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 オレが大上段から大太刀を振り下ろすと、前面を塞いでいたラビットが、搭乗者ごと袈裟懸けに一刀両断される。


「この刀、良く斬れるな」


 たまたま拾った骨董品だが、錆びもなく刃こぼれもない。運が回ってきたのかも知れない。


「待てコラア! クソガキ!」


 賊の一人が後ろから怒鳴り掛けてくる。ハッ、待てと言われて待つバカがいるか。

 オレは大太刀を背部の格納パックに固定すると、愛機のラビット、月光丸で走り出す。



 2099年に勃発した第三次世界大戦から100年以上が経った現在でも、国はおろか復興した都市は数える程しかなく、世界は未だ混沌としている。

 そんな世界で人々の足として普及しているのが、第三次世界大戦で実戦投入された二足歩行ロボット、ラビットだ。

 と言ってもロボットとは名ばかりのこいつ、動いている理屈はテコとバネ。その動力は人間というなんともエコロジーな代物だ。

 体高5メートル程で、電気もガソリンも要らない。人間が搭乗すれば動くのだから、その普及は早かった。

 ほぼ炭素カーボンで出来た頑丈で軽量なこいつは、その機動力を上げるため、獣や鳥のような逆足、逆関節なのが特徴で、走るというよりピョンピョン跳ねることから、ラビットと呼称された。



 ダァン! ダァン!


「チッ、あいつら撃ってきやがった」


 オレは直ぐ側の岩影に隠れると、呼吸を調える。

 このラビット、動力が人間なものだから、当然その性能は個人の身体能力に拠る。一流のラビットファイターともなれば、筋肉ムキムキだ。

 オレはと言えば、ガリガリ。当然だろう、今日までその日の食料にも困る生活をしていたのだから。

 そんなオレが今ラビットに乗っているのは、偶然の産物だった。いやオレはこれを運命と呼びたい。



 腹を空かせたオレは、いつもの如く町の外れでうずくまっていた。周りにはオレと同じように痩せこけたクズが、オレと同じように地べたにうずくまっている。

 そんなオレたちの前に幌付きのトラックが止まった。これがバス代わりだ。

 オレたちは腹が減ってどうしようもない体を、無理矢理トラックに押し込め、目的の場所へと向かう。

 ラビットの生産工場だ。



 ベルトコンベアで流れてくる部品を流れ作業で組み立てていく。そうやって一日一度の食事にありつく。

 そんな生活を5年も続けていた。



 そしてその日、オレたちが働いていた、いや、作業を繰り返していた工場に多数の賊が襲撃を仕掛けてきたのだ。

 オレはこの日を待ちわびていた。

 もううんざりだったのだ。来る日も来る日もまるで自身が機械になったように正確に、ラビットを組み立ていく日々に嫌気が差していた。

 例え今日、賊が襲って来なかったとしても、明日オレが襲っていただろう。



 そこでオレは完成したばかりの新型ラビット、月光丸を、賊どもと交戦している警備兵の目を盗み奪い取ると、ロビーに陳列されていたラビット用の大太刀を持って工場を脱出した。

 オレの後ろから警備兵のラビットや賊のラビットが銃をぶっ放してきたが、オレと同じようにラビットを略奪した奴が何人もいたので、運良く追っ手は分散してくれたのだった。



「おら! とっととその機体寄越せや!」


 ダァン!


 そう言いながら銃を撃ってくるのはどうかと思うが、賊をするような奴に、その辺を考慮する脳ミソは無いのだろう。

 しかし今さらながら武器の選択を間違えた。刀じゃなく銃にするんだった。

 ちらりと岩影から様子を窺うと、向こうはたったの二機だった。

 これならいけるかもしれない! オレは背部から大太刀を抜くと、ジリジリと近付いてくる二機が、オレの大太刀の間合いに入ってくるのを待つ。

 が、それは叶わなかった。


 ダァン!


「おら! とっとと出てこい!」


 奴らはオレの大太刀が届かないギリギリの所から銃を撃って牽制してくる。

 しかも撃たれる程に岩が削られていき、オレの機体があらわになっていく。このままではいずれ蜂の巣だ。

 オレは覚悟を決めた。背にした岩に向き合うと、


 ドカァアン!


 その岩を蹴って敵機にぶつけてやったのだ。

 突然の飛礫に、腕を交差させて腹部のコクピットを護る二機。


「野郎!」


 反撃にキレる二機だったが、一刻前にその場にいたはずのオレの姿はそこにはなかった。

 オレは岩を蹴り飛ばした直ぐ後に、敵機上空に跳躍していたのだ。

 そして大太刀を逆手で持って、敵一機の頭部から大太刀を突き刺す。

 それで行動停止した敵機から大太刀を抜くと、まさかここまでの反撃を受けるとは思っていなかったのか、動揺して固まっているもう一機の腹部を横薙ぎに真っ二つにしてみせたのだった。


「ふう……」


 オレは一息吐くと直ぐ様敵機の背部パックから食料を自機に移し替え、周りに敵影が見えないことを確認すると、さっさとその場を後にしたのだった。

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