ようこそ、迷える子
無数の蝋燭が並んでいる。
全てに火が灯っており、明るいはずなのに、なぜかこの場所は暗い闇にあるように感じさせる。
「おやおや、お客様ですか。」
突然、背後から声がかかった。
「一見さんはお断りしているのですがねえ。」
声の主は、ひょろりとした和装の若い男。
「ここは、どこなんです。俺はベッドで寝てたはずじゃ…。」
「ああ、お客様というより迷子様なのですね。
あなたは迷い込んだだけ…ふーん、ま、いいでしょう。
ご案内しましょう、ついてらっしゃい。」
男がそろりと歩いていく後ろをついて行く。
こんなにも蝋燭があって、歩く隙間なんて無いはずなのにまっすぐ進んでいてもぶつかることがない。
なんとも奇妙で、不気味だ。
「さぁ、ここらで良いでしょう。」
到着…したのか?
先程まで居た場所の風景となんら変わりのない。
ただ無数に蝋燭のある空間だ。
「あなたはもう分かっているはずでしょう。さぁ、話しなさいな、迷える子。」
「俺は…」
?!?!?!
なんで俺は話始めようとしているんだ。
何を話すか、もう分かっているかのように。
「さぁ、早く。」
そう言って男は近くにあった薄紅色の蝋燭を持ち上げた。
なんだか、その蝋燭は初めて見たような気がしない。
最近ずっと近くにあったような。
いや…ずっと昔から自分と一緒にあったような…。