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歯車たちの英雄譚  作者: 彩衛門
第一章 桜都花柳街編 ―楽園に咲く血の華―

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26/34

残火の陰で暗躍するもの

花柳街編第十三話です!

お待たせ致しました。

早速本編をお楽しみください。

 地下へ続く階段は、崩れかけていた。


 煤と湿気が染みついた石段を踏みしめるたび、靴底が嫌な音を立てる。

 かつて火は消え、戦いも終わったはずなのに、この場所はまだ息をしているようだった。


「……十年経っても、変わらねぇな」


 ゲンサイは低く呟き、灯りを掲げる。


 かつて――あの黒装束の拠点だった場所。

 あの夜、燃え落ちたはずの屋敷の地下。


 今は孤児院。

 だが、地下だけは“残っていた”。


 壁に刻まれた模様は、ほとんど削られている。

 だが、完全には消されていない。


 円。

 歪んだ線。

 意味を持つ配置。


「……消し忘れじゃねぇ」

「こりゃあ、わざと残してやがるな」


 奥へと進む。


 床には血の跡。

 新しいものではないが、決して古すぎもしない。


 部屋の一角に、鉄製の棚があった。

 中には帳簿。

 名簿。

 薬品の瓶。


 どれも表向きは「療養用」「投薬管理」と書かれている。


 だが、記されている量がおかしい。


「……子供に使う量じゃあねぇ」


 ページをめくる。


 日付。

 番号。

 “適合”。


 胸の奥が、僅かに冷える。


 さらに奥。

 かつて祭壇があったと思しき場所。


 今は何もない。

 だが、床の一部だけ、やけに新しい石が嵌め込まれている。


 ――隠したな。


 石を剥がすと、下から金属箱が現れた。


 中には、黒い布。

 装束の切れ端。


 そして、見覚えのある紋様。


「……やっぱり、終わっちゃいねぇ」


 ゲンサイは箱を閉じる。


 全てを理解したわけではない。

 だが、一つだけ確信した。


 ここは“過去”じゃない。

 現在進行形だ。


 地上へ戻ると、空気が変わっていた。


 中庭では、タチバナ組の組員の監視下で職員たちが子供を集めている。

 毛布。

 水。

 優しい声。


「もう大丈夫ですよ」

「怖かったでしょう」


 泣きじゃくる子供。

 抱き締める大人。


 ――救われた光景。


 ゲンサイは少し離れた場所から、その様子を見ていた。


 違和感がある。

 だが、それを言葉にするほどの形はない。


 職員の一人がこちらに近付き、頭を下げる。


「本当に、ありがとうございました」

「子供たちは……この子たちは、何も知らないんです」


「……だろうな」


 それ以上、追及はしない。


 泣いている子供の中に、一人だけ泣いていない子がいた。

 こちらを見ている。


 感情のない目。


 だが、視線が合うと、すぐに俯いた。


 ――気のせいだ。


 そう思うことにする。


 ゲンサイは背を向けた。


 背後で、地下への扉が閉まる音がした。

 鍵の音。


 小さく、確かな音。


 夜の街を歩きながら、懐の紙束を取り出す。


 五つの点。

 線を結ぶと、星になる。


 ここはすでに潰した場所。

 十年前潰れたと思っていた場所。


「……残りは、えれぇ派手なとこだ」


 遠く、花柳街の灯りが揺れている。

 華やかで、賑やかで――

 だからこそ、闇が深い。


 ゲンサイは、煙管に火を入れた。


「……桔梗」

「……おめぇさんの弔いは、少し、派手にやるぜ」


 煙が闇夜に溶ける。


 遊郭の灯が、やけに赤く見えた。

花柳街編第十三話ご覧いただきありがとうございます。

今回もゲンサイの視点でした、今のところはまだ活躍が少ないキャラクターですが、この後の活躍にも期待出来そうなキャラクターです!


さて、今回は序盤から気になるワードが出ていましたね。

十年経っても変わらないの意味や十年前の出来事とは?

そして、桔梗という人物はどなたなのでしょうか?

次回以降にご期待ください!


今後とも応援と感想やレビューなどよろしくお願いいたします!


P.S.風邪を引いたかもしれません...皆様もどうかお気をつけくださいませ...!

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