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応酬

「何者だ!」


 男が声を上げると、部屋のドアと言うドアから、拳銃を持った男たちが飛び出してくる。


「ウォン!」

「うぉん!」

「ワンワン!」

「ニャア!」

「コケコッコー!」

「ヒヒーン!」

「パオー!」

「いや、象はねえだろ!」


 と男が鋭い突っ込みとともに窓を開け広げるものだから、オレたちはあっさり敵に見付かってしまった。


「おやあ? これはジェームス保安官ではありませんか。こんな夜分にどのようなご用件で?」

「ああ、ここはギャレットさんのお家でしたか。いやあ、気付かなかったなあ」


 その嘘には無理があるだろ。

 男、ギャレットは勝手知ったる相手であるジェームス保安官を視界に捉えると、悪魔のような形相で睨み付けている。それに対してしどろもどろな返答をするジェームス保安官。


「フロッシュ!」


 エリザベスが窓際に居たオレの姿を見付け、駆け寄ろうとするも、ギャレットの子分の一人がそれを捕まえて離さない。


「なるほど。正義の保安官殿は、子供が誘拐されたとでも勘違いして私の所まで来たようですな」

「はは、勘違い、ですか?」

「ええ。彼女、エリザベス嬢には、ご両親から捜索願いが出されているのですよ。それを昼間私の部下が見付けて保護したのです」

「な、なるほど~。そうでしたか」

「分かっていただけましたかな?」

「よし! じゃあ皆帰ろうか」


 ジェームス保安官は綺麗に回れ右をして、オレの腕を掴むと、オレを引き摺って行こうとする。


「あ、ちょっと待って」


 オレはそれを軽く制止すると、ここまで来るのに乱れてしまった服を正し始める。ついでに、


 バァン!


 ベルトに差しておいた回転式拳銃リボルバーを抜くと、ギャレット目掛けて一発撃ち込んでやった。

 しかし向こうもさるもので、オレの弾に当たったのは、ギャレットの護衛の一人だった。


「チッ!」


 オレは舌打ちしながら残る5発をギャレット目掛けて撃ち尽くすも、残る護衛によってギャレットは安全な部屋の奥へと運ばれていってしまう。

 なかなか上手くいかないものだな。などと悠長に考えてはいられなかった。


 バンバン! バンバンバン!


 ボスの安全が確保出来たところで、敵さんが撃ち返してきたからだ。


「くっ!」


 オレは素早く柱の影に隠れると、銃を横に振って弾倉シリンダーを出すと、空薬莢を排出し、次弾を込めていく。


「お前! 何てことしてくれたんだ!」


 ジェームス保安官が、命からがらオレの所までやって来て文句を言ってきた。


「そう言われてもな。エリザベスに危険が及んだら、誰であれ撃て、とクルーから命令されてたんでな」

「お前の所のクルーもお前も、狂ってる!」


 そう喚きながらも、ジェームス保安官はエリザベスを奥に連れて行こうとするギャレット一家の男の脚に、一発ぶち込んでみせるのだった。


「こうなりゃ、やけだ!」

「フロッシュ!」

「行かせるな!」


 やっと自由になってこちらに駆け込んでくるエリザベスを、奪い返そうとするギャレット一家だったが、ジェームス保安官だけでなく、街の大人たちまてが銃を撃って応戦していた。

 この街は、普通に住民が銃を所持しているのか?


「フロッシュ!」


 オレの胸に飛び込んできたエリザベスを、オレは小脇に抱えると、回転式拳銃リボルバーで牽制しながらその場から逃げようとする。

 だが今度は奴らが突撃銃アサルトライフルやら短機関銃サブマシンガンなんかを持ち出してきて足止めされてしまった。

 するとそこに、


 ズン……ズン……ズン……


 と何やらデカい物音が近付いてくる。


「エリザベスちゃーん!」


 現れたのは、工事用のラビットに乗ったアンナや店に残ったと思っていた大人たちだった。皆ラビットに乗っている。

 これで形勢逆転。

 まさかラビットまで出てくるとは向こうも思っていなかったらしく、オレたちは素早くギャレットの屋敷を後にする。


「てめえら! こんなことして只で済むと思うなよ! 戦争だ!」




「などとギャレットは最後まで吠えていましたとさ。おしまい」

「おしまい。じゃないよ! どう転んだらこの街の四家の一角と戦争することになるんだい!」


 エリザベスを連れ帰ったオレは、メアリーの婆さんにこっぴどく叱られた。解せぬ。

 食事などをする共有スペースでこの話を聞いていた他のクルーは、口をあんぐり開けている。


「メアリーさん。この戦い、私たちも協力します。一緒にギャレット一家を滅ぼしましょう!」


 アンナ以下街の大人たちは鼻息が荒かった。


「くそったれが!」


 ズダン!


 メアリーの婆さんが拳銃オートマチックを天井に向けて一発撃ち放つ。


「相当イライラしてんのは分かった。でも、じゃあエリザベスが街の外に連れ出されていても良かったのか?」

「良い訳ないだろう!」


 人間にこんな顔が出来るのかって形相で、メアリーの婆さんに睨まれた。


「奴らはオレよりエリザベスの事情に詳しかった。だったら遅かれ早かれこうなってたさ」


 それに対してオレは努めて冷静に対応する。


「…………ハァー。分かったよ。お前たち! 戦争だ! 準備しな!」


 婆さんの号令で皆が一斉に動き出しだ。

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