第6話「自己紹介」
途中まで書いた下書きを全部間違えて消してしまいました。
やる気が一気に無くなります。
「僕の名前は白鳳ミチオール創真っていうんだ!ロシア人のママと日本人のパパとの間に生まれたハーフ。17歳だよ。君の命の恩人にしてミステリアスな美少女です。じゃあ僕が自己紹介したんだから君もしてもらってもいい?」
白髪の女は急に自己紹介を始めた。
ミチオールか、確か英語で全て未知っていみだな。
さすがにそれくらいは、知っている。
確かにこいつの頭の中は未知で満ち溢れているが。
何より年上だったことに驚く。
「俺はここに来る道中に空飛ぶサメに手をくわれた」
なくなった方の手、さっきまで白い女がれろれろ舐めていた方の手を上げてみせる。
白い女は何言ってんだこいつみたいな顔でこっちを見てくる。
彼女の鋭いつりめから少なからずの苛立ちを感じる。
「お前の方からいってきたんだろ?、事故紹介しろって。気になってたんだろ?この手のこと。そんな顔ゴミを見るような目で見るんじゃねーよ」
「字が違う字が!確かにその怪我のことは気になっていたけど、なんで僕は名前や家族構成、自分の特徴を言ったのに対して君は自分に起こった悲劇を話すんだ!話の流れ的におかしいだろ!文脈で分かれ、文脈で。君もしかしなくても頭悪いだろ!」
「否定はしない。自己紹介と言っても名乗るほどのもんでもないしなぁ。それに俺自分の名前好きじゃないんだよな。苗字もできるだけ人から呼ばれたくない。愛称は『デブ』って呼ばれてる。こっちは結構気に入ってるんだ。俺の尊敬するある人がつけてくれたあだ名だから。由来はもちろんこの体」
俺はむき出しになっている自分の腹をぽんとたたく。
腹についた贅肉がプルプルと波打つ。
「ふーん、そっか。じゃあデブ君って呼ばせてもらうね。デブ君も僕のことはミチオールって呼んでいいよ。僕のことをミチオールって呼んでいいのは今の所全世界で君が三人めだよ。感謝してよね」
自慢げな顔で言ってくる白い女、もといミチオール。
その表情は美しく可憐で雪のせいがいればきっと彼女のような感じなのだろう。
不覚にも可愛いと思ってしまう。
俺のムカつく無表情なあいつに似ているというのに。
「感謝感謝。光栄ですよミチオール様。あなたのような女神様にすくっていただけるなんて我が人生最大の幸福であります」
「えぇ!えっとその?どういたしまして?」
またほおを薄ピンクに染めて俯く。
どうやらこの女お礼やらを求める割にはあまり褒められ慣れてないみたいでどうやって反応すればいいのか困った顔で俯く。
じゃあ、なんで感謝を求めてくるんだよ。
「それでミチオール、少し聞きたいことがあるんだがよろしいか?」
「え?なんで僕が一方的に僕が持っている情報を渡さなくちゃいけないの?さっきも思ったけどデブ君って頭悪い?というよりも常識がない?大丈夫ちゃんと学校行っている?」
ありえない速度で人を馬鹿にしてくるなこの女。
一度しめてやろうか?
だいたい常識の点で言えば、怪我した人間の手を舐め回すのも、公園で眠るのも、半裸で徘徊するのも、初めて会った人間と親しく喋るのも非常識だろ。
あれ?ちょっと待って半分以上俺に当てはまることなんだけど。
「じゃあ、お互いに一つづつ質問し合う。どっちかが答えられなくなったら質問終了。オーケー?」
「オーケー。じゃあまずは友好の印に君の命の恩人である僕の連絡先を君贈呈しようではないか!」
ミチオールはワンピースのポケットから携帯電話を取り出した。
俺も取り出そうと思ったが、今はここら辺一帯だけでなく世界一帯で圏外のはずだが?
『世界』がシナリオどうりにことが進むなら本来は今日の午後から一切の電波が世界中で使えなくなる。
がどうやらもう小説のストーリーとはシナリオが狂ってきているらしくもう俺の携帯電話は圏外となっていた。
俺はポケットから何年も使っている携帯電話を取り出す。
アンテナは一本も立っておらず圏外のふた文字が書かれていた。
ついでに知りたかった時間も書いており今は朝の6時を少し過ぎたあたりだった。
世界がこわれるまでまたは作り直されるまであと6時間か。
隣にいるミチオールはぎこちない手つきで携帯電話の画面を操作していた。
そして目的のアプリが出てきたのかこちらに向けて画面を表示してきた。
「はい、これ僕のフレンドコード。こんなミステリアスな美少女と連絡先交換できるなんて君は本当に運がいいね!」
ニコニコしながら俺の幸運を褒め称えてくる。
俺の人生確かに幸運も多いがその反動のごとく不運も多い。
多分俺のステータスは幸運値と不運値が互いにマックスまで割り振られているのだろう。
じゃなきゃ『負けイベントモンスター』に初日からであってたまるか!
