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湖での連続殺人ですって!?

「先生、お電話です。杉津川コロン三郎警部からです」


 江戸田一・シャーグレ・ポアープル彦五郎探偵事務所の助手である毛利ワトは杉津川コロン三郎からの電話をポアープル彦五郎へ取り次いだ。


「はい、お電話代わりました警部。えっ、連続殺人!7人も!?直ちに向かいます」


 働き始めて1週間、事件は日付より多く12件。いずれも殺人でワトから見たら一目で犯人がわかる事件ばかりであった。むしろきっかけの事件のほうが誰かわからなくてミステリー感が合ったくらいである。


「先生、場所は?タクシーで向かいますか?」

「ああ、タクシーで!行き先は血まみレイク!」


 本当に日本にあるのかそんな湖と思いつつなぜかか必ず探偵事務所の下で待機してるタクシーに行き先を告げ血まみレイクに向かう2人。


「ところで、なぜいつも下にタクシーが停まってるんですか?」

「お客さんたちが必ずそこそこの距離でかけるからですよ。先月はこの探偵さん北海道までタクシーで行ったんですよ」

「先生?飛行機使ったほうが良くないですか?」

「飛行機内で事件が起きたら眠れないじゃないか、探偵だぞ?あれだけいたら人くらい4,5人死ぬ」


 納得できるような出来ないような理由にワトも言い返せず大人しく現場に向かった。



「おお、まっていたぞ江戸田一くん!」

「警部、さっそくですが状況を」

「うーむ何かで切られたようだな……鑑識待ちだが」

「では、容疑者の尋問と生きましょうか」


 容疑者、フライデ・J・ソン。

 身長は2m、血まみれの服を着てアタマにはこれまた血に塗れたズタ袋を被っている。足は土で汚れており彼の足跡がその辺にある。


「…………」


「彼はおそらく喋れないようでな、荷物検査に応じてくれたが……血まみれのマチェット、血まみれの斧、ホッケーマスク。まぁ特になんの問題もなかったな」

「うーむ……トリックを使えばなんとかなるか?」

「先生……?」


 どうやら疑っていないようだ、まぁ、まだ容疑者がいるだろうしなとワトは考えるが。インスタント感覚で起きる事件に慣れたワトを持ってしても驚愕の発言が警部から出てくるのだった。


「これで容疑者の紹介は終わりだな」

「えっ?1人ですけど」

「容疑者が……一人だけだって!?毛利くん、よく気がついたね……こんな事件は初めてだよ」


 気がつくも何も警部もそう言っている。すると警部も神妙な顔をして。


「実は連絡した時にはまだ2人いたんだが……先程殺されてな」

「な、なんですって!」

「私の眼の前で殺されてな……警察として情けない……我々は無力だ……」


 しかし修羅場をくぐった名探偵は違った。警部を慰め、事件を解決すると意気込み発言する。


「犯人はこの中にいます!」

「本当でしょうか……?」


 さすがのワトもこれほどの事件には相手が相手だからか尻込みをしているようだ。


「森の中に隠れていたり逃げていたの可能性は……」

「初歩的なことだよ、毛利くん。見たまえ、湖から来て戻る人間の足跡だが、おそらく湖の近くに土足で行くのであろう、そこそこ濡れているから足跡が残っている。そしてその水分で玄関前の土はぐちゃぐちゃだ。そこに違う足跡、靴跡もないつまり同じ部屋の人間だな。犯人の足跡はこれだ、靴ではない、そうですね警部」

