二つの異なる現実
今回からは前書きで作品や設定の補足をして、後書きで感想やメッセージを書きたいと思います。
この世界では教育も電脳ネットでオンライン化していますが、一応通学も設定されています。
なので、ハヤテはたまに登校しています。
森の奥から宿屋までの石畳を、ハヤテは静かに歩いた。
後ろから、和装の男が落ち着いた足取りで続く。
無言のまま進む道の中、やっとハヤテは口を開いた。
「……あの、ありがとうございました。助かりました」
男は短く頷き、静かな声で答えた。
「危険を察知できる者でなければ、あの魔物は避けられなかっただろう」
言葉の端々に、経験と余裕が感じられる。
ハヤテは少し身を正し、もう一度頭を下げた。
「……ところで、あなたの名前は?」
男は目を細め、遠くを見つめるようにしばらく黙った後、やっと口を開いた。
「……名は、シュラマル」
ハヤテは少し驚いた。
珍しい響き。和名とも洋名とも違う、不思議な力を感じさせる名前だった。
「……ハヤテです。よろしくお願いします」
互いに名を交わすだけで、少しだけ距離が縮まったような気がした。
街の灯りが見え始める。風に舞う桜の花びらが、二人の足元に舞い落ちる。
「この街の通貨は?」
ふと疑問が浮かんだ。シュラマルは淡々と答える。
「桜貨。銅、銀、金、そして純桜貨がある。日常の買い物は銅貨で十分だ」
「へえ……パンとかは?」
「銅一枚だな。高級品は金貨や純桜貨を用いる」
ハヤテは小さく頷き、街並みを見回す。提灯の灯り、木造の建物、夜桜――すべてがリアルに、しかし異世界らしい彩りを帯びていた。
やがて、宿屋の暖かな光が二人の前に現れる。
木製の扉を押すと、中は穏やかな笑い声と談話の音で満ちていた。
シュラマルは扉を開けると、自然な足取りでカウンターへ向かう。
まるでここが日常の場であるかのように、店主に挨拶を交わす。
「こんばんは、いつもの部屋を頼む」
ハヤテはその様子を、少し距離を取りながら見ていた。
自分には未知の世界の常識がまだ分からず、戸惑いを感じる。
「……この街では、宿屋はこうやって使うんですね」
思わず口に出すと、シュラマルが振り返り、少し笑った。
「そうだな。旅人は疲れを癒すだけでなく、情報を集めたり、次の目的地を決めたりもする」
ハヤテは頷き、窓際の席に腰を下ろす。
店内の空気は温かく、木の香りと煮込み料理の匂いが漂う。
外の夜風の冷たさが、ここでほんの少しだけ和らぐように感じられた。
シュラマルは注文を済ませると、落ち着いた声で続ける。
「桜都では、旅の者はまず宿を取る。それから、街を歩きながら情報や物資を揃えるのが常だ」
ハヤテは小さく息を吐く。
この世界では自分が“外来者”であることを改めて実感する。
そして、シュラマルの自然な振る舞いに、どこか安心感を覚えるのだった。
食事を済ませ、宿屋の一室に通される。
ハヤテはベッドに腰を下ろし、しばし街の夜を思い返した。
桜の花びら、提灯の灯り、森の奥で見た魔物――そしてシュラマル。
互いに名を名乗ったことで、あの森での出来事が少しだけ“現実の経験”として心に刻まれた気がした。
深呼吸を一つして、半透明のウィンドウを開いた。
ここから戻れば、自分の家に帰ることができる。
現実と異世界の間にある、ほんの一瞬の区切り。
ウィンドウを軽く操作すると、身体の感覚がゆっくりほどけていく。
石畳の感触も、木造建物も、夜桜も――すべてが画面の向こうに残したまま、現実の自分の体が意識の中に戻ってくる。
ハヤテは小さく息を吐き、ウィンドウを閉じた。
シュラマルの世界――桜都――は、あくまで“別の現実”だったのだと、胸の奥で改めて感じる。
窓から見える宿屋の提灯の灯りが揺れる。
森での恐怖、街の賑わい、そして静かな安心――それらが一つにつながり、今日の体験が確かに“生きた時間”であったことを教えてくれる。
ハヤテはそっと呟いた。
「……また行こう」
――桜都の夜は、今日も静かに息づいていた。
第二話を読んでいただけた皆様、ありがとうございます。
小説を書くことやこういった場所で何かを発表するということに初挑戦なので、感想や評価などをいただけるとすごくうれしいです。
お恥ずかしい話ですが、小説家になろうは読ませていただくことはあったのですが、コメントや質問などがどういったものなのかは私自身よくわかっておりません…
もし、作品や設定などの質問などを頂けましたら前書きの方などで説明できればと考えております。
素人が書いた文章ではありますが、よりよい作品にして登場してくれるキャラクターを少しで幸せにしたり、読者の皆様に少しでも何かを伝えられればと思っております。
今後ともよろしくお願いします。
P.S.いまのところ後書きと前書きを書く時が一番時間がかかります(笑)




