はほとんどない。
体育や実習科目だけのために来る生徒も多い。普通の授業は電脳ネットで受けられるし、危険な実験もすべて仮想空間で安全に体験できるためだ。
俺は中学までは電脳ネットを使わずに登校していたが、高校ではアクセスして授業に参加しないと単位が取れない。
まだ学校が始まったばかりで、みんなと仲良く話しているけど、そのうち顔を合わせなくなるとどうなるんだろう――少し不安な気持ちもあった。
放課後のチャイムが鳴ると、教室はざわめきに包まれた。
クラスメイトの何人かはウィンドウを閉じ、現実の机の上で軽く雑談を始める。
ほとんどは手元のウィンドウで課題やゲームの進捗を確認しながら、話に花を咲かせていた。
ハヤテは自分のウィンドウに向かい、授業中に聞き逃した部分をメモする。
「……最近のゲーム、本当にリアルすぎるな」
友人たちの画面越しに映る世界は、ただの映像ではなく、まるでそこに生命が宿っているように見えた。
――俺もそろそろ、ログインするか。
自室に入り、ログインユニットの前に立つ。操作はまだぎこちない。
視界がほどけ、身体の境界が曖昧になる。
次の瞬間、足裏に確かな感触が戻った。石畳の冷たさが心地よい。
夜空に舞う桜の花びら。揺れる提灯の灯り。遠くで人々の笑い声や足音が聞こえる。
――やっぱり、この世界、すごいな。
肩を伸ばしながら街を歩く。学校の窮屈さが、今は遠くに感じられた。
角を曲がると、見覚えのある和装の人物が落ち着いた足取りで歩いてくる。
「シュラマルさん!」
声をかけると、男はこちらに気付き微かに笑みを浮かべた。
「お、奇遇だな。街を歩いていたのか」
「はい!シュラマルさんは、何をされてたんですか?」
「今し方、魔物討伐から戻ったところだ。…そう堅く構えるな。気楽に話してくれ」
「分かりました!じゃあ、少しずつ慣れていきます」
黒を基調とした和装に後ろで結ったポニーテールのような白い髪。落ち着いた雰囲気で、近所のお兄さんのようにも感じるシュラマル。
そんなことを考えながら歩いていると、彼が口を開く。
「君さえ良ければ、お茶でもどうだ?」
もちろん断るはずはない。二人は茶屋に入った。木の香りが漂い、暖かな灯りに包まれる。
「桜都では、日常の買い物は銅貨で十分だ。この店でもそうだが基本的には枚数だけ書かれているのが銅桜貨。そう覚えておくといい」
シュラマルは笑顔で説明してくれる。さらに、今日は自分が出すから遠慮するな、と続けた。
「ありがとうございます!おすすめはありますか?まだ街の食事には慣れてなくて…」
「甘いものが好きなら、サクラダンゴは外せない。飲み物はサクラココアがよく合うだろう」
「じゃあ、それで!」
「では私も同じものにする」
茶屋のお姉さんに注文を伝えると、しばらくして料理が運ばれてきた。
「お待たせしました。サクラダンゴとサクラココアです」
ハヤテは香りに鼻をくすぐられ、自然と笑顔になる。
「とても美味しそうですね!」
「できたてだからな、食欲をそそるだろう?」
シュラマルも満足げに笑う。
二人が談笑していると、茶屋のお姉さんが話しかけてきた。
「君、見かけない顔ね。桜都は初めて?」
「はい、そうです!」
「そう、ならサクラダンゴも楽しんでね!」
ハヤテが一口食べると、ふわりと甘い香りが口に広がった。
お姉さんは少し肩をすくめ、困ったようにこう話した。
「実は最近、街の外れでウォルフの群れが出ていて…人の往来にも影響が出ているの。仕入れやお客さんも減って、ちょっと困っているのよ。貴方も気を付けてね!」
そういってお姉さんは店の奥へ戻って行った。
ハヤテとシュラマルは互いに視線を交わす。
「なら、今日はそれを片付けに行こうか」
「そうですね」
二人は店を出て、夜の街を抜ける。桜の花びらが舞う石畳の道を進むと、夜風が頬をくすぐった。
足音が石畳に軽く響き、遠くの街灯が二人の影を揺らす。
冒険の始まりを、自然と心が弾むのを感じながら歩いた。
第3話です!
第1章完結まではノンストップで書ききりたいですね!
今のところ第1部の予定として、考えている4章まではもうプロットがあります。
第2部の構想は序盤だけあるという感じでして、長年考えていた作品ですので、実力に見合わず書きたいことが山ほどあります笑
しかし、頭の中で話の流れは考えているのに、いざキャラクターたちが動き出すととてもいい顔や動き、はてはトークを見せてくれるため削り出していくのが大変です...笑
さて、第4話ではついにハヤテとシュラマルがともに冒険に挑みます!
まだまだ1章はこれからなので、頑張って書いて参ります!




