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七話 西の森の異変

 

 その情報に冒険者ギルドは愕然とした。


「壊滅した、だと、そんな馬鹿な!?高ランクパーティを、過剰なほど送ったんだぞ!」


 ギルド長が机を叩く。手の痛みにより冷静さを取り戻し、震える声で問う。


「な、何があった?」

「ま、魔物が報告よりも多くて」

「それはたまにある事だろ、それで!?」

「数百、俺たちが遭遇したのは数百規模の群れだった」


 自らが体験した恐怖を押し殺し、冒険者は報告を続ける。


「最初は順調に進めていたんだ。だけど、後から奴が、そいつは小さくて、死体を背負っていた。殆どがそいつにやられた。一瞬で、一瞬でみんなが死んでいった。バラバラになって。俺、俺怖くて逃げ出した。逃げ出しちまったよ……」


 自暴自棄になり項垂れる冒険者。ギルド長は副長を呼び、この惨劇を王城へ伝えるよう命じた。




 王城ではすぐに会議が開かれた。国王ラバナールや宰相アイトラ、総隊長メーサなどが集まった。アイトラの後ろにはニケラが待機している。


「王都のすぐ近くで、よもやこのようなことが起ころうとは」

「死霊系魔物が数百ねぇ、それと正体不明の小さい魔物。まぁあたしが行けば、何とかなると思うのよね」


 ラバナールは苦々しく言葉を吐く。メーサは、それを意に介さず気怠げになんとか出来ると豪語する。しかしアイトラは危惧する。


「しかし単独ではやはり危険かと、いくらメーサが強くとも、逃走を許すかもしれないですし。軍から何人か精鋭を集め、討伐隊を編成しましょう。もちろん私も行きます。ニケラとリンを連れて」

「ならば王旗隊を使え、そこから数名抜擢すれば良かろう」

「良いのですか?王旗隊は王の護衛、そこから……」

「良い。隊は使わねば意味がない」

「分かりました。では今から討伐隊を編成いたします」


 会議が終わり、アイトラとメーサによって討伐隊の編成が始まる。

翌日、兵舎に兵士を集め、討伐隊を殲滅力重視で編成した。その中にはソルの姿もあった。壇上でメーサが告げる。


「今回の遠征は、西の森での魔物の討伐。死霊系魔物が多数発見された。死体を背負った小さい魔物がいたという情報も得ている。高ランク冒険者が何人もやられている。住民に被害が及ぶのも時間の問題だ。だが、万全を期すために明後日出発する。アイトラの予想ではこの中の五分の一は死ぬと言っていた。それまで皆心と道具の準備をしておけ!以上」


 複雑な心情の兵士達は、それを一切表に出さず敬礼した。


 兵舎での集会の後、ニケラもアイトラから暇をもらい兵舎に居た。遠征で使うものを確認していた。


(装備、修理してもらうか)