ん?ミチオールの携帯の画面なんで普通に有名チャットアプリが開いているんだ?
もう世界で電波を使った通信はできねぇはずだろ?
ミチオールの携帯電話を見てみるときちんとアンテナが立っていた。
俺の携帯は圏外になっているのに。
俺は首を傾げているとミチオールはどうして自分の連絡先をさっさと登録しないのか不思議に思ったのか俺の携帯の画面を覗き込んだ。
そして盛大に笑い出す。
「あははははは!すごいねデブ君!なんでこの情報社会で圏外の携帯なんて持ち歩いてんの?しかもまた古い機種!何年いや何十年前の携帯だい?物持ちいいねぇ?でも圏外の携帯なんてWi-Fiとんでないとアプリ使えないし緊急連絡しか使えないカメラだよ!カ・メ・ラ!ははははは!」
腹を抱えて爆笑された。
古い機種の携帯?何を言っているんだ?俺はこの前携帯電話を買い換えたばかりだぞ?
買い換えた?そう買い換えたんだ!
今手に持っているのは先代の携帯だ!
そりゃあ繋がらないわけだよな!納得納得!
そうだよ、普段はWi-Fiを家で接続しているから気がつかなかったがこっちの携帯もう解約済みだった。
長年この携帯電話を使ってたもんで手に馴染むから無意識にこっちを持ってきてしまった。
爆笑されても文句は言えんわ。
別にいいかどうせあと数時間もすれば世界中の携帯電話は緊急連絡もできないカメラに成り下がるんだから。
隣で腹を抱えて大声で笑うミチオール。
この時間帯は人通りが少ないからいいのだが知らない人が見たらどんな光景なのだろうか?
半裸の男と笑いまくる白い女のセット。
完全に警察がすぐこっちに来る案件だな。
「悪いな、今連絡できる方の携帯電話持ってないんだわ。いつまでもこの格好だと風邪ひきそうだし一旦俺の家に来ないか?お茶くらいなら出すしここから近所だし」
「初対面の女性をいきなり家に誘うなんて!しかもその流れがスムーズ。一体僕の体に何しようっていうんだい?」
自分の体を手で抱きしめ急に警戒してきやがったこの女。
半裸の男の傷ついた手首をなめる謎の行動ができるのに、半裸の男の家に行くのはできないなんてマジミチなる存在である。
しかも結構強めで抱きしめているのか体のラインが出てエロい。
この女の容姿があいつに似ているからついつい慣れなれしくしゃべってしまったが確かに俺たちは今日初めて会ったばかりだ。
いきなりこれは距離を詰めすぎたか?
「ここでちょっと待っててくれ。すぐに服着て携帯電話もってくるからよ」
俺は立ち上がりそのまま歩き出した。
まだ聞きたいことはたくさんあるのだ。
小治朗や涼香ちゃんの安否もきになるし一度俺は家に帰ることにした。
「ちょっと、僕を一人にしないでよ、ついてく、ついてってあげるよ!人使いが荒いんだねデブ君って!」
あわてて俺の隣に並び歩くミチオール。
隣を歩くミチオールが少し驚いた表情で顔をあげる。
「デブ君、身長たかいんだね。何センチぐらいあるの?」
「それは質問か?」
「うん。僕も184センチあるけど僕よりも大きい人って男の人でも女の人でもあんまりいないからさ」
「確か学校入ってすぐに身体測定した時は193センチだったと思うがまた少し伸びたかもしれねぇ。こんなにでかくなるなんて俺の将来設計にはなかったんだがな」
確かに昔はせめて170センチは欲しいと願い毎日牛乳を飲んではいたがまさかここまで効果があるとは。
蓄えていたカルシウムが一気に爆発したということだ。
「次はデブ君の番だよ!なんでも聞いていいよ!僕は寛大なのさ。出身とか趣味とかプラーベートからチャームポイントまで教えてあげちゃうよ!ミチオールちゃんの情報バーゲンセールの開催です!特別なんだからね」
手を大きく広げる。
確かに出身やらは気になるな。
少なくともここら辺の人間でないことは確かだし。(ご近所さんだったら流石に評判になってるよこんなキャラが濃いおんな)
その前にまず聞かなくてはならないことがある、それによってこの女とこれから行動を共にするかどうかを決める
