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歯車たちの英雄譚  作者: 彩衛門
第一章 桜都花柳街編 ―楽園に咲く血の華―

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24/25

誰も縛らぬ背中

花柳街編第十二話です!

書いてる途中に、キャラクターを絵で描きたくなりましたが、残念な事に私には絵の才能が全く無かった為に断念しました...

それでは本編をどうぞお楽しみください!

 ゲンサイが「動く」と告げてから、屋敷の中には奇妙な沈黙が落ちた。


 緊急事態であることに変わりはない。

 敵の存在も、街に迫る危険も、何一つ解決していない。

 それでも誰一人として声を上げず、命令を待つこともなく、ただその場に立ち尽くしていた。


 重いのは空気だけではない。

 “これまでとは違う局面に入った”という感覚が、全員の胸に同時に広がっていた。


 一歩前に出たのは、アヤメだった。


 背筋を伸ばし、視線を真っ直ぐに向ける。

 娘としてではない。

 タチバナ組を預かる者としての立ち姿だった。


「では――」


 声は落ち着いている。


「私以下の組員は、カシラに従って動けばよろしいでしょうか?」


 問いは簡潔で、感情の揺れを感じさせない。

 だが、その一言に込められた重さは、この場にいる誰もが理解していた。


 ゲンサイは少しだけ目を細め、煙管を指で弾いた。


「いや」


 即答だった。


「俺は個人で動くからよ」


 一瞬、空気が張り詰める。


「おめぇらも好きに動いて構わねぇぜ」


 まるで世間話の続きをするような口調。

 だが、その言葉に迷いはない。


 さらに視線を巡らせ、客人たち――ハヤテ、ミオ、シュラマルに向ける。


「客人たちも同様だ」

「俺は兄ちゃんらを配下にした覚えはねぇからなぁ」


 命令ではない。

 ただ、線を引いただけの言葉だった。


 誰も反論をしなかった。


 アヤメは一瞬だけ唇を噛み、すぐに表情を整える。

 シュラマルはその姿を見つめ、何かを悟ったような表情を見せた。

 ネコメは思考を切り替えたのか、すでに新しい考え事をしている様子だ。

 ハヤテとミオは、言葉にならない違和感を胸に抱えたまま、黙ってしまっていた。


 ――命令が出ない。


 それが、何より予想外だった。


 ゲンサイは軽く肩を鳴らし、低い声で続ける。


「おめぇら命は大事にしろ」

「死ぬ覚悟なんざ、俺一人で十分だ」


 それだけだった。

 そう言って笑うゲンサイは何処か寂しそうな顔をしているように見えた。


 戦力の話でも、作戦の話でもない。

 これは“自分が背負う”という宣言だと、全員が理解する。


 アヤメは、止めなかった。

 止められないのではない。

 止めないと、決めたのだ。


 ハヤテは思う。

 配下じゃない、と言われた意味を。

 それでも関わる覚悟が、胸の奥で静かに形を成していく。


 ミオは不安そうにゲンサイを見つめるが、引き止める言葉は口にしない。

 怖い。

 けれど、逃げ続けることはできない。


 ネコメは、ゲンサイが“どこへ向かうのか”を察していた。

 ならば自分は別の場所を当たるべきだ。

 今自分が感じている違和感はきっとこの先の戦いに、大きな影響が生じるものだ。

 そう、自然に判断している。


 シュラマルは、静かに息を吐いた。

「個人で動く」という言葉が、過去の記憶と重なる。

 そこに誰の名も浮かべないが、胸の奥が僅かに疼いた。


 ゲンサイは、誰の背中も押さず、確かな足取りのまま、踵を返した。


「じゃあな、またお互いに生きて会おうぜ」


 それだけ言って、歩き出す。


 追わない。

 呼び止めない。

 見送らせもしない。


 その背中は大きく、そして不思議なほど静かだった。


 やがて足音が遠ざかり、屋敷には再び沈黙が残る。


 夜の花柳街は、妙に静かだった。

 人の気配はある。灯りも消えていない。

 それでも、嵐の前触れのような不気味さが、街全体を包んでいる。


 誰もが感じていた。


 もう、戻れない地点に来てしまったのだと。


 それぞれが、それぞれの場所で動き出す。

 だが今夜だけは、誰も同じ道を歩かない。


 ただ一人、背負うことを選んだ男の背中が、闇に溶けていった。

花柳街編第十二話をご覧いただきありがとうございます!

今回はスマホで書いてるんですが、何度か本文や前書きや後書きが消えてしまって、辛かったです...(笑)


今回はゲンサイが覚悟と優しい漢気見せる回でしたね。

今までは主人公のハヤテ視点、桜都編で1度ミオ視点、そしてシュラマル視点、花柳街編での主人公的ポジションでもあるアヤメ視点で物語を書いて参りましたが、何気に初となる俯瞰視点で物語を書いてみました!


さて、皆の思考や思惑、それに覚悟が入り乱れる...

そんな良い回になったのでは無いでしょうか?

前回は日常回にしました。

個人的には今回は幕間の話だとは思っていません。

ここからが桜都花柳街編のクライマックスへの螺旋階段になってます!

次回も皆様どうか応援よろしくお願いいたします。


P.S.ここから先は長くなってますので、興味ある方だけ読んで貰えたら嬉しいです!

ある種の決意表明なのですが、内容は触れてないですが、盛り上がり所のネタバレみたいになるかもなので...



前回何話目かで書いたと思いますが、私は桜都編のクライマックスと桜都花柳街編を書きたくて仕方がありませんでした...!(今も毎日楽しく書けるぐらいには書きたいです!)

書きたい回ってめっちゃあって、一部では1章の桜都編序盤クライマックスと花柳街編、あと、この後にある1章のラストが書きたいんです。

ただ、1章の一番の見所はどこ?と聞かれたら、花柳街編か1章の終わりと答えると思います!(そのぐらい本気で熱いものに仕上げたいです!)

後は、2章や3章、4章ラストなどもまた違ったテイストになるので、書きたいんですが...

多分、花柳街編や桜都編のラストは今後自分には書けないぐらいの最高傑作に仕上げるつもりです...(何とか上を目指し続けますが...!)

もうずっと前から展開も決めてるし、皆の覚悟も掛け合いも決まってるんですが、実は賭場の辺りから書いてて涙が止まらないんです...

この子達の活躍を自分が上手く書いてあげられるかの不安と、もっともっと皆の魅力を見せたいっていう思いで胸が熱くなります...!

ただ、断言出来るのはここから先は箸休めの回や幕間の日常回が減って、クライマックスへ駆け上がりますので、皆様どうかお付き合いの程をよろしくお願い致します。(日常回が見たい方とかいらっしゃれば良かったらコメントください!一応、1章が落ち着いたら番外編で色々書いていく予定ではあります!)

あと、恋愛描写苦手だって前に書いたと思うんですが需要があれば書けるので、もし見たいよって方がいらっしゃれば感想などで教えてください!

最悪面倒でしたら、この話にリアクションくだされば、日常回や恋愛要素の需要があるんだなって思うようにします!


ここまで読んでくださった皆様、長い文章や自分語りにお付き合い頂きましてありがとうございます!

今後とも末永くどうぞよろしくお願い申し上げます。

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