ヨガのエクササイズ
3月10日。いすみと伽耶はグレッグたちがアップした動画を見てヨガのエクササイズに励んだ。彼らのチャンネル名はアンビシャス。オープニングテーマはなぜか[タッツ]。な、なんで?[タッツ]は中日の立浪監督の替え歌だ。グレッグたちは白の柔道着姿で求道者のごとく黙々とヨガのエクササイズに励む。妙にツボにハマる。エンディングテーマは[ドカベン]。あのどよーんと暗いエンディングテーマだ。どうして彼らは野球にこだわるのか?2人はラインで教官たちとの雑談に花を咲かせた。「体幹を鍛えないと実戦ではよく転ぶ」「するとどうなるの?」「魔法戦士はたいがい女子校育ちが多いからね。シードマンに優しく引き起こされてメロメロにされまくるんだ」「それじゃあ勝負にならないわ」「まず挽回は不可能だ。だからこそふだんから体幹を鍛えないとね」「わかったわグレッグ」グレッグたちは街コンにチャレンジしては連戦連敗。ヨガのエクササイズの動画では再生回数もチャンネル登録者も伸びないため、心霊系ユーチューバーを目指すべく何度も話し合いを重ねた。しかし彼らはチキンだし霊感ゼロ。なのにオカルトには興味しんしん。このあたりはいすみたちにそっくりだ。なのでコンセプトはすんなり決まった。僕たちはスピリットボックスもバケタンも使わない。あくまでも自分たちの五感を頼りに心霊スポットめぐりを満喫する。グレッグたちは定期的にお祓いに行くかどうかでモメたが、最終的に[炎の祈祷師]の呪い返しの動画を24時間流すことで悪霊も生霊も邪気も呪いも一切寄せ付けないということで落着した。初めての心霊ロケは天理ダムに決まった。しかしグレッグはノリノリだが、ゴードンは浮かぬ顔。もともとグレッグは直情的だ。天理ダムはあのダラシメンでさえ厳しい難所。だからこそ僕たちが行くことでダラシメンと肩を並べるという野望に燃えたのだ。しかしみんなは大反対。いすみたちは大阪の犬鳴山トンネルを勧め、ゴードンは「僕たちには荷が重すぎる」と猛反対した。ゴードンは理性的だ。地に足がついている。オープニングテーマとエンディングテーマは[魔王魂]を採用した。心霊系の動画は昼の下見と夜の探索の2本立て。このあたりは初期の頃のSKTを参考にした。世代はSKTの方がひと回り上だが、コンセプトが似ているのだ。グレッグは意気揚々とクルマを飛ばした。運転手は行きがグレッグ。帰りがゴードン。現地に着いた。幸いにも好天に恵まれて風もないが、夜は雨になりそうだ。昼の下見では余裕を見せていたが、夜になると空気が一気に変わる。グレッグはすでに雰囲気に呑まれていた。「なかなか手強そうだなゴードン」「グレッグ、オープニングを撮り忘れた男が言うセリフか?」「ちなみにここの恐怖レベルは?」「Aだ」「なにい?え、Aだとお?」「グレッグ、しょっぱい演技はやめろ」「ダラシメンがムリな場所が僕たちに通用するか?」「通用するわけないだろうが」「そうだろうさ」グレッグたちはダムがあまりにも怖すぎて近くの公園やバス停をウロウロするのだが、実はこのあたりもハンパなく怖い。それでもなお彼らは意を決してダムを歩き始めた。「なあゴードン、背後から足音が聴こえてくるんだが」「そうか?僕には聴こえないが?」「マジか?今度は女の声だ。ゴードン、ここはマジでヤバイかもしれん」「いすみたちだってあれだけ反対してただろ」「でもゴードン、お前もここに来るのは初めてのはずだ」「それがどうした」「いすみたちはここに来たことすらない。なのにどうしてここは危ないとわかるんだ?」「ダラシメンの動画を見たらわかるだろ?」「具体的には?」「彼らはガテン系だ。現場の経験値が高い。ディエゴくんは知らんがな」「更には心霊スポットの経験値がまるで違う」「そうさグレッグ。そんな彼らが怖いといえば怖いのさ」「なるほどな」「僕たちとは踏んだ場数が違うのさ」グレッグたちは20分が限界だった。エンディングを撮り忘れたことさえ彼らは気づかなかった。ここは次元が違う。オープニングとエンディングは後日撮り直してアップすると意外と伸びた。再生回数は300回。チャンネル登録者は一気に50人に増えた。これまで再生回数は100回にも満たず、チャンネル登録者はいすみたちを含めても10人にも満たなかった。グレッグたちは大喜び。「ついに僕たちはダラシメンと肩を並べた」「そんなわけないだろグレッグ。僕たちはただ奈良のシカを見て帰ってきただけだろうが」でもゴードンはまんざらでもない。やはり心霊系ユーチューバーは場数を踏むことが大切。異世界ではユーチューバーは底辺でしかないが、心霊系ユーチューバーだけが勇者として高く評価される。でも1度でも演出やヤラセをすれば永久追放されるのだ。異世界と今の日本は価値観が全然違う。最近は日本人の心霊系ユーチューバーを評価する向きがあるが、高い評価を得ているのがSKTやグレイゾーンTVやテルスターブラザーズやMSレッドカーペット。箸休めチャンネルの評価は極めて高かったが、とくちゃんがやめたのを惜しむ声がいまだに根強い。SKTのサイキックやテルスターブラザーズのしょーまくんの再起を願う声もいまだに根強い。