情報収集
ギルドの外へ出ると、冷たい夜風が俺たちを通り抜けた。ふと空を見上げると、ギルドの中からも見えた半月が、俺たちを照らしていた。
そして、俺たちは宿を探し、そこで一夜を明かした。
宿代が食事付きで銀貨五枚と考えると、金貨十五枚は結構な大金だな。
補足だが、金貨一枚は大銀貨十枚、大銀貨一枚は銀貨十枚、銀貨一枚は大銅貨十枚、大銅貨一枚は銅貨十枚といった具合だ。ついでに大金貨なる物もあるらしい。
昨日、ギルドに行ったとき、ついでに基本的なことは聞いておいたのだ。
俺は宿で朝食を取る楓に今日の予定を伝える。
ちなみに朝食は、いわゆるポトフのような物とバケットだ。
『今日は情報収集をするために、図書館に行くぞ』
「ティルは本、読めるの?」
楓は食事の手を止めて、俺にそんな質問をしてきた。
普通の剣であれば本を読むことなどできないだろう。だが、俺は違う。
俺は自信満々に楓の質問に答える。
『くっくっく、そこらの剣と一緒にしてもらっちゃ困るぜ。俺は《念動》を使って、自分や物を動かしたりできるのさ。本を読むのなんてお茶の子さいさいだぜ』
「おー、さすがティル」
楓はパチパチと手を叩きながら、そう言った。
さらに俺には、あらゆる持ち主に適応するために、どんな言語も理解できるようになっている。
自分で言うのもなんだが、凄い剣だろ俺って。
他にも色々能力があるが……まあ、それは追々明かしていくとしよう。
楓が朝食を取り終えると、俺たちはすぐさま宿を出て、図書館へと向かった。
図書館に着くと、図書館の管理人のような人に入場料、銀貨一枚を支払い、中へと入る。
館内は思ったより広く、俺は楓と共に膨大な本の中から、様々な本を読み漁った。
人があまりいなかったのもあり、俺は《念動》を使い、スムーズに本を読み進めることができた。
途中に食事休憩を入れたとはいえ、ひとまずの情報収集を終えるまで、朝から夕方までかかったのだが……。
その日はそのまま宿に戻り、俺たちはお互いに今日手に入れた情報を交換した後で、楓は眠りについた。
俺は睡眠の必要がないので、今日得た情報を頭の中で整理していた。
まず、今の世界は大きく分けて四つの国があり、その外は魔境と呼ばれ、普通の人間が住めるような場所ではないらしい。
今、俺たちがいる国がレクシード王国。山を挟んで右にあるのがストラギオン帝国。
その上に位置する神聖ハイドロント法国。そして、海を挟んでレクシード王国の上に存在するルグリーネ共和国だ。
神聖ハイドロント法国とストラギオン帝国は何度も争いを繰り返しているという。
他の二国は表立って争ってはいないものの、神聖ハイドロント法国にいい印象は持っていないようだ。
このままだと、神聖ハイドロント法国は近いうちに滅びるだろうな。
もしも、大国三つを相手にできるような強大な力を持っていたのなら話は別だが……。
王国には王都を囲むように三大都市と呼ばれる物がある。
帝国にも似たようなものがあるのだが、そのことに関しては、今は置いておくとしよう。
俺たちが今いるのがその三大都市の一つの城壁都市エスタートだ。
ここらは、魔物の強さが他の所と比べて強いため、外壁などが他の街や都市などと比べ、頑丈に作られるといったような対策がいくつも取られている。
魔物が強いため、冒険者たちにとってはいい稼ぎどころらしく、そのためこの都市には冒険者が多いようだ。
歴史関係も調べてみたのだが、俺が封印される前に生きていた時代のことは載っていなかった。
一体どのくらいの期間、封印されていたのだろうか。
また、長い時が経ったことで、魔法も変化していた。
魔法の理解があまり進んでいないのか、昔よりも高度な魔法があまり普及していないみたいだ。
それでも、高位の魔法を扱える者はそれなりに存在しているようで、おそらくだが、ギルドカードの銀行のようなシステムもそいつらが創ったのだろう。
それらを調べていると、神具についての本も見つけた。
神具は今では遺物と呼ばれているようで、まだ存在しているらしい。
まだ見つかっていない物もあるだろうが、高位の遺物の多くは国や高位の冒険者が保有しているという。
例えば、アイズが持っているあの槍と盾もおそらくは高位の遺物だろう。
また、神具とは言えない性能の武具などでも、現在では遺物と呼ばれているという物も少なくはない。
他にも色々情報はあったが、大きいのはこのくらいだ。
もう少し情報収集をしたいところだが、明日は一旦中断して、ギルドで依頼を受けようということになった。
さすがに二日連続で丸一日本を読むのは疲れるからな。
絡まれるのを避けるために、できるだけ早く冒険者ランクを上げておきたいところだが、ギルドの規則上、今は高ランクの依頼を受けることはできないので、地道に低ランクの依頼をこなしていくしかない。
となれば、鍵になるのはいかに早く、数をこなすかだ。
それとも、急激にランクを上げない方がいいのだろうか。
昨日のこともあるのである程度は抑制されるだろうが、どちらにしても絡まれるのは避けられそうにないな、と思った俺は、考えるのをやめた。
朝になったら、楓に聞いてみるとしよう。




