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これが我らの部活日誌  作者: 無良独人
第2章-お嬢様の悩み-
12/13

勧誘

長い間ほったらかしていてすみません。事情を言えば、就活で書く暇がありませんでした。

でも今日からまた書き始めます。更新頻度もできる範囲で戻していこうと思うので、気長に見てやってください。

和佳奈の『丁寧に勧誘を断ろう大作戦』の打ち合わせを終えてから、あっという間に実行の時間が訪れる。

先ほど作戦会議をした個室部屋で、彩女は和佳奈を待っていた。

(ここに来る途中、北條さんまたクラスの人たちに囲まれてたなぁ……。)

同じクラスになったはいいが、彩女はいまいち和佳奈との距離感に困っていた。

向こうは転校生であり、また美人、注目度はクラス内はおろか学校中にまですでに知れわたっていた。

あっという間に大人気になった和佳奈に対して、彩女はまだクラス内でも目立つ方ではない。それどころか、クラスメートに認知されてない可能性もある。彩女は少し肩を落とした。

そんな人間と、注目の的である北條和佳奈が二人でいたらどう思うだろうか。

きっと注目の的に晒されてしまうだろう。

それだけは避けたい……。

しかし、偶然知ってしまった人気者の裏。

周りから人気の高いお嬢様は、実はとんでもなくガサツで、丁寧に飾っていた口調も、普段のそれとは程遠い毒舌であった。

ああ、この事実を知ったこの学園の人々はどうなってしまうのだろうか……、まぁきっと、そんなことはないはずだと思っているだろう。

今は、起こってしまった現実を見よう、彩女は頭で考えるのをやめた。

「あんた何唸ってんのよ、さすがにキモいわよ。」

「うわぁぁぁ‼︎ってどこから来てるんですか‼︎」

「どこって、隣の壁をよじ登って」

「みればわかります‼︎どうしてそんなとこから入ってくるんですか‼︎」

強く詰め寄ってくる彩女に、和佳奈はそっぽを向きながら答えた。

「しょうがないじゃない。あんたが個室の部屋の鍵を閉めてるから私が入れなかったのよ。」

「え?あ……。」

見ると、確かに内側からの鍵をかけており、外側から入れないようになっていた。

いつも一人でいるときの癖だったのだろう。

「正面から入れなかったから、そりゃ側面を登るに決まってるじゃない。」

「すみませんでした……。」

登ってきた壁を降り、彩女のは入っている個室に和佳奈が入ってくる。

「まぁいいわ。それよりも用意はできた?」

「私……そんなに他の人と話すタイプじゃないので、失敗するかもしれないですよ?本当に私でいいんですか?」

「知らないわ。」

「ええっ⁉︎」

予想外の回答に、彩女は思わず驚いてしまった。

「あんた一人に任せるつもりはないもの、たどたどしくなったら、私が直々に断りを伝えるわ。」

「……だったら最初から自分で言えばいいのに。」

「な・に・か・い・っ・た・か・し・ら?」

「なんでもないですよ……行きましょう。」

「あと、その丁寧語もやめて。」

「え?」

「いいから。」

「はぁ……。わかったよ。」

(ああ先輩……私を助けてください。)

彩女はここにいない幸太に助けを求めるのであった。



「ところで、どの部活から勧誘が届いてるの?」

「多すぎて覚えてないわ。」

「え?もしかしてこれから私たち……しらみつぶしに部活を回らないといけないんじゃ……。」

「どうしてそんなことを聞くのよ?」

「そっか……北條さん知らないんだったね……。この学園ね、百近く部活があるんだよ。」

「……もう無視しようかしら。ってダメダメ。私のイメージは何としても保っておかないと。」

「めんどくさいプライド……。」



百近くもの部活を回って断る、この途方もない事実を前にして疲れをあらわにした彩女だが、思いの外悩みは簡単に解決した。

あのあと個室を出て、和佳奈が外に出ると、あっという間に人だかりができたのである。部活の時間内だったため、それは当然勧誘目的である。つまり、この輪の中にいる人たちは全員和佳奈を勧誘したい人達と考え、この場で断ることができれば、一気に回らなければならない部活が減るだろうと、彩女は考えた。

