迎え撃つ
ジリリリリリリ…………ッ!!
乗り物内に鳴り響く警報音に、オレは咄嗟にテーブルの下に潜り込む。
「何やってるんだ!? 出るぞ!」
アッフェがオレをテーブルの下から引きずり出すと、オレの袖を握ってどこかへ連れていこうとする。
ベーアもおかっぱもアッフェを先頭に付いてくる。その目は怖いくらいだ。
「どこに逃げるんだ!?」
この乗り物に不測の事態が起こり、乗員全員が外に脱出するのかと思ったら、
「何言ってるんだ!? 戦うんだよ!」
とアッフェに強い口調で窘められてしまった。
「戦う!? 何と!?」
「同業者さ。オレらの積み荷をかっさらおうって魂胆で、仕掛けてきたんだ」
よく分からんが、いきなりオレは戦いに巻き込まれたらしい。
オレは袖を持つアッフェの手を振り払い拒否を示す。
「何でオレが戦わなくちゃいけないんだ!」
「あん!? 戦わなくちゃ全員殺られて、あの飯だって食えなくなるんだぞ!」
何だと!?
「あの飯、また食えるのか!?」
一回だけの豪勢な食事だと思っていた。
「ハァー、何寝ぼけてるんだと思っていたが、うちは三食あんな感じだよ」
「さ、三食!? もしかして一日三食なのか!?」
オレの驚きの何がおかしかったのか、三人が爆笑する。無口そうなおかっぱまで口を押さえて笑っていた。
「ああ、一日三食だ。それだけじゃない。敵のラビットを倒せば、一機につき甘いお菓子が一個貰えるんだ」
とアッフェがウインクして答えてくれた。
甘いお菓子。パフェブレッドとは違う、本物のお菓子。
「本当にあるんだよな? 嘘じゃないよな?」
オレがアッフェの肩を掴んで揺すりながら尋ねると、
「ある! あるから離せ!」
またしても窘められてしまった。
天井が開いた広い空間に連れてこられたと思ったら、そこにはラビットが左右の壁にズラリと並んでいる。
そしてラビットファイターであろう者たちが、続々とラビットに搭乗していっていた。
「あんたがフロッシュね? 私はカッツェ。向こうのはミーツェ。このドックで整備を担当してるわ」
横から声を掛けられ振り向くと、二十歳ほどの茶髪の女が立っていた。その向こうには前の女と同じ顔だが、髪の色が少し薄い女が、オレの月光丸をいじっている。
「何してんだ?」
オレは不機嫌に尋ねるが、前のカッツェとか言う女はどこ吹く風だ。
「だから整備だって言ったでしょ。まさかこのリューゲ平原を大太刀一本担いで渡る馬鹿がいるとは思わなかったわ」
スタスタとオレが月光丸の所までやって来ると、もう一人の女が声を掛けてきた。
「お姉ちゃん、整備終わったよ」
「ありがと、ミーツェ」
「何やってたんだ?」
「まずソールを砂地仕様に変更して、所々砂を噛んで傷んでいた部品も取り換えたわ。ホントは初期設定のままのコクピットもいじりたかったんだけど、こればかりはファイターがいないとどうしようもなかったからね」
話し半分でオレが月光丸に乗り込むと、ミーツェの方が話し掛けてきた。
「あと、サブウェポンとして、短機関銃を装備させたわ」
背部パックを指差しているので振り向くと、背部パックの右には今まで通り大太刀がセットされているが、左には銃がセットされていた。
オレはそれを月光丸の左手で持ち構えてみる。
「あんた、大太刀使ってるくらいだから近接型なんでしょ? 突撃銃じゃ大き過ぎるからね。それなら片手で取り回し出来るし」
拳銃より一回り大きなそれには、引き金の前部に円盤がくっついていた。
「何だこりゃ?」
「ドラムマガジンよ。拳銃弾が100発入っているわ。それが引き金を引くだけでドバババッと発射される訳よ。予備のマガジンも背部パックに入ってるから弾切れは気にしなくていいわ」
「ただし、射程も命中精度も威力も、突撃銃には及ばないから、撃つときは近付いて撃ちなさい」
「分かった」
オレが頷くと二人は月光丸の稼働範囲から遠退く。
そしてオレはドックの中央に進み出ると、開け広げられた天井からこの乗り物の外へと飛び跳ねたのだった。
天空の青から一転、地上を見渡せば、既にそこかしこで戦闘が繰り広げられていた。
「しまった! 出遅れたか!」
そう言えばあの二人との会話中にも、何機ものラビットが空へ飛んでいったのを見掛けていた。
オレは地上に着地すると、直ぐに短機関銃を構える。
月光丸のソールが地面の砂を掴むのを感じる。なるほど、と一瞬感心するが直ぐに戦場であることを思い出し、周りを見渡せば、誰が敵で誰が味方なのか、まるで分からなかった。