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〈ルナティック ラビット〉 〜Lunatic Rabbits〜  作者: 西順


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12/16

え?

「おら! 出すもん出せ!」


 金髪髭面の男が、吹っ飛ばされて出てきた男の胸ぐらを掴んで銃を突き付け脅している。

 完全に怯えきった相手の男が、ズボンのポケットから支払い用の端末機を取り出すと、金髪男はそれを奪い取り、自分の端末機とドッキングさせて、中のクレジットを勝手に移動させている。

 あまりの事態に呆気に取られるオレたち。


「なんか、昼日中から公然と恐喝している人がいるんだけど?」


 オレが女給に尋ねると、女給は恥ずかしそうに、


「あれでもこの街の保安官なんです」


 保安官!?


「なら納得だな」

「納得なんですか!?」


 逆に驚かれてしまった。


「え? 保安官って言うのは、銃をチラつかせて昼間っから小金持ってそうな奴相手に、強請りたかりをやらかす奴のことだろう?」


 オレは金なんて持ったことがないから関係なかったけど。いや、機嫌が悪い保安官に、何度か蹴られたことがあったな。


「いえ、保安官って言うのは、街の有力者から依頼されて、街の安全を守るのが仕事の人です」

「…………嘘だろ?」

「本当です」


 初めて知った衝撃の事実だ。


「じゃあ、あれは何をしているんだ?」


 オレは金を強請り取る金髪男を指差す。


「あれは…………」


 女給が言葉に詰まっていると、金をせしめてホクホク顔の男がこちらにやって来た。


「ジェームス保安官、一体何をなさっていたんですか?」


 女給が窘めるように男に尋ねると、男は「心外だ」とでも言いたそうに肩を竦める。


「酷い言い草だなアンナ。君の店でイチャモンつけてきた男を追い払ってやったってのに」


 そう言ってジェームス保安官は、女給アンナの肩に馴れ馴れしそうに手を掛ける。

 そのジェームス保安官の手をつねってやり過ごすアンナ。

 そしてその場に取り残されるオレたち。


「んだよ、見せもんじゃねえぞ」


 ジェームス保安官は手を振って、まるで野良犬の相手をするようにオレを追い払おうとする。

 まあ、金払えと言われないだけマシか。


「エリザベス、もう帰ろうぜ」


 そう言って振り返ったオレの視線に入ってきたのは、デカいブルータスだけだった。


「……………………え?」

「ウォン?」

「エリザベスが居ねえ!?」


 ちょ!? 待って!? どういうこと!? なんでこの数瞬でエリザベスが消えてるんだ!?

 オレは慌てて辺りを見渡すが、大通りにエリザベスの姿は影も形も見当たらない。


「どうなってるんだ!?」


 オレはアンナの方に一縷の救いを求めるように視線をやるが、女給は口に手を当て首を左右に振るばかりだ。


「どうかしたのか?」


 いきなり過ぎて呆然としているオレたちに、ジェームス保安官が声を掛けてくる。


「ここに、女の子がいたよな?」


 オレがそう尋ねるも、


「女の子? いやあ? オレが振り返った時にはアンナとお前、あとそのデカい犬だけだったぞ」


 なんてこった! 本当にこの数瞬で消えたってのか!? ヤバい! このことがジャックストームの奴らにバレたら、オレが奴らに殺される!


「さ、捜しましょう!」


 気が動転するオレに向かって、アンナが声を掛けてくれた。


「そうだな。捜そう!」


 頷くオレ。


「ジェームス保安官もお願いします!」

「あ、ああ」


 保安官もアンナに強く言われ、エリザベスの捜索に加担してくれた。



 そうして捜すこと数刻。

 大通りだけでなく脇道や小道までくまなく捜すも、初めての街で土地勘が無いこともあって見付けられなかったオレは、日が暮れそうな中を、また元居た飯屋に戻ってきていた。

 そこにはアンナとジェームス保安官だけでなく、大人が何人も集まっていた。


「ああ来た! フロッシュさん、見付かりましたか?」


 アンナに声を掛けられるが、オレは力なく首を振るしかなかった。


「この人たちは?」


 オレが尋ねると、アンナが街の人々に声を掛けて捜索を手伝ってもらったのだそうだ。皆我がことのように心配そうな顔をしている。なんだか自分の今後を心配しているオレが、小さな人間に思えた。


「あの、ありがとうございました」


 見付からなかったとは言え、捜索を手伝ってくれたのだから、とオレが礼を述べると、皆それどころじゃないだろう、と励ましてくれる。なんだか余計みじめになった。


「そんなにデカい犬がいるんだから、においで捜せなかったのか?」


 とジェームス保安官がそんなことを言い出す。


「においって?」


 オレが首を傾げると、集まった皆に驚かれた。


「犬は嗅覚に優れていて、もしかしたらにおいを頼りにエリザベスちゃんの所までたどり着けるかもしれません!」


 アンナの発言に、オレは横のブルータスに希望を見出だすが、当のブルータスはキョトンとしている。

 ああ、駄目かも知れない。


「こいつはじゃ駄目なんじゃないか?」


 オレが皆に尋ねると、目を反らされてしまった。


「いえ、物は試しと言います。やれるだけやってみましょう!」


 アンナは前向きだ。


「…………で、どうすればいいんだ?」

「何か、エリザベスちゃんのにおいの残っている物を持っていませんか? 持ち物とかエリザベスちゃんに貰った物とか。それをその大きなワンちゃんに嗅がせて、においを追わせることが出来れば……」


 においの残っている物と言われてもな。オレが身体中をまさぐると、ポケットの中からエリザベスから貰ったあめ玉が入っていた。


「あめ玉があった。けど、これで大丈夫かな?」


 そう言いながらオレはブルータスにあめ玉のにおいを嗅がせてみた。


「ウォン?」


 うん。予想通りと言うべきか、ブルータスが首を傾げている。


「お願いワンちゃん! そのにおいを頼りにしてエリザベスちゃんを捜して!」


 アンナが手を合わせる。そんなこと言っても相手は狼なんだが。と思っていると、


「ウォン!」


 とブルータスは一声吠えて、クンクンクンと辺りのにおいを嗅ぎ出した。


「ウォン!」


そうして走り出すブルータス。これは、いける! のか?

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