(っていうかこれ、百以上人がいないかしら‼︎)

さすが一日にして学校中の注目の的になった人間だ、と改めて彩女は感服と同時にうんざりした。

「北條さん‼︎ぜひバトミントン部に‼︎」

「い〜や、北條さんは華があるからサッカー部のマネージャーがお似合いだって‼︎」

「いや、科学部に来てください‼︎」

「主らはわかっとらん、是非ともシャトルランクラブに。」

(う〜わすごい人気……ってかシャトルランクラブって何⁉︎)

彩女は心の中でツッコミを入れた。

「みなさん、お誘いありがとうございます。でも……ごめんなさい。私、すでに入る部活動は決まっていますの。」

『えぇぇぇぇぇぇ‼︎』

(えぇぇぇぇぇぇ‼︎)

新事実を何気もなく暴露した和佳奈。囲んでいた生徒たちのまとまった声が、学校中で響く。

彩女自身も、入る部活が決まっているということを聞いてはいなかったので、思わず同じタイミングで心の中で叫んでしまっていた。また、勝手に自分から断り出したことも、驚きの一部だった。

「そんな‼︎どこに入る気ですか北條さん‼︎」

話の中にいる一人が和佳奈に聞き出そうとした。

しかし、その質問に、和佳奈は笑って返した。

「それはまだ言うことができません。ですが、皆さんがすごく熱心に私を誘っていただいたことには、すごく感謝しています。一緒の部活動ではありませんが、これからも仲良くしていただけると、とても嬉しいです。」

深々と頭を下げたあと、とても穏やかな口調と微笑みで返した。

「い、いえ‼︎こっちこそすみませんでした‼︎」

和佳奈を取り囲む者たちは、しばらく固まっていた、美しいものを見て、動くことができなかったのである。

しかし、彩女だけは笑顔の和佳奈のことを半目で見ていた。

(ものすごく作ってる……。)

裏の顔を知っているだけに、ここまで性格を偽造できるものかと、ある意味感心をせざるをえない。

(本当の本性を知ったら、ここにいる全員たまげるんだろうなぁ。)