 その時、扉をノックする音がした。


「おーい、ニケ、いるか?」

「ソルか、何か用か?」

「いやなに、死人の顔見に来たんだよ。お前顔が強張ってるぞ、大丈夫か?」

「俺は死んでないし、死ぬ気もねぇよ」

「そうですよ、私たち三人死ぬ気は無いですよ」


 不意に現れたメイド服の女性。茶髪のお団子がふわふわしている。


「リン」

「今回は支援部隊から蘇生魔法を使える人を何名か連れて行くと、アイトラ様は言っていました」

「そうか、じゃあちょっとヘマしても大丈夫だな」

「というか、何でリンも居るんだ?」

「私も、アイトラ様に休むように言われています」


 リンはそう言って、どこから取り出したのか、湯呑みを持ってお茶を飲み始めた。


「いやいやいや!普通に寛ぐなよ!これから武具を修理に出そうと思ってたのに」

「修理なら俺も行くぜ。丁度太刀を改良しようと思ってたからよ」

「私も付いていきます。久し振りに観光してみたいですし」

「……ったく、早く準備しろよ」


 ニケラ達は城下町へ繰り出した。

 武具の修理を依頼するために、大通りに店を構える武具屋兼鍛冶屋『ガンドン』へ来ていた。店の前では作業着を着た少年が木箱を運んでいる。


「よぉ〜す、ピートン、ひっさしぶり!」

「ソル君、久し振り。みんなも!」

「やあ」

「お久し振りです」

「みんな、今日はどうしたの?」

「装備を修理しようと思ってな。親父さんいるか?」

「うん、いるよ。呼んでくるね!」


 ピートンは木箱を置くと、店の中へと入っていった。それに続いてニケラ達も店に入った。

 店内は武器や防具が種類別に綺麗に陳列されていた。奥からピートンが父親を連れて来る。作業用の革のエプロンに腰巻、手袋を付けている。


「どうも、お久しぶりです。トンドラさん」

「おう、ニケに、ソル、リンも一緒か、で修理だったよな。見してみろ」


 三人はそれぞれ装備をテーブルに置くと、トンドラはそれを一つずつ見ていく。


「ニケは剣と、装備一式か。どれどれ、剣は微妙に脆くなってるな。魔法を纏わせるとなると、心許ないな。盾と鎧はまだまだ大丈夫だから、剣だけ、修理しておくぞ。ソルは太刀か、うーん、あと二、三回斬ったら折れるぞこの太刀。打ち直ししたほうがいいな。リンのは防具だな、小手と靴を直しておく。明日の昼にまた来てくれ」


 トンドラは修理する装備を持って店の奥へ入った。


「じゃ、そろそろ行くか」

「えっ、もう行くの?」


 戻ってきたピートンが残念そうにつぶやく。


「悪いなピートン、また明日な」


 そう言ってピートンの頭を撫でるソル。手を離すと、ピートンは撫でられた所を触り、


「うん、また明日」


 とにこりと笑って手を振った。


「ほんと、ソルは子供に好かれるな」

「お前は怖がられるのがオチだもんな」

「うっせーよ」

「あの、これから私は別行動します。行きたいところがあるので」

「そうか、わかった。じゃ、また」


 リンは商店街の方へ歩いて行った。



 ニケラとソルが路地を通ると教会が見えた。庭で沢山の子供が飛んだり跳ねたり走り回って、修道女を困らせていた。

 その中の一人がこちらに気付いて声をあげた。


「あー!ソルだ!ソル兄がきた!」

「おう、お前ら元気にしてたか?」


 ソルは、笑顔で近づいて来た少年を抱え、天高く放り投げる。少年は落下し、再びソルの腕へ収まった。


「おもしろーい!もっかいやって!」


 少年は更ににっこりと笑い、もう一回とせがむ。だがそれを見ていた他の子供達が一斉に集まりソルのまわりを囲み、わいわい騒ぐ。


「よーしわかった、じゃ、お前ら一列に並べ!」


 キャッキャとしながらも、行儀よく並ぶ子供達。それらと戯れながら、ソルとニケラは教会へ入って行った。

 法衣と呼ばれるフード付きの白いローブを着た女性が出迎えた。


「お帰り。ソルグネジニ」

「ただいま。ノーラ」

「お久しぶりです、シスター・ノーラ」

「お久しぶりでございます。ニケラ・ファダル」

「じゃ、俺コイツらと遊んでくるから!」


 挨拶を済ますと、ソルはニケラを置いて子供達と庭に出て行った。それを見送るとノーラは頬を緩めた。


「なぜかソルグネジニにはみんな懐くんですよ」

「あいつが子供だからですよ」

「最近よくあなた達の名前をよく耳にします。なんでも、ニケラ・ファダルはその魔法の才を賢者様に見初められたとか、ソルグネジニはその豪快で繊細な太刀捌きで次期隊長候補だとか」

「いやいや、照れますね」

「昔から二人はよく一緒に遊んでいましたね。それがこんなに立派になって。嬉しいです」


 ノーラは心底嬉しそうに微笑んだ。その後自らの近況などを話していると日が赤くなった。


「そうだ、そろそろ日も暮れますので夕食食べて行きませんか?」

「是非とも、あ、手伝いますよ」


 ニケラはノーラや、他の修道女達と夕食の準備を手伝った。途中で料理の匂いにつられてソルが子供達と共に教会に入ってきた。

 一緒に食事を摂ったあと、ニケラが魔法を教えることとなった。

 その後子供達に懐かれ、教会で子供達と眠ることになった。


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