場合によってはどこからか全力で走って逃げよう。
体力には自信があるからな。
「ミチオール、お前兄弟とかいる?美人で感情に乏しいくせに異様なほどかまってちゃんのねぇちゃんとか?」
「いないよ?僕ひとりっこだもん。ママとパパの愛情をずっと独り占めにしてきたし、なんでそんなこと聞くの?」
「一応確認しとこうと思って。俺の知り合いでミチオールみたいな外見の奴がひとりいてさぁ。いきなり消息立ちやがったから一目会って文句言ってやろうと思って、知り合いじゃなきゃそれはそれでいいや」
夢平さんが死んで、恋だの愛だのいざこざのせいで俺が所属していた、不良グループは解散しちまった。
その中心にいたのは間違いなくあの無表情な白い女だ。
「僕に三回お願いしてもいいよ?運が良ければ叶うかもね!」
ニコニコと笑みを浮かべて俺に行ってくるミチオールに首を振って拒否する。
なんでだよ意味がわからん。
「お前っに願ったら願い事が叶うのかよ。何者なんだよお前、さっき俺の手を舐めただけで直してたけど」
ミチオールは何を言われたかわかってなかった顔をしたがすぐにあれか!みたいな顔をして手をパンとたたいた。
「えーデブ君。それ聞いちゃうの?神様がくれたこの特殊な才能のこと聞いちゃう?嫉妬しちゃうかもよぉ?僕のような特別な人間だけに与えられた力に。それでもいいなら話すけど?」
ニタニタと笑うミチオール。
天使が悪魔のような笑みを浮かべていた。
安心しろ、特別な人間どころか今世界中にいる人間全員が何かしらの異能が使えるようになっているから。
等しく例外なく、中途半端にもて余さない程度に『モンスター』に対抗できる力を。
俺はこくりと頷く。
ミチオールは自慢げな顔で語り始めた。
「ほんと驚いたよね。今朝目が覚めたときに気がついたんだ!僕のこの才能に。今まで奥底に眠っていたのか僕が急に気づいただけなのかわかんないけどね。君が言うようにスキルっていうんだったら僕のスキルは自分の体液が圧倒的な治癒力を持つってところかな?止血効果もあるし。血でも唾液でも涙でも傷口につけるとみるみる治っちゃうの!これだけでもすごいのにさらに傷口を直接舐めるとさらに治癒力アップ!」
ベロンと自分の舌を出す。
その長さは一般人よりも長く彼女の小さな顔とはいえ顎くらいなら余裕で届きそうなぐらい長い。
「だから今日はこんな朝早くにお散歩してたんだ!そしたらちょうど運良く左手がなくなったデブ君がいたってわけ僕もちょうどスキル試したかったしどのくらいの治癒力なのか気になってね。人間の血って初めて舐めたけどあんまり美味しくないんだね。雨の日の鉄棒みたいな味がしたよ」
お前は雨の日の鉄棒を舐めたことがあるのか?
なるほど、よくもまぁ見知らぬ男の傷口をなめていると思ったが好奇心からか。
普通好奇心からでも舐めないとは思うのだが。
治癒能力、しかも現段階でもかなりの治癒力。
現に俺の左手首は完全にふさがっているわけだし。
これは将来的に考えて一緒に行動したほうが俺の生存率も上がるってものか。
治癒能力を持つ輩は確かに小説でも出ては来ていたがあまりの希少性ゆえにすぐにどこかしらグループに囲われていたはずだ。
「でも自分のスキルを試したいのであったら、自分の体をナイフかなんかで傷つければよかったんじゃねぇのか?」
「はぁ?そしたら僕か痛い思いするだけじゃん。バカなの?あぁバカだったね」
心底呆れた顔でこちらを見てくるミチオール。
自分が特別な人間じゃない世界中の人間が何かしらのスキルを開花させていることこの場で暴露してやろーか?
いやその必要はないな、どうせ否が応でもすぐ気付くことになるし。
俺はたどり着いた我が家の扉に手をかけた。
その時何か目覚めるような感じがした。
なるほど『世界』の奴そういうスキルをくれたのか、俺だけがランダムではなくリクエストにて手に入れたスキル。
俺は笑いながら勝手知ったる我が家の扉をあけた。
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