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九つ目の願い
それから何日か経った日の日が暮れる頃、突然病院から呼び出された。急いで向かうと、丁度病室から担当医が出てきたところだった。
「先生!咲菜は大丈夫なんですか?」
「すみません。私達も手は尽くしたのですが…おそらく今日、明日あたりが峠になるかと…」
「…そうですか」
病室に入ると咲菜は弱々しくベッドで寝ていた。
「咲菜」
「勇斗、来て、くれたの」
咲菜は途切れ途切れの小さな声で言った。
「もちろん。身体はどう?辛い?」
咲菜は頷いた。
「息が少し苦しい…」
「そっか、辛いね…」
僕はそう言いながら咲菜の頭を撫でた。
「お願い聞いてくれる?」
「いいよ」
「九つ目の願いは”私を忘れないで”」
「絶対に忘れないよ。約束する」
「ありがとう」
「今日はもう遅いから寝ようか」
と言うと、咲菜は首を横に振った。
「どうしたの、寝たくないの?」
「眠るのが怖い…今、眠れば明日が迎えられない気がするの」
「大丈夫だよ。僕が傍にいるから」
こくんと小さく頷いた。
「ありがとう、おやすみなさい」
「うん、おやすみ」
咲菜の手を握り、寝顔を暫く見つめた後、僕も眠りについた。