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解決編05

 イオリはジェンダーレスというやつだ。女装して学校に通っている。学校側は理解を示し、クラスメイトは女子として受け入れている。かなり幸運な方だろう。本来ならイジメられていてもおかしくないし、ましてやスクールカースト最上位の一軍として認められるなんて考えられない。それを成し遂げたイオリは、どれだけ女子としてあり続ける努力をしているんだろう。何の努力もせずに漫然と女子をやっている私やトモエが、スクールカースト最下位なのは当たり前に思えた。


 ちなみにトモエがBLカプの片方がイオリではと思ったのも、それが要因だろう。イオリは男であるという事実が、トモエの頭にあった。だからそういう事をする時は、声が男っぽくなってしまうのではと考えてしまった。


 それにしてもイオリは女子にしか見えない。足は超キレイでスカートでも違和感がない。だからこそ、男性のシンボルをどうしているのか、スカートの中への興味は学校中の人間が持っているだろう。でもそれを確認できる手段はない。イオリは着替えをする時、保健室を利用する。イオリ自身は女子のつもりでも、クラスの女子たちはやはり着替えを共にするところまでは受け入れられなかった。かと言ってイオリ自身が、男子と一緒に着替えをする事を受け入れられなかった。そんな事があって保健室での着替えが常になった訳だ。更衣室が一緒なら見る事もできたが、できない。今の状態でスカートをめくって見てみる訳にもいかない。確認する手段がないとはそういう事だった。


 イオリは完全に女子にしか見えない。でも恋愛に関しては、イオリの恋愛対象である高校生男子はきっと受け入れられないだろう。本当に好きならという事が、お盛んな思春期真っただ中の男子が思える訳がない。だからきっとイオリはBL趣味に走ったんだ。欲求をそちらに向けた。そして、そこからはただ沼にハマっていた。


 私はイオリを見つめる。いろいろな所で歪みが生じている。きっとその歪みは、イオリ自身を苦しめている。このまま一人で苦しみ続ければ、きっとどこかで糸が切れてしまうのではと思う。


「一緒に楽しもう、それに恋愛相談に乗るし、応援する」


 私は握手を求める様に手を差し出した。それを見てトモエも慌てて同じようにする。どっちにしてもBLの同志が増える事は良い事だ。イオリ側からしても、一人で苦しむなんてことは無くなるだろう。


「難しい事は考えないで、友達になろう」


「そ、そうだね」


 私とトモエに対して交互に視線を移したイオリ。それからいろいろな感情を混ぜ合わせた様な表情を浮かべる。嬉しさがベースにあると信じたい。


「二人とも」


 イオリが呟いた後、立ち上がって私たち二人を抱きしめた。


「おぉ」


「あ、あぁ」


 私達は驚いて声をあげてしまう。女子として受け入れているつもりでも、こういう密着にはやっぱり少し驚いてしまう。こういうのがきっとイオリに、歪みとして認識されてしまうのだろう。友達になるなら慣れないとな。


「……ありがとう」


 そんなイオリの声が微かに聞こえてきた。少し震えた声。


「同志の為だ」


「そ、そうだよ」


 私達はそう優しく声をかける。そして、抱きしめてくるイオリから見えない事を良い事に、私達は視線を送り合うとニヤリと笑い合った。


 同志として助け合いだ。私達はイオリを応援し助ける。イオリは私達にリアルBL実況をしてオカズを提供する。これこそウィンウィンである。

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