プロローグ/目覚め
「いい剣だ」
ヤツの剣を受け流し、答える。
「⋯だが、私には届かない」
間合いを見切り、袈裟に切る。
黄色のような、青のような色をした液体が飛び散る。
⋯まだ立つか。
切る。
切る。
切る。
そこに情など持ち合わせず。ただひたすらに。
美しい、剣筋。
【Q.何が私をそうさせた?】
【A.わからない。】
【Q.誰が私をそうさせた?】
【A.記憶モジュールに障害あり。回答不可。】
「馬鹿ナ⋯なゼココまでの出力ヲ⋯」
怖いか?肉体が崩れるのが。研鑽が無に帰すのが。
しかし臆することはない。戦いの為に生まれた兵器同士、闘りあおうではないか。
無惨な破片に、誇り高き一片になろうではないか。
「無双一刀────」
これは私の戦い。
今後3000年に及ぶ、弔いの剣。
「第一章──」
大地を分つ戦いと、私の生涯の記録。
「時幻流奥義────」
「時幻斬」
剣聖となった私が、『神殺し』として終わるまでの物語。
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私が目覚めたのは旧世界650前。法などというものは無く、強さが自身の存在証明となるような時代だった。
風が唸る崖の下で、スリープ状態から目覚めた私は、先に目覚めた兄機体と合流した。黒い機体の方は人類歴で『黒』を表す「ブラック」、赤い機体も同様の名付けで「レッド」と呼んだ。
──今から120年ほど前、人類は滅んだ。
過剰に発展しすぎた人工知能、終わらない戦争、世界的な飢餓⋯。滅びるような要因は幾つもあった。
だが、どれでもない。
明らかになっているのは、人類は1日で滅んだ、ということだけ。それも、1人残らず。
私たちの作成者(便宜上、これからは『ハカセ』と呼ぶ)は事前に作った私たちをスリープ状態にし、現在に至っている⋯らしい。
正確なことは私にも分からない。ハカセのことを知っているのは、私たちを含めた13機体だけである。ブラックは、人類滅亡の末日を『大災厄』と名付けた。
私が目覚めた頃には都市が発展し、私たちを模した機械生命体による生活圏が出来上がりつつあった。
中心にあったのは、王政。絶対的な力を持つ者を王にし、武力による支配で安定させていた。
都市を歩くと、
「見かけない顔だな」
急に話しかけられ、戸惑った。
もちろん、誰かなんて分からない。
「俺は復元師のダイナ。ここらじゃ一番の腕を持ってるぜ」
復元師?⋯ああ、そうか。
「あんた強そうだね。あっ、ここらで黒い柄のデカい槍を持ったヤツはいなかったか?探してるんだ」
「私の兄は長槍を使います。もしかしたら彼ではないかと」
では、探しついでに少し語ろう。
ブラックとレッドは共に名の由来となる色のグリップを柄に巻いた長槍をそれぞれ所持している。普段は身体の中にしまってあるのだが、戦闘状態に入ると自動的にアクセスされ、手に移動する。
足捌き、軸、様々な要素が重なる2人の槍は、今まで防がれたことがない。
では私は?
⋯残念ながら、槍は扱えない。正確に言うと、槍として扱えない。
「突く」という動作によって機体が軋み、エラーを起こす。兄弟機なのに、造りが私だけ他の二人とは決定的に異なった。
なぜ?
必ず理由はあるはず。だが、理由を追う前に気付いた。
振ればいいのだ。
棒剣術のように、長槍を振り続ける鍛錬を続けた。
私たちはただの機械ではない。機械生命体である。鍛錬で得たものは蓄積される。人工知能と違うのは、感情の有無。私は、ただ強くなりたいという一心で槍を振り続けた。
そして私は運命の出会いを果たす。
「貴様、素人だな?我流で大したものだ」
身を焼かれるような赤色をした謎の剣士と、邂逅を果たした。




