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プロローグ 死神、追放。

新作です(*'▽')優しい物語にする予定。






「グリム・リーパース……貴様は本日付で、王宮魔法使いの座から追放処分とする!」

「……そう、ですか」




 ボクの前に立つ一人の魔法使いが、忌々しげにこちらを見下ろしながら言う。

 いいや、彼だけではない。取り囲むように立っている他の魔法使いたちも、ボクのことを咎人であるかのように睨んでいた。たしかに自分自身、周囲から忌み嫌われていることは知っている。それでもボクには、追放処分を受けるような罪の自覚がなかった。



「ちなみに、いったい何の罪で追放なのですか?」

「分かっていないのか。やはり貴様、どこかおかしいようだな」



 そのため訊ねると、ひときわ偉そうな魔法使いが眉をひそめる。

 そして、



「貴様が王妃様に毒を盛ったのだろう!?」――と。



 その言葉に呼応するようにして、他の魔法使いも声を上げる。

 非難する彼らを見つめ返すと、あからさまに視線を逸らされてしまった。どうやらボクの無実を証明したり、味方についてくれる人はいないらしい。いいや、もしかしたら『ボクが犯人』である、という証拠すら存在しないのだろう。

 このような扱いは慣れたつもりだったけど、やはりつらい。



「その決定はもう、覆らないのですよね?」

「ほう……その口振りから察するに、己が罪を認めるのだな」

「認めようと認めまいと、結果は変わらないでしょうからね」



 だが、それをボクは表情に出さなかった。

 このような状況になったのだ。今さら相手との関係修復を考えたところで、意味があるようには思えなかったから。



「ならば今すぐに、この王宮から出て行くがいい! ――死神!!」

「……分かりました」



 ボクは相手の宣告に、素直に従った。

 すると、周囲の魔法使いたちは一気呵成に『消えろ』と大合唱。



 その声を背に受けながら、ボクは王宮を後にする。

 こうしてグリム・リーパースは、職を追われて野に下ったのだった。





 ――『即死魔法』は、一子相伝の秘儀である。

 ボクの家系は代々その秘儀を伝承し、外部に決して漏らさずに生きてきた。元々は王家を守護するためのものであったが、形骸化した現在では忌み嫌われる力でしかない。国家間の戦争もなくなった今ではもう、人殺し紛いが身近にいる、というだけなのだから。



「さ、て……これから、どうしようかな」



 その力によって『死神』と呼ばれたボクは、王宮を追放されて途方に暮れていた。王都の中央広場までやってきて、備え付けの椅子に腰かけ空を見上げる。

 誹謗中傷に晒されていたとはいえ、王宮では安定した生活が保証されていた。

 すなわち自由にはなったが、生活基盤が消え去ったのだ。



「とりあえず、生活するだけの資金を稼がないと。……でも、どうやって?」



 そんなこんなで、ボクは自分にできる仕事を考える。

 一般的な知識がないわけではないけど、まず働き先に伝手がなかった。それ以外に寝泊りする場所も用意しなければならず、問題は山積み。

 宿を借りるとしても、当面の収入がなければならない。

 だったら――。



「うーん……手荒い仕事は、あまりしたくないんだけどな」



 ボクの頭の中には、一つの生業が浮かんだ。

 それこそ自由を象徴とされる『冒険者稼業』であったが、しかしボクの性には合わないことは容易に想像できる。そもそも自分は、争いごとを好まなかった。

 だからこそ言い争いを怖れ、あえて王宮暮らしに固執しなかったのだ。



「だけど、背に腹は代えられない……か」



 とはいえ、現状を考えれば。

 ボクの性分など二の次であるのは、明らかだった。



「しばらくは冒険者稼業で食い繋いで、その間に職を探すとしよう」



 物事にある程度の割り切りは必要だ。

 ボクはそう自分を納得させ、ギルドに足を運ぶ。すると、その時――。



「誰か、お母さんの病を治してください!」





 ――ギルドの前で、一人の少女が何かを訴えていたのだった。



 


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