第2話 それぞれのゴールデンウィーク
〜望月眞希side〜
どうも〜望月眞希でーす。
今日は遠坂家の碧唯さんと渚ちゃんから一緒にお泊まり会にしようと招待してくれたので、参加させて頂いています。
まあ、二人とは中学時代から付き合いがあるので、ウチとしては是非とも参加したいくらいなので、大変嬉しい。
そして遠坂家って事はアイツもいる訳で…
「……いっ君さんは帰りたい」
「帰るって言っても此処以外にあるの?」
「……無いです(野獣先輩風)」
いっ君さんこと遠坂樹の部屋でウチら女性陣は陣取っていた。樹には悪いけどウチらの恋バナトークの犠牲になって貰うよ。
碧唯さんが部屋に入って来た事で漸くトークが始まる。
「それで最近どう?特に樹とか」
「え?俺?んな事を聞かれても特に何も…無いぞ?」
と、樹ははぐらかすつもりなのだろうが…
同じ聖嶺學園に在籍するウチの事を忘れてはいないだろうか?
「……ねえ、眞希ちゃん?本当の所はどうなの?」
「私としても気になります!」
「あ!?眞希!?余計な事を言うんじゃ無いぞ!?」
「ええ〜?可愛い廣ちゃんに鼻息荒くしてる癖になぁ〜にが“何も…無いぞ?”よ?滅茶苦茶恋愛フラグを立ててる癖に」
ウチはいよりっちの事や廣ちゃんの事を言ってあげた。
すると渚ちゃんは勿論、廣ちゃんの事を知らない碧唯さんはニヤニヤと根掘り葉掘り、樹に問い詰めていた。
「はあ?男の娘?見るまでは信じないよ!どちらにしても我が弟が青春を謳歌している事は間違いないのは確かね」
「天宮さん可愛かったよね〜」
「あ、もう会ったの?いよりっち可愛くない?」
と、いよりっちの話をしつつも樹を中心とした恋バナトークは暫く続く事になるのだった。
※ ※ ※ ※ ※
別の日…
〜神楽坂雅紀side〜
やあ、こんにちは神楽坂雅紀です。
本日はねぇ〜待ちに待った東方プロの例大祭に来てるよぉ!!
同行者は遠坂樹君だ。今日は同じ趣味を持つ仲間と一緒に楽しい楽しいイベントを満喫して行こうと思うよぉ!!
「物凄い目をキラキラと輝かせてるな…」
と、遠坂君は言うけど…ふふふっ…何たって一年に数回しか無い東京ビックサイトでの大型イベントなんだから当たり前だろう!
俺達は東京ビックサイト内の渡り廊下から続く長い列に並ぶ。
俺達は事前に購入した入場に必要なブックを手に持ち、来るべき時に備えて汗水を流しながら待っていた。
……流石に同じ志の人達が大量に居ると蒸し暑くして仕方が無い。
国際展示場駅横のコンビニから購入した水入りのペットボトルを口にしつつ、隣に立つ遠坂君に声を掛ける。
「遠坂君。君は初めてのイベントだから、この人だかりには慣れないと思うが、大丈夫かい?」
「――大丈夫だ問題無い」
ネット用語で有名なセリフを言うって事は大丈夫なのだろう。
そう判断して俺はまだかまだかと期待と不安を胸に待機し続ける。
そうして――
「今から開場しまーす!押し合わないで下さい!」
アナウンスと共に一斉にファン達は会場入りを果たし、目的の品がある島(会場内でサークルが配置される区画)へと流れて行く。
かく言う俺達も目的の島へと辿り着き、靈奈の二次創作をゲットして内心喜びで満ち溢れた。
しかし、遠坂君の目的は此処では無く――
「すいません!一つ下さい!!」
遠坂君は目的の品『人形演舞』シリーズを人混みの中を掻き分けて辛うじて売り切れになる前に購入する事に成功したようだ。
「よ、良し…目的の品は手に入ったゾ」
「えぇ、しかし我々の戦いはまだ始まったばかりですよ」
俺は眼鏡をくいっとしながら尋ねると、遠坂君は「ああ、勿論」と言う心強い言葉を頂けた事で行ける限りの戦利品を掻き集めに行くのであった。
〜閑話休題〜
一通り戦利品を集め終わった俺達は、ラジオブースがある所で生放送している方々のトークを見ながら休んでいた。
「靈奈ちゃん達のグッズに最新作の東方プロシリーズもゲット…。くくくっ…これで当分の間は楽しめますねぇ〜」
と、俺が戦利品を見てほくそ笑んでいる横で遠坂君は「これが優等生君の本性かぁ…」と苦笑していた。
すいませんねぇ…これが本当の俺って奴ですよ。
「そう言えば昼っていつ頃にする予定なんだ?」
「そうですねぇ…なるべく早めに食べた方が良さそうですかね。何せ昼飯時になると多くの人達で1時間以上は混みますから」
「………確かにこれだけ人が居るとなると早めの方が良いな」
俺達はブースの席を立ち、早めに昼飯を摂る事にした。
確か近くにレストランがあった筈だから其処で取れば良いか。
さて、昼飯を喰ったら午後はコスプレの人に許可を得て撮影会とか良いかも知れませんね。
神楽坂雅紀は幸せな1日となる事を内心祈った。
※ ※ ※ ※ ※
〜藤澤彰人side〜
どーも、こんにちは。
今日はゴールデンウィークを利用して長野県に向かっております。
目的地は長野県の諏訪湖及び洩矢神社の参拝が目的である。
現在は母親に車の運転を任せて貰い、俺は車外から見える景色を見ていた。
蒼穹の青空が広がり、少しばかりの暑さが癪だが、それでも夏に近付いている青空を見て俺の気分は高揚している。
――嗚呼、蒼穹の青空に自然豊かな土地とは、如何に日本古来の風景を見る事が出来るのだろうか。
