表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/16

プロローグ 『たった一人の僕の読者へ』

「何が面白くて、俺はこんな小説を読んでいるんだか」


高校の最初の夏休み真っ只中。

自分の腹についた贅肉を触りながらスマートフォンを片手にふとそんなことを思ってしまった。


俺の名前は出川でがわ武闘ぶとう、通称デブ。

身長はだいたい190センチくらいで体重は100キロオーバー。

特技っていうかまぁ、このでかい体のおかげで喧嘩なんかは一般人よりは強い。

ちょっと前までヤンキーグループの幹部を張っていたこともある。

今はヤンキーグループも身内のいざこざにより解散しただのでかい高校生になってしまったが。


俺は今、三年前ぐらい前か、よくある小説投稿サイトにてふと目に止まった小説。


『世界が壊れた、あるいは作り変えられた』


内容は至って王道。

急に世界中にモンスターやダンジョンなんかが出現して人類滅亡の危機に。

自衛隊なんかも頑張るんだけど近代兵器じゃあ手も足も出ない。

そんな中、モンスターを倒していく。


ありきたりな内容で大体の読者は閲覧数を見ると10話も読まずに離れて行っている。

稚拙な文章に、ステータスを書くのがめんどくさいからなのかレベルアップもしない。

確かにチート能力とかはあるけど、だったら他のランキング上位の小説を読んだほうがよっぽど有意義である。


何よりたちが悪いのがこの小説もう999話もあるという点である。

俺が読み出した頃すでに100話を突破しておりよくもまぁ誰も読んでないのにどんなモチベーションでこんなたら多々と小説を書いているのかと感心したもんだ。


昔、誰かが感想欄でなんでこんなつまらない小説を長々とかいているんですか?

といったとんでもな句神経逆撫でするようなことを感想欄にかいていたがこのことに作者は、いずれ必要になるから。とよくわかんないとことを返信していた。


じゃあどうして俺がこんなつまらない小説を読んでいるのかというと単純に登場人物のキャラが好きだからっていうよりも近親感がわく名前と性格をしているのだ。


なんの偶然か主要キャラの何人かは俺の昔疎遠になった幼なじみ達と全く同じだったのだ。

性格も口癖も気持ち悪いくらいに同じ。

ひょっとしたら俺の幼なじみ達のことを知っている奴がモデルにこの小説を書いているのかもしれないと思った。

見た目の方は小説ではスッゲェ可愛いやらびっくりするくらいイケメンとか抽象的にしか書かれていたからよくわからんが。

もっと細かくかけよ。


そんなつまらない小説も今日のお昼に記念すべき1000話にして最終回をむかえる。

1000話目が最終回なんてだいぶオシャレだとは思うがなんていうか物語的にちょっと中途半端な気がするのだが、ここからまとめられるのだろうか?


今までだいたい1話5千文字程度だが最終回は10万文字以上あるのかもしれない。もしくは無理やりまとめているのかもな。


俺は最終回が更新されるまでの間にもう一度1話目から読み漁っていた。

毎日毎日、書き続けてきたのだ。

読者はもはや俺だけなのにこの物語をきちんと完成させてくれた。

俺が楽しめたかどうかは少し謎だがそれでも更新されてすぐに俺は読みたかった。

読み終わった後にお疲れさまでしたとか次回作期待してますとか感想欄で書いてやろう。

今までそういうのやったことないから少し恥ずかしいが顔の見えない相手に羞恥心ってのもおかしな話だろ?

流し読みだから、そういえばこんなことあったなぁとか、地味に伏線回収してんじゃんとか思いながらベットの上でスマートフォンを片手にゴロゴロと読む。


気がつけば日も落ち始める時間になっていた。

さすがに腹が減ってきたし、コンビニで飯でも買ってこようかと立ち上がるとスマートフォンの通知がなった。


見てみると『世界が壊れた、あるいは作り直された、が更新されました』と書かれていた。

俺はそのままスマートフォンをタップすると小説のページに移動した。


「   第1000話   顔わからない僕のたった一人の読者へ

 この物語を最後まで読んでくれてありがとう。たった一人の読者のおかげで僕のやってきたことは意味がある有意義なものになった。この物語の真の最終回は是非君の目で見て欲しい。僕が知るこの物語は999話のところまで。だがこれから起こることを考えれば別にこの小説通りにストーリーを進めようなんて思わないで欲しい。未来は誰にだって変えられる権利があるんだから。今回焦点を当てた主人公達だがもし彼らにあっても過度な期待はしないであげてくれたまへ。何か一つ歯車が違えば彼らはまた違った人間になるだろうからね。この話は数ある未来の一つでしかないそんな程度に受け取って欲しい。この物語は世界が壊れる瞬間に完全に消去されるだろう。だから君だけにはこの物語をすべてあげよう。どう扱うかは君の自由だ。情けない僕の最後の抵抗だと思って欲しい。長くなったけど最後にこれだけは書かせてもらう。顔のわからない僕のたった一人の読者へ、この先お互いに生きていればどこかで会いましょう。  end 。」


・・・へ?おわり?

何度スクロールしてもそれ以上の文章はなく何も言えない虚無感が押し寄せてくる。


いやいやいや、ダメだろこんなの最終回俺に宛てたメッセージ?意味わからん。

そんなのあとがき欄にでもかけよ。

なんで本文にガッツリ書いてくれちゃってんの?

突っ込みどころは多々あるが真面目に意味わからん。

俺は今までこんな物語の結末を読むために1000話もこの話を読んだってのか馬鹿馬鹿しい。アホらしい。


作者になんかメッセージでも送ってやろうとか思っていたがめんどくさい。

とりあえずなんか飯でも買ってこよう。

俺はスマートフォンと財布を持って家から出た。


この時の俺は考えもしなかった。

まさかこのくだらないありきたりな小説がこの世界の未来を予知していたことだなんて。

ありきたりすぎてありえねぇぜ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