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真昼の襲撃

 アデルの手に小銃が戻る頃には、アデルはすっかり、店主の名前や友人の数さえ聞き出してしまっていた。

「そんでピエトロじいさん、さっきチラっと聞いた話になるんだが」

「うん?」

「アンタの友人の息子さん、名前を何と言ったっけ? 確か……、ジョルジオ? だっけ」

「ああ。ジョルジオのぽっちゃり坊やのことか。そいつがどうした?」

「俺の知り合いの知り合いにも似た名前がいるからさ、ちっと気になったんだ」

「ほう?」

 一瞬、店主の目が注意深そうに、ギラリと光る。

 しかしアデルは警戒する様子を出さず、呑気そうにこう返した。

「でも全然違うな、俺の知ってるジョルジオはガリガリのおっさんだった。

 まあいいや、こんなだだっ広い西部で偶然知り合いの知り合いの、そのまた知り合いに出くわすなんて、よっぽどのラッキー野郎ってことだな。そして残念ながら、俺はそこまでじゃない。いや、変なこと聞いて悪かったな、じいさん。

 ありがとよ、ピエトロじいさん。また何かあったら頼むわ」

「……ああ。またな、Mr.ネイサン」

 アデルとエミルはそのまま店主に背を向け、すたすたと店を出て行った。


 イタリア人街から20ヤードほど離れたところで、アデルが口を開く。

「で、エミル」

「ええ。みたいね」

 短く言葉を交わし、ふたたびそのまま歩き出す。

「じゃ、どうすっか?」

「撃たれたくないでしょ?」

「そりゃそうだ」

 次の瞬間、二人は走り出した。

 その一瞬後に銃声が響き、二人がいた地面が爆ぜる。

「いきなりかよ、まったく!」

「あんたの見立て通りね。『疑わしきは罰せよ』ってところかしら」

 二人が走る間にも、二度、三度と地面に土煙が立つ――どこかから銃撃されているのだ。

「どこからか分かるか?」

「はっきりとは分からないわね。でも真ん前や真後ろってことは無いでしょうね」

「ああ。その方角からなら、延長線上を狙えば嫌でも当たるからな」

 5発目の銃弾を避け、二人は路地裏に滑り込む。

「はぁ、はぁ……」

 路地裏から恐る恐る表通りを確かめ、アデルはため息をつく。

「これだけゴチャゴチャした通りだ。どこから撃ってきたかなんて、見当が付けられん」

「そうね。でも相手も見失ったみたいよ。撃ってこないし」

「ああ、恐らくはな。……で、この後は?」

「このまま町を出るしか無いわね。店を出てすぐ銃撃されたんだもの、敵の連携は相当よ。下手すると宿も突き止められてるわ」

「だな」

 二人は路地裏を抜け、そのまま駅まで歩くことにした。


 だが――。

「……参ったね、どうも」

「ええ、本当」

 二人の行く手を阻むように、男が3人、銃を手に近付いてきた。

「お前ら、何者だ?」

 一人が撃鉄を起こし、アデルに照準を定める。

「何者って、何がだよ?」

 アデルは銃を構えず、尋ね返す。

「ジョルジオ・リゴーニ氏のことを尋ねてきた奴が、ただの賞金稼ぎとは思えねえ」

「ジョルジオ? ピエトロのじいさんが言ってた、ぽっちゃり坊っちゃんって奴のことか? 聞いてないのか、人違いだって」

「イタリア読みじゃ分からねーようだな」

 さらにもう一人、撃鉄を起こす。

「アメリカ読みだと、ジョージ・リゴーニだ。こっちなら知ってるだろう、探偵さんよ?」

「彼のことを嗅ぎ回られちゃ、俺たちとしちゃ迷惑極まりないもんでな」

 3人目も撃鉄を起こし、揃ってアデルに向ける。

「正直に言え。ウソを言ったら、この国らしく蜂の巣にしてやるぞ」

「そうだ。頭に3発、胸に2発。それを掛ける3だ」

「さあ、言え。いや、言わなくてもいいがな」

 そして次の瞬間、パン、と銃声が轟いた。

 しかし――倒れたのはアデルでもエミルでもなく、3人並んだうちの、真ん中にいた男だった。

「なっ……!?」

「お、おい、ドメニコ、……ぐあ!?」

 続いて、右側の男も肩を押さえてうずくまる。

「さっきからあたしを無視してくれてるけど、これでようやく気付いてくれたかしら?」

 銃口から硝煙をくゆらせつつ、エミルが声をかける。

「どうする? 素直に降参する? それともあんたも右肩に半インチのピアス穴、開けて欲しいの?」

「う……ぐ」

 残った一人はボタボタと汗を流していたが、やがて拳銃を地面に捨て、両手を挙げて降参した。

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