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解決編03

「イオリ氏はドラマCDを流して掃除道具入れの中からそれを聞いていたんだよ、あるシチュエーションを楽しんでいた訳だ、その時、掃除道具入れに入りやすい様に、チリトリを含む道具を外に出していた」


「あっ、そ、そういう」


 トモエが納得した声をあげ、私はそれに頷く。こういう事へのトモエの勘は鋭い。すぐに何をしていたか、悟ったらしい。イオリに視線を向けると小刻みに震えて顔を、というより全身真っ赤にしていた。


「イオリ氏はリアルBLカップルが教室に入ってきて、咄嗟に隠れてしまったら出るに出られず、秘め事を覗き見てしまう、という高度なシミュレーションプレイを楽しんでいたんだよね」


「そ、そこに私達が来ちゃったんだ」


「焦っただろうね、掃除道具入れから出て、スマホの音声を切る、入りやすい様に出していた掃除道具を元に戻す、そこまでやってさらに私達に見られない様に教室から脱出するのは出来なかった……ちなみにチリトリが出しっぱなしだったから私がしまっておいたよ」


 おそらく相当焦っていたのだろう。だからこそチリトリという足元にある物が視界に入らず、しまい忘れてしまった。それに教室の外まで聞こえるほど大きい音で、掃除道具入れを開け閉めしてしまったのも失敗だっただろう。たぶん焦って力が入ってしまったのだ。


 イオリは私の言葉を聞いて立ち上がった。


「しょっ」


 小刻みではない震え方をしながら、イオリの口から音が漏れる。動揺しすぎて言葉になっていない。一軍の人間が、こんな風に動揺する姿は滅多に見れない。特にイオリはクールなタイプだ。余計にレアな姿だった。それだけに相当バレたくなかったのだろう。


 やっとの思いでイオリは言葉をつむぐ。


「しょしょしょ証拠出しなしゃいよ!」


 どう見ても余裕がない。まともに口が回っていなかった。なかなか可愛らしい物だ。トモエもこういう姿を見れば、恐れが払しょくされるのではないだろうか。


 私は少しトモエに視線を移した後、イオリに対して口を開く。


「証拠はない」


 証拠を求められるのは想定の内だった。でも残念ながら、この推理を補強する決定的証拠はない。指紋や髪の毛などの遺留品の検査でもできれば証拠を用意できたかもしれないが、もちろんそんな事出来る訳もなく。


「じゃ、じゃあ」


 救いの光を見たかのように、イオリの表情が明るくなる。言い逃れができるかもしれない、という希望を見たのだろう。でも残念ながら、証拠に変わる物を用意してきていた。


「でもある方法を使えば、証拠の代わりになるんだよ」


 私の言葉でイオリの表情は一変して、絶望の陰が差す。私は懐からある物を取り出して、イオリに掲げて見せた。


「しょ、しょれは」


「このドラマCDの限定イラストだよ……偶然手に入れた」


 このドラマCDは好きではあったが、ものすごくハマったわけではない。でもそういう物こそ、なぜか限定品を手に入れられたりするのだ。


「ひゃきゅまい限定でちゅせんが行われたげんていイラシュト!」


 さっきからイオリのキャラが崩壊しているが、大丈夫だろうか。少し心配になりながら私はある事を切り出す。

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