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呪殺剣生  作者: 朧ユ鬼。
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冒険者登録

 しばしの時が経ち、舞っていた砂煙が晴れると、そこには無傷のアイズが立っていた。



「これなら誰も文句は言うまい。冒険者試験は合格だ。上に行ってこの紙を受付に渡すといい」



 アイズは満足そうにそう言うと、楓に近づき、一枚の紙切れを手渡す。恐らく合格通知書か何かだろう。



「ありがと」



「また戦えるのを楽しみにしているぞ」



「ん。次は本気で」



 そう言うと楓は、一階へと向かって行った。



 階段を上る途中に、ギルドの職員らしき人物とすれ違った。

 案の定、騒ぎになったようだな。まあ試験官だし、アイズがなんとかしてくれるだろう。



 階段から一階を覗くと、予想通りというべきか、階段の最上段付近で冒険者たちがざわついていた。



『これは……今出て行くと面倒なことになりそうだな……』



 今、冒険者の前に出て行けば質問攻めに遭うのは必至だろう。

 逆に、楓の実力を示すという意味ではあえて堂々と冒険者たちの前へ出て行くのもいい手かも知れない。まあ、楓はそんな面倒なことはしなさそうではあるのだが。



 そんな俺の予感は的中し、楓は冒険者たちを回避することを選んだ。



「なら、隠れてこっそり行く。魂魄炎《薄影》」



 楓の妖術により、俺たちは透明化し、限りなく存在感を消失させた。

 これならば一階にいる冒険者たちに気づかれることなく、受付へと向かうことができるだろう。



 楓は音を立てないように抜き足、差し足でこっそりと階段を上り、冒険者の間を抜けていった。



 冒険者の間を抜けると、楓は妖術を解除し、受付の方へ紙切れを持って向かった。 



「ん。これ」



 楓は受付へ到着すると、先程の受付嬢にアイズから貰った紙切れを差し出す。



「これは、合格通知書……もしかして、さっきの爆発音を起こしたのは……」



「ん。私の魔法」



 妖術という名前は今の世にあまり浸透していないようなので、面倒事を避けるため楓には妖術のことは魔法と呼ぶように言ってある。

 大きく見れば魔法なので嘘は言っていない。



「なるほど。冒険者登録をしますので少々お待ち下さい」



 受付嬢も楓の実力をある程度、把握したようだ。この調子で他の冒険者の見る目も変わるといいんだがな。



「登録が完了しました。こちらをお受け取り下さい」



 楓は目の前に差し出された水色のカードを受け取る。

 どうやらこれが冒険者の証となるようだな。



「冒険者についての説明は必要ですか?」



「お願い」



 俺たちはしばらく受付嬢の説明を聞いていた。



 その話を要約するとこうだ。

 冒険者とは依頼をこなしてそれに見合った報酬を貰う職で、冒険者ランクがG~Sまで設けられている。

 ランクによってカードの色が異なり、下から順に水色、黄緑色、黄色、橙色、赤色、紫色、紺色、黒色となっているようだ。



 ギルドカードは使用者の魔力波長を読み取るため、使用者以外は使用することができないということだ。

 早速、ギルドカードに魔力を流して楓の魔力波長を登録しておいた。



 依頼は階段横のボードに張り出されているので、それを受付に持ってくれば受けられるそうだが、依頼にもランクがあり原則として、自分と同じランクまでしか受けられないらしい。



 それに加えて、ギルドは魔物の買い取りも行っているということだ。

 こんなことなら果ての森の途中で倒した魔物を回収しておけばよかったな……。



「と、以上が簡単な説明になります。詳しいことはそこにある本をお読み下さい」



「ありがと。それじゃ」



 受付嬢の説明が終わると、楓はそのままギルドの外へと出た。



 ギルドの細かいことは、今は知る必要はないだろう。今はそれよりもやるべきことが沢山あるからな。



『さて、次はどうするんだ?』



 冒険者ギルドを出て、街中をゆっくりと進む楓に、俺は念のために次の目的地を聞いた。



「資金確保」



 楓は当初の予定通り、資金確保に向かうことを提案した。俺もそれが妥当だと判断し、楓にそのための手段を提案する。



『そうだな。魔物を倒してギルドに持ってくるのもいいが、折角だ。アレを売り払ってしまうとするか』



「アレって何?」



 アレの正体が分からない楓は首を傾げて俺にアレの正体を尋ねてくる。

 そんな楓に俺は少し自信ありげに答えた。



『今まで集めてきた金銀財宝の数々だ。どうせ俺が持っていても仕方がないからな』



 悠久の時を過ごしてきた中で俺は幾つもの財宝を手に入れていた。

 まあ、集めたのは俺じゃなくて俺の持ち主だった奴らなわけだが……今はその当人たちもいないわけだし、俺が売りさばいてもなんの問題もないだろう。



 俺はそう結論を下し、今の持ち主のために財宝を売ってしまうことを決めた。



「どこにあるの?」



 楓はそう言いながら、不思議そうに辺りを見回す。



『そうか、楓にはまだ言っていなかったか。俺は収納魔法を使えるんだ』



 収納魔法、多少の制約はあるものの別空間に様々な物を収納できるという大変便利な魔法である。



「収納魔法? 聞いたことがない」



 俺はこれで伝わるだろうと思っていたが、その返答は楓を余計に不思議にさせたようだった。



 聞いたことがないか。

 昔は、それなりに使える奴がいたんだがな……月日が経って失われてしまったのか?

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