一つ目の願い
「咲菜、おはよう」
「勇斗おはよう!来てくれたんだ」
そう言ってふわっと笑う姿は病気とは思えないほど眩しい。
「もちろん、大好きな彼女が入院してるんだから」
「そっか、ありがとう」
「体は大丈夫なの?辛くない?」
「うん、元気だよ!」
「そっか、」
「そんな悲しい顔しないでよ〜!こっちまで悲しくなっちゃうじゃん」
「ごめん」
「あ、そうだ!見てみてー!」
「死ぬまでにやりたいことリスト?」
「うん、少しでも楽しく生きれたらいいなって思って書いてみたの。意外とあってさ、十個も書いちゃった」
「じゃあさ、十個叶えようよ」
「いいの?」
「もちろん、大好きな彼女のお願いだからね」
「ありがとう、大好きな彼氏さん!」
「早速だけど一つ目は何?」
「一つ目は”花火がみたい”」
「花火ね、それなら来週花火大会あるね。外出許可とれるかな」
「どうだろー、ここからでも見えるのかな」
「とりあえず楽しみにしといてよ。じゃ、僕帰るね。また明日来るから」
「うん、またねー」
それから1週間後、外出許可は出なかったけどサプライズを用意している。喜んでくれるかな、どんな顔をするんだろうと考えながら準備を進め夕方、病室を訪れた。
「あ、勇斗だ、今日は遅かったね」
「色々やることがあってね。そうだ、咲菜にプレゼントがあるんだ」
「えー、なになに!?」
「何だと思う?」
「んー、髪留め?ピアス?」
「どっちも不正解。正解はこれだよ」
「わぁ、浴衣だ!かわいい~!!」
「咲菜に似合うと思って」
咲菜は、自分の気に入った物があるとき必ず僕とお揃いにしたいと言う。きっとこの浴衣も気に入るだろうから僕と咲菜でお揃いになるように選んだ。
「ねぇねぇ、勇斗のはないの?」
やっぱり今日も言った。コテンと首を傾げる姿が愛おしい。
「そう言われると思って自分のも買ったんだ」
僕の購入したものを見せる。
「おぉ、かっこいいね」
「今日は外には行けないけど屋上は借りたから。早く着替えて」
「もう、自分じゃ着れない癖に笑」
結局着付けから髪のセットまで全て咲菜にしたいとやってもらった。よほど楽しみにしていたのか、急に走り出した咲菜を慌てて止める。
「あんまり走ると転ぶよ」
「大丈夫だってー、うわ!」
「おっと、ほら言ったでしょ。全く危なっかしいんだから」
注意したのにも関わらず思いっきり正面から転びかけていた。僕が支えなかったら今頃顔が傷だらげだろう。
「気をつけてよ」
「はーい」
そんな会話をしていたら屋上についていた
「ちょっと目閉じて」
「えー、何ー」
「早く」
「分かったよ」
しぶしぶ目を閉じた咲菜の手を取り中心まで連れて行った。
「開けていいよ」
「わー!何これすごい、わたあめにかき氷にいっぱいだ!!」
「でしょ。早めに来て頑張ったんだから」
「それ自分で言う?笑 でも、嬉しい、ありがとう」
それからまるで本当に祭りに行っているかのように二人ではしゃいだ。
「あ、そろそろ花火始まるよ」
”ドン、ドン”と花火の上がる音が胸に響いた。
「きれー」
「うん、綺麗だね」
楽しい時間はあっという間に過ぎてしまった。
「楽しかった、ありがとう」
「こちらこそ。ねえ、二つ目の願いは何?」
「二つ目はね”星がみたい”」
「お任せ下さい」
「お任せします!」
家に帰り、いつがいいかなと考えながらテレビをつけた。
ーニュースをお伝えします。今月31日はスーパームーン。最も月が地球に近づく日です。この日は星も綺麗に見えるでしょうー
スーパームーンか、この日が良さそうだなと考えながら眠りについた。