第1話 友達作り
4月の第2週目の月曜日。天気は曇りのち雨。
しかしいっ君さんの心はいつでも晴れ模様であった。
何故なら今日、俺はある事を決意した。
それは果たして何かと言うと――
――友達をもっと作るぞ!!
なんて言うシンプルではあるが、今後の高校生活を送る上で無視出来ない問題に挑むのである。
此処で友達を増やす事でより充実した學園ライフを送れると言う夢を実現する為にも俺は行くぞ!!
特に今日は入学して土日を挟んだ月曜日である。
実質、友達を作るなら今日が狙い目であるのは間違い無い。
まあ、流石に友達マスターのような學園の生徒達をコンプリートする事は難しい為、出来る範囲で友達作りに励むゾ。
〜1年C組〜
「……って訳なんだ。どうすれば良いと思う?」
俺は入学初日に仲良くなった東雲朔夜と草薙廣仁に聞いてみた。
恐らくこの二人も今後の高校生活について少なからず考えている筈なので、意見を聞いて見る事にした。
「……そうだな。確かに俺達以外に友達を作るとなると今日から積極的に行かないとグループが出来上がりそうだし」
「うん。けどそんなに直ぐ友達を作りたいの?ボク的に友達って何か機会があって、徐々に仲良くなって友達だと思うんだけど」
確かに。二人の意見はそれぞれ正解を得ている。
今から行かなければグループは出来るし、かと言って急ぎ過ぎるのも如何かと言うのもある。
――うーん、しかし俺としては今のうちに誰かと接点は作りたい所なのだが…
と、内心思っていると…
「その話、少し良いか?」
ふと真後ろから声がし、背後に振り返ると同じクラス…のえっと…名前が思い出せないから一般男子君が立っていた。
茶色が混じった黒髪を短く切り揃え、顔立ちは中の上辺りと言った辺りの普通の男子であったが、何処か緊張していそうに見えた。
「失礼、お前さんは?」
「俺は藤澤彰人。宜しく」
「遠坂樹だ」「……東雲朔夜」「えっと、草薙廣仁です」
俺達は自己紹介し合うと話の続きをした。
「友達って話が聞こえたから気になって来た。もし良ければ仲良くしてくれると嬉しい」
「おう、それは良いが…俺達で良いのか?」
俺がそう言うと、藤澤彰人は頷きながらも言った。
「自分で友達が欲しいって言ってるのにそれを聞くか?まあ、入学して2日目だが、どうも自分で行かないとぼっち確定になりそうだったからかな」
――成る程。そう言った理由なら分かった。
どの道、自分から積極的に行かなければぼっち確定だから藤澤彰人の行動はある意味正しいのかも知れない。
まあ、集団で群れたく無い人も居るから人次第ではあるが。
「相分かった。それなら此方としても是非とも宜しく頼む」
「……同意。宜しく」
「うん、仲良くしてくれると嬉しいな」ニコッ
草薙廣仁が笑顔で言うと、藤澤彰人は少し狼狽えながら「お、おう宜しく」と言った。
――やはり、この可愛い生物は最強なのかも知れないな!
