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大嫌いな町

俺の住んでる町は魔王城から遠く離れている、いわゆる田舎だ。ゆるい空気が漂っている、俺の大好きで大嫌いな町。


悪魔というのは元来戦いを求めるものである、俺も例外ではない。だがこんな田舎にいるのは戦いに飽き飽きした腑抜け悪魔のみだ、誰も相手にしてくれない。唯一の同世代であるファウも「戦いたくない」の一点張りだった。




「なぁファウ、1回でいいから俺と戦ってくんない?」


「ベリアル言ったろ、僕は戦わない。僕より、あの子にでも声掛けてみた方が有意義だ」


ファウの言う「あの子」とは町民の手伝いをしている女の悪魔だ、この前魔王城付近の集落から逃げてきてここにたどり着いたらしい。ベリアル達より少し背が低く、町民と笑い合う姿は戦いになんて興味が無さそうに見える。


「あいつは駄目、いかにもな穏健派にわざわざ声掛けても仕方ないじゃん」


「そうか、ベリアルくんは同世代の女の子に話しかけるのが怖いと。」


「行ってくればいいんだろ、じゃな」


食い気味の言葉を残し、駆け足で離れていくベリアルを見てファウは笑いを隠しきれなかった。その笑い声はベリアルの所まで届いていたが当人は気にせず女悪魔に話しかけた。


「俺と戦ってくれ!」


笑い声は更に強まった。洗濯物を干していた女悪魔は持っていた服を折りたたんで微笑む。それを見て、女慣れしていないベリアルは時間が一瞬だけ止まったように感じた。


「いいけど…あなたじゃ私に勝てない」


ベリアルの時間は再度停止した、女悪魔が冗談ではなく確信を持ってその言葉を言っていると理解したからだ。停止された時間が動き出してからベリアルはすぐに魔力の剣を作り上げて女悪魔に差し向ける。


「このアマ、舐めやがって!」


微かな期待と怒りでたった今から戦闘を始めようとしたベリアルの右手は、振り下ろされる前にファウにって止められる。


「だから言ったろ、この子の方が戦う意欲がある。それより急にごめんね、下手な威嚇を見せてしまって。僕はファウ、君の名前は?」


「わ、私はリリアン。知っての通り魔王城付近の集落から越してきたの。……それで、君は?」


リリアンはベリアルの方に目を向ける。


「あぁ、こいつは……」


「俺、は!」


ファウの手を振りほどこうとと必死にもがいていたベリアルも、自分抜きで会話が進んでいくのに耐えられなくなり声を荒らげた。


「俺はベリアルだ!お前も、ファウも全部倒していつか魔王になる男の名前だ。覚えとけよ!!」


その声は村中に響き渡り、悪魔達は「またか」と呆れつつ笑った。ファウとリリアンは大声で笑った。ひとしきり笑った後、2人はベリアルを見て言う。



「「待ってるよ」」

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