プロローグ 死神、追放。
新作です(*'▽')優しい物語にする予定。
「グリム・リーパース……貴様は本日付で、王宮魔法使いの座から追放処分とする!」
「……そう、ですか」
ボクの前に立つ一人の魔法使いが、忌々しげにこちらを見下ろしながら言う。
いいや、彼だけではない。取り囲むように立っている他の魔法使いたちも、ボクのことを咎人であるかのように睨んでいた。たしかに自分自身、周囲から忌み嫌われていることは知っている。それでもボクには、追放処分を受けるような罪の自覚がなかった。
「ちなみに、いったい何の罪で追放なのですか?」
「分かっていないのか。やはり貴様、どこかおかしいようだな」
そのため訊ねると、ひときわ偉そうな魔法使いが眉をひそめる。
そして、
「貴様が王妃様に毒を盛ったのだろう!?」――と。
その言葉に呼応するようにして、他の魔法使いも声を上げる。
非難する彼らを見つめ返すと、あからさまに視線を逸らされてしまった。どうやらボクの無実を証明したり、味方についてくれる人はいないらしい。いいや、もしかしたら『ボクが犯人』である、という証拠すら存在しないのだろう。
このような扱いは慣れたつもりだったけど、やはりつらい。
「その決定はもう、覆らないのですよね?」
「ほう……その口振りから察するに、己が罪を認めるのだな」
「認めようと認めまいと、結果は変わらないでしょうからね」
だが、それをボクは表情に出さなかった。
このような状況になったのだ。今さら相手との関係修復を考えたところで、意味があるようには思えなかったから。
「ならば今すぐに、この王宮から出て行くがいい! ――死神!!」
「……分かりました」
ボクは相手の宣告に、素直に従った。
すると、周囲の魔法使いたちは一気呵成に『消えろ』と大合唱。
その声を背に受けながら、ボクは王宮を後にする。
こうしてグリム・リーパースは、職を追われて野に下ったのだった。
◆
――『即死魔法』は、一子相伝の秘儀である。
ボクの家系は代々その秘儀を伝承し、外部に決して漏らさずに生きてきた。元々は王家を守護するためのものであったが、形骸化した現在では忌み嫌われる力でしかない。国家間の戦争もなくなった今ではもう、人殺し紛いが身近にいる、というだけなのだから。
「さ、て……これから、どうしようかな」
その力によって『死神』と呼ばれたボクは、王宮を追放されて途方に暮れていた。王都の中央広場までやってきて、備え付けの椅子に腰かけ空を見上げる。
誹謗中傷に晒されていたとはいえ、王宮では安定した生活が保証されていた。
すなわち自由にはなったが、生活基盤が消え去ったのだ。
「とりあえず、生活するだけの資金を稼がないと。……でも、どうやって?」
そんなこんなで、ボクは自分にできる仕事を考える。
一般的な知識がないわけではないけど、まず働き先に伝手がなかった。それ以外に寝泊りする場所も用意しなければならず、問題は山積み。
宿を借りるとしても、当面の収入がなければならない。
だったら――。
「うーん……手荒い仕事は、あまりしたくないんだけどな」
ボクの頭の中には、一つの生業が浮かんだ。
それこそ自由を象徴とされる『冒険者稼業』であったが、しかしボクの性には合わないことは容易に想像できる。そもそも自分は、争いごとを好まなかった。
だからこそ言い争いを怖れ、あえて王宮暮らしに固執しなかったのだ。
「だけど、背に腹は代えられない……か」
とはいえ、現状を考えれば。
ボクの性分など二の次であるのは、明らかだった。
「しばらくは冒険者稼業で食い繋いで、その間に職を探すとしよう」
物事にある程度の割り切りは必要だ。
ボクはそう自分を納得させ、ギルドに足を運ぶ。すると、その時――。
「誰か、お母さんの病を治してください!」
――ギルドの前で、一人の少女が何かを訴えていたのだった。
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