12. 真実を知るもの
「それでどうなのさ、そっちは」
煙草をふかしながら話す一人の男の声が狭い部屋の中に響く。
「どうにかなるって言いたいです。あなたはどう考えているんですか?」
白い息が空気を濁らせる。
「そうだねぇ。どうにかならなくても俺がどうにかする。つまりどうにかなるってことだよ。まあ、理屈の話をすれば保橋先生も俺の力の中身までは知らない。俺は保橋先生の目的は理解しているが彼の力までは知らない。状況は同じだよ」
対面する制服に身を包んだ男は畳の上に置かれたカップを手に取り口に運ぶ。
「じゃあ、確実とは言えないってことですか」
「状況が同じならばどちらが勝つかなんて明白さ。経験を積んだものが勝つ。それに彼を殺さなきゃ死んじゃったグロルバー神父も泣いちゃうよ」
制服の男は両手で畳を押し座布団に座りなおす。
「ニュースで見ましたよ。教会ごと崩壊してたって。やっぱりあなたの仲間だったんですか。あなたの仲間がやられるくらいですから相当な強さなはずですよね?」
煙草を持つ男は天井を見上げる。
「ああ、そうだね。保橋先生は短い期間で繋霊という人間と霊の中間的なものを創った。どうやって創り出すのかも何も俺たちは知らない。俗にいう天才という奴なんだよね。だから協力を求めた。いや、話がややこしくなる。とりあえず今言えることは彼の実力は未知数だということさ。だからこっちも本気でいかなくちゃいけない」
外では暗闇の中セミが大きな音を鳴らしている。
「難しい話をしてるだけじゃ気が重いだろう? どうよ、最近の学校は。プールとか楽しいいだろう? 俺は泳ぐのが好きだが得意じゃないんだよ。いやぁ、懐かしいな」
制服の男はため息を漏らす。
「こんなときにそんな話しますか。そもそも俺の学校にはプールなんてないですよ。泳ぐのは好きなんですけどね」
灰皿に煙草を押し付ける。
「そうかい。ああ。そういえば、彼のセンスは抜群だね。台桜雪彦君だっけ。一度会ったんだよ。ただ時間が足りないかもしれない。出来るだけ保橋先生にはまっすぐな行動をとってほしい。彼の思い通りに仕上げることが勝利への一歩さ」
座布団狭い部屋の中で冷たく鋭い風が二人の頬を撫でる。
「もともとあいつの話をしたかっただけでしょう? あいつは強いですよ。時間は気にすることはないです。いざとなれば俺がどうにかします」
その言葉を聞いた男は煙草を灰皿に捨て立ち上がり顔を上げ真っ暗な空を見上げる。
「嫌な空気だね。こうして話し合う余裕はもうなさそうだね」