こうして藤澤彰人も交えた4人で雑談に花を咲かせた。
新たな友達を加えた事で話も膨らみ、直ぐに意気投合が出来た。
と、実感していると藤澤彰人が「あ、そう言えば」と呟き、
「実は他のクラスに俺の幼馴染が居るんだけど会いに行かないか?良ければ友達を紹介したいと思っていてさ」
「俺は良いぞ」
二人に確認すると問題無いとの答えが出て、次の休憩時間に行く事になった。
※ ※ ※ ※ ※
休憩時間となり、事前に藤澤彰人がスマホで連絡を取り合って他の教室前で落ち合う事となり、俺達は教室を出て向かう。
「そう言えば藤澤君の幼馴染ってどんな人なの?」
草薙廣仁が藤澤彰人に尋ねると、藤澤彰人は「そうだな…」と少し考えてから口を開く。
「俺が所謂陰キャだとするぞ?そうするとアイツは陽キャに近いかも知れないな」
「……つまり遠坂みたいな奴って事か」
「それで間違い無いな。……てか苗字呼びでも別に俺は良いが、遠慮してる感じがするから適当に呼び合わないか?」
「それもそうだな」って事で皆で好きに呼び合う事にした。
俺は皆の事をそれぞれ、東雲朔夜は朔夜、草薙廣仁は廣仁、藤澤彰人は彰人呼びにする事にした。
さて、俺達は1年C組から目的地である1年A組前に到着すると目的の人物らしき人達が待っていた。
その人物は入学式で見た事がある学年主席の人(名前言っていた気がするが忘れた)と、もう一人は彰人の顔を見て笑顔を見せた人物からして例の幼馴染であろうか。
「よお、颯吾」
「おっす、話は連絡の通りだよな?実は俺も友達が出来たから紹介したくて待ってたんだ」
彰人と颯吾と呼ばれた幼馴染は全体を見て口を開く。
「改めて俺の幼馴染である…」
「僕は葉山颯吾だ。んで隣が友達になった学年主席の神楽坂雅紀君だ。宜しく!」
「紹介の通り、神楽坂雅紀です。えっと…一応入学式の時に主席で出たので御存じだとは思いますが…宜しくお願いします」
葉山颯吾と神楽坂雅紀はそれぞれ言った。
葉山颯吾は彰人の言っていた通り明るい性格であり、神楽坂雅紀は対象的に真面目ではあるが少し人見知りな所があった。
――そして何より気になったのはAクラス。
この聖嶺學園は定期試験の成績に応じてクラス替えが行われる。
その目的はこの学園自体が次世代の優秀な人材を育成する事を目的としており、優秀な人物はより優れた環境下で勉強が行われ、他のクラスでもレベルに応じた授業内容が行われるのである。
そしてAクラスは五つあるクラスの中でも最上位クラスである。
A・B・C・D・Eと5段階で分けられている為、いっ君さん達は真ん中のCクラスであった。
……っと聖嶺學園について軽く説明したが今はこの辺りで良いか。取り敢えず本題に戻ろう。
此方もそれぞれ自己紹介し合い、彰人が話を戻した。
「んで此方の遠坂樹君が友達を作りたいって事で紹介させて貰った。お互いクラスは別々だけど、それでも仲良くしたいから宜しく」
彰人がそう言うと神楽坂雅紀君も首を縦に頷く。
「嗚呼、俺達もクラスとか関係無く友達が欲しかったので…是非ともこの機会を通して仲良くして頂けると嬉しい…です」
「おう、このいっ君さん達とも宜しく!」
そう言って俺達は交流を深める為に時間が来るまで話し、時間が来るとまた昼休みに話そうって事で落ち着いた。
結局、この日は彰人と他の葉山と神楽坂を入れて昼休みを過ごして友情を深めて終わったけど、これからが楽しみだ!
――なーんて、締めに掛かっていた時だった。
〜放課後〜
ふと、帰りの電車に揺られながらスマホを弄っていると、スマートフォンの画面に一通のL◯NEが来た。
誰かなと確認し、画面を見ると高校に進学した中学時代からの女友達から『暇だ、構え』と言った内容のメッセージが来ていた。
取り敢えず俺は『後で良いなら』と返信してからポケットにスマートフォンを仕舞う。
ふと、夕暮れ時だが少し明るい空を見上げた。
改めてこれからの高校生活に期待を胸を膨らませながら、俺は帰宅して色々した後に中学時代からの女友達の通話に付き合ってやった。
『進学してから新しいクラス、上手くやれてる?』
――この俺だぞ、上手くやれてるに決まってるだろ。
『ふーん。まあ、あんたならコミュ強だし、平気か。ウチも可愛い友達が出来たから明日紹介させてやっても良いよ』
可愛い友達?生憎だが此方には廣仁と言う可愛い生物が居るんだ。早々気持ちが変わる訳など無い。
――そうか。俺のクラスにも可愛い生物が居るから感情が揺さぶられる事は無いな。
『何それ?気になって仕方がないんだけど。けど私的にはあの子だが最強だね。異論は認めない』
――認めないのかよ。
コイツが此処まで言わせるってどんだけだよ。
『そうだ。あんたが言う可愛い生物も気になるし、明日そっちに行かせて貰うから。宜しく〜♪』
……は、はぁ!?
そこまで言うと『そろそろ晩御飯とか風呂とかだから』と一方的に通話が終了してしまった。
え?明日アイツがウチのクラスに来るの?
絶対に面倒な事にしかならない気がする件について。
俺は明日が気になって中々寝付けないで朝を迎えるのだった。