「ああ、なるほど」

「そしてこの足跡はこの部屋に入っている、つまりこの中にいるんです!」

「おお、流石だ江戸田一くん!じゃ犯人は誰なのかね?」

「それはまだ、ですが部屋にいることは絞り込めました前進ですね」


 緊張が走る警察官、J・ソンは相変わらず無表情にみえる。ズタ袋を被った彼の瞳には焦りは感じられない。

 誰も汚れた足を拭かないのか?サンダルくらいはいたらどうなんだと思うものの入口に足洗い場があるのでワトはたまにある意味がわからないキャンプ施設かと思った。


「ところで警部の前で殺されたんですよね?」

「毛利くん、警部に対してもう少しだね……責任を感じているんだから……」

「いや、仕方がない、毛利くんはこの手のことに手厳しいからな。友人としてそれは理解している」

「いえ、犯人は目撃しなかったのですか?」

「それがさっぱりでな、ホッケーマスクを被った2mくらいの大男ということしかわからなかった」

「……」

「いや、申し訳ない」


 もう犯人わかってるだろと思ったワトは仕方がなく遺体を見に行った。


「警部さん、この傷跡なんですが……犯人は何を使ってたかわかりますか?」

「マチェットだったぞ」


 凶器わかってるんじゃないか……。


「そうですか……先生、凶器はわかりましたね」

「最後の殺人がマチェットとわかっただけではね……さすがの私も……」

「2mでホッケーマスクを持っててマチェットを持ってる人物ですよね?おそらく他の事件の凶器には斧があるのではありませんか?」

「毛利くん、なぜそこまで……まさか……君が……」

「先生?事件当時一緒に事務所にいましたよね?」

「トリックかもしれん」

「瞬間移動と身長を2mにするトリックがあるんですか?」

「あるいは……」

「それトリックじゃなくて魔術か魔法か超常的なものですよね?」

「できるのか?裸で空を飛んでみたいんだが」

「できません、えっ、裸で?やめてくださいよ本当に」


 その一言が探偵の吐瀉物色の脳細胞を刺激した。


「そうか、わかったぞ……犯人が!」

「本当かね!江戸田一くん!」

「ええ、今回も毛利くんに助けられましたよ……犯人はフライデ・J・ソンさん……あなたです!」

「……」


 微動だにしないJ・ソン。取り囲む警官。


「待ち給え、一体どんな証拠があって彼を?」

「唯一の容疑者だったらそれはそうなのでは?」

「容疑者が一人だからって犯人とは限らんよ毛利くん」


 こんなときだけ正論を吐く汚職殺人刑事に対し反論できないワトは黙りこんだ。


「足跡ですよ、これが犯人の足跡です。ほら、よく見て下さい警部……素足です」

「それが?」

「警部、警部の前で殺人が起きた時犯人の足はどうでした?」

「…………素足だ!だがそれがJ・ソンさんが犯人だっという証拠には」

「警部はどこで犯人を見失ったんですか?」

「どこって、眼の前で殺されて追ったらJ・ソンさんにぶつかって……だがホッケーマスクは被ってなかったぞ?」

「隠したのでしょう、この泥のついた素足、犯人の足跡が部屋に続いていますよね、殺されたのはここですよね?」


 血まみれの畳を指さした江戸田一に杉津川は驚愕する。それはたしかに目の前で被害者が死んだ場所だったのだ。


「ど、どうしてわかったんだ?」

「この犯人の足跡がここに続きこちらに移動しています、ここでぶつかりましたね?」

「ど、どうしてそこまで!名探偵と接した期間は長いがここまで君に驚かされたことはないぞ!」

「この足跡、ここでUターンしてるんですよ、そしてここで歩幅が乱れている。何かにぶつかったんでしょう。そしてこの足跡がたどる場所……」

「あっ、こ、これは!J・ソンさんが立っている位置だ!」

「そう、これは隠せなかった。あらためていいます。あなたが犯人ですね?」


 J・ソンはその瞬間、警察を弾き飛ばし湖へ向かって走っていった。


「いかん、逃がすな取り押さえろ!」

「しまった!」


 J・ソンは湖に飛び込み、そして浮かび上がることはなかった。ただ一つのズタ袋を残して。



「今回は後味の悪い事件でしたね……犯人の自殺とは」

「ウォォォ……」

「あの、こちらの人は……」

「ああ、毛利くんには紹介してなかったな。J・ソン捜索時に見つけた人でな、ジェーソンさんだ」

「J・ソンさんではないのですね?」

「おいおい、まぁ疑う気持ちはわかるが……見たまえ、ズタ袋は被ってないだろう」

「ええ、そうですね……でもズタ袋って浮いてきませんでした?」

「ハハハ、毛利くんはやはり私の助手にしておくにはもったいない推理力だ。たしかに彼が生きてる可能性はあるね、見つかったのはズタ袋だけだ。ジェーソンさんはメタルチックなよくわからないマスクだし別人だよ」

「なるほどそうですか」


 いつものように投げやりになったワトは関わるのを辞めて、皆でパトカーで帰路につくのであった。

 なんかカップルが載ってる車にどこかからか出した獲物ナイフを投げつけ事故を起こさせるジェーソンさんに気づかぬ2人と気付いて見ないふりをするワト。

 この後事故死で処理されるカップルの無念は誰も知らない。

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