そう、目的の一つに晴れた日の神社と自然要素に加え、現代的な諏訪湖とその街並みを写真に収める事は出来るかであった。
画角的にすれば、個人的に納得の行くものが出来るかも知れないと思い、今日を楽しみにしていた。
……まあ、本音で言えば晴れた日に出掛けたくなっただけだが。
高速道路で長野県に向かいながらも道中、サービスエリアで少し暑い5月に対抗するに相応しいアイスを美味しく食べて空を見る。
うーん…この空に周囲の山々を加えて写真を撮るのはありだな。
パシャリッ、と一枚スマホで撮って自己満足の写真フォルダに追加しておく。
――さて、そろそろ出発する事にしようか。
それからY◯uTubeで動画を再生しながら長野県に突入し、暫くすると諏訪湖に繋がる道が出て、車は高速道路を降りて行く。
そうして諏訪湖の町に到着し、アプリの案内に従って洩矢神社へ目指して行き、無事に目的地へと辿り着いた。
――よーし、先ずは到着したし、神社に参拝してから写真を撮る事にさせて頂こう。
鳥居横の手水舎で手や口を清め、ハンカチで拭く。
そうして“鳥居を潜る前に一礼”する。
これは鳥居が神域と俗世を区切る結界であり、神様への敬意を表す為、一礼してから潜る。参拝後、境内を出る際も同様に鳥居の前で一礼するのが丁寧な作法である。
森林に囲まれ、静かで厳かな雰囲気だが、何処か懐かしさを思い出すかのような気分になりつつ、本殿で参拝を済ませる。
この時、ただ願いを言うのでは無く、自分の名前や住所などと共に何を頑張るかを頭の中で考え、力をお貸し下さいと言うのが良いとも聞いている。
――神様、◯◯◯◯の藤澤彰人です。
………………………を頑張りますので……………下さい。
おっと、自分の願い事は秘密にさせて貰うよ。
自分でその努力の為に行動し、その上でお力をお貸し頂く為であって、ただ御利益を下さいって言う人には恐らく力を貸してくれないんじゃ無いかなって思っているからね。
さて、周辺の探索をすると東方プロの舞台と関連している為にありとあらゆるグッズなどが置かれていた。
確か神社の寄付金と共に置かれる事が決定したんだったけか。
まあ、そこまでガチの東方プロじゃ無いから知らないけどさ。
その後、目的の通り画角の良い所から自然と街並みのコラボネーションの一枚を撮れ、満足していると地元の人らしき方から御守りをお金と交換して頂く事が出来た。
――これは大事に頂く事にしよう!
「御守りを頂けて良かったね」
と、母親から言われたので素直に頷いておく。
「仮に神様が目に見えないだけで実在するなら、常に行動には注意しないと行けないなぁ〜」
と、俺はお守りを見ながらそう呟くのだった。
※ ※ ※ ※ ※
〜東雲朔夜side〜
……どうも、東雲朔夜です。
俺は部屋でミステリー物の電子書籍を読んでいると、ドタタタッと廊下から足跡が響き、部屋に妹の東雲咲希が入って来た。
「……何か用か。お兄ちゃんは今、本を読むのに忙しい」
「こんな良い天気の日に部屋で引き篭もっていても良く無いよ〜」
「……それはお前のコメントだな。俺には通じない」
「ぶぅぶぅ〜全くお兄ちゃんは相変わらずツレないよねぇ〜」
「……うるせぇな」
と、何やかんやいつもの兄妹のトークが始まっている事に気付くと俺は仕方無く、スマホを置いて相手をしてやった。
「……それで何?」
「いやぁ〜だからこんな良い日に学校の友達とかと出掛けないのかなって思っちゃってさ〜?ほら、仲の良い友達がいるじゃん〜」
「……全く人のスマホを勝手に見るんじゃねーよ」
恐らくコイツは勝手に人のL◯NEを覗き込んだに違い無い。
ったくコイツ…一度言っておくべきか?
「ったく…確かに俺には友達はいるが俺は俺、相手は相手だ。その人なりに事情があったりしていつも一緒にいる訳じゃ無いんだぞ」
「とは言ってもさぁ〜?結局、自分から遊びに誘わないから部屋で引き篭もってるんじゃ無いの〜?」
「ぐっ…」
妹に正論を言われ、反論が出来ない兄は此処に居ます。
「まあ、奥手なりに優しい所があるのは良い長所ではあるんだけど同時に弱点でもあるんだよね。お兄ちゃんはそこを直せばもう少し人間関係が上手く行くと私は思いますけど?」
「……俺には俺なりのペースがあるんだ。乱そうとするんじゃありません」
と、言った所で咲希は「頑固だな〜」と言いながら俺の対面に座った。……何だ?まだ部屋に居座る気かコイツ。
「まあ、何となく大切にしている事も分かったよ。それでさぁ〜?その人ってどんな人なのか具体的に聞いても良い?」
「……結局、アイツの事が気になるだけじゃねぇのか?」
「そうとも言う!けど…色々あったお兄ちゃんと友達になるんだからどんな人なのかなって」
………………確かに俺の中学時代は普通では無かった。
その為に人に馴染めず、病気に怯えていた俺にアイツは何も知らない筈なのに、こんな俺と友達になってくれた。
……正直な所、感謝しても感謝し切れないくらいには。
「……まあそうだな。少しぐらいなら話してやっても良い」
「本当ッ!?じゃーじゃー早速教えて!?」
「近いって!?少しは離れろ!!」
そう言いながら俺達は部屋で遠坂樹について話すのだった。
読んで頂き、有難う御座います。
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