「何か失礼なことを考えてはいませんこと?」

「うぎゃっ‼︎」

突如足元に来る衝撃に、思わず現実に引き戻される。

そこには、集団との一悶着を終えて、彩女のところに戻ってきた和佳奈が、「私に何か言いたそうね。」とも言いたそうな表情で、こちらを見ていた。

「北條さん、足痛い。」

「ごめんなさい、失礼なことを考えてる顔だったから、踏んじゃったわ。」

「そんなことは……「あるでしょ?」すみません。」

「反省すればいいのよ。」

和佳奈は踏んでいた足をどかした。


「ねぇ、これでもまだ足りないの?」

和佳奈が尋ねる。

「う〜ん、でもきっと半分以上は断ることができたと思うよ、運動部系はほとんどこれで断ったとみてもいいかな。」

「そうね、外で活動しているのは運動部がほとんどだものね。」

「だとしたら、あとは文化部の方かな。」

「まぁ、それはいらないんじゃない?」

「え?どうして?」

「さっき、私はもう入る部活は決まってるって言ったんだもの。この話が広まれば、私の入りたい部活が決まってるって思って、向こうも勧誘をしてこないと思うわ。」

「確かに、でも実際に入る部活は決まってるの?」

すると和佳奈は、少し彩女から視線を逸らした。

「よ……良かったら、あんたのいる部活を、教えて欲しい……。」

和佳奈は少し顔を赤くしながら言ったのであった。




「んで……これはどういうことだ?」

「私の所属する部活が見たいっていうので……。」

彩女は和佳奈と一緒に写真部の部屋に訪れていた。

和佳奈は興味深げに飾られている写真を見ながら、部屋中を観察している。

そんな様子を見ながら、彩女と幸太はひそひそと話していた。

「あの娘は写真部に興味があるのか?」

「わかりません……。」

「すみません、この道具はなんですか?」

ひそひそ話をしている途中、あたりを物色していた和佳奈に呼び止められる。

「とにかく、こちらとしても入部してもらえるチャンスだ。部の存続のために、積極的に引き入れていこう。」

「わ、わかりました。」

二人は話をやめ、幸太が和佳奈の方へ向かった。

和佳奈の手には、望遠レンズが握られていた。

「ああ、それはカメラに取り付けるものだ。それを付けるだけで、写真の写る範囲が全然違うんだぞ。」

できるだけ人が良さそうな感じを出しながら、幸太は答えた。

「へぇ、そうなんですね。」

和佳奈も今は表モードで幸太と接していく。

その様子を、遠目から彩女が見ていた。

(誰か一人でも知らない人がいると、猫被りたいんだね……。)

幸太も、和佳奈の裏モードは知りえない、彩女だけ知っている彼女の本性なだけに、幸太にそのことを伝えるべきか、そうしないべきかは、悩みどころであった。

「まぁこんな感じで、レンズを付け替えるだけで撮れるものも違ってくる、これが写真のいいところだよ。」

「へぇ、そうなんですね。知りませんでした。」

和佳奈は穏やかな笑顔で答えた。

手の中には、写真部で保管されている予備の一眼レフを触らせてもらっている。

「実際にカメラを持ってみるのは初めて?」

「はい、意外と思いのですね。」

「精密機械だからね。あ、取り扱いだけ気をつけて。」

「へぇ〜、こんな風になってるんだ。」

カメラに搭載されているボタンを押してはレンズを見るという行動を、和佳奈は繰り返す。

まるで新しいおもちゃを与えられた子供のようだった。

その様子を見て、彩女は和佳奈に歩み寄った。

「北條さん、良かったら体験入部しない?」

「えっ?」

「なんかカメラを興味深げに見てたから、やってみたいのかなって。体験として入ってみない?」

和佳奈は少し驚いた表情を浮かべた。

その誘いを勧めるように、幸太も追って勧誘する。

「そうだな、体験の間、そのカメラは貸してあげる。好きに使っていいから、体験だけでもしてみる気はないか?」

「……」

和佳奈は下を向いて、どうするか迷い始めた。

「でも私……家が厳しくて……もしかしたら参加できない日が多いかもしれません。」

ぽつりぽつりと言葉が漏れていく、和佳奈は先ほどの無邪気な表情とは打って変わって、複雑な表情になっていた。

「関係ない。」

しかし、それを幸太は遮った。

「君がやってみたいと思えば来ればいい。こっちから来いって制限はしないよ。仮だからね。もし君が面白くないと思ったなら、カメラを返しに来ればいい。」

幸太は神妙な顔をして続ける。

「けど、君の意思に関係なく、やりたいことができないのは間違ってる。いつでも待ってるから、楽しんでやってみて欲しい。」

幸太は訴えかけるように和佳奈に話した。

「……そうですね。」

和佳奈はその言葉に少しだけ笑みを浮かべる。

どうやら幸太の言葉が届いたようだった。





「ああ、緊張した……。」

「お疲れ様でした、先輩。」

和佳奈が帰った後、いつも通り幸太は彩女と部活動に励んでいた。

なお、和佳奈が興味深そうに持っていた一眼レフは、体験入部の間、好きに使っていいという条件で和佳奈に渡した。

「部員の確保のためとはいえ、勧誘っていうのは疲れるものなんだな。」

「それは先輩が普段から他人と話さないからなんじゃ……。」

「そんなことないぞ、俺だってしゃべる。」

「わかってますよ、そのせいで何回も知らないところで事件に巻き込まれてるじゃないですか。」

「うっ」

「毎度毎度心配かけて……」

彩女から次第に黒いオーラーが出始める。

流石の幸太も、それには気付いたようだ。

「わ、わかった‼︎もっと気をつけるから、許してくれ‼︎」

しばらくの間、幸太は彩女をなだめるのに苦労したのだった。


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