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西部の移民街

 アデルはいつもの如く相棒にエミルを伴い、西部の町、ヒエロテレノに向かった。

「ここはいわゆる『移民街』で、イタリア系の移民もかなり多いんだ。西部でイタリア移民のリゴーニが根城にするようなところってなると、十中八九この辺りだ。

 ちなみに一番多い移民はヒスパニック系らしい。町の名前もスペイン語で、英語だと鉄のナントカって言うそうだ」

「へぇ」

 エミルは辺りを見回し、アデルにこう返す。

「確かに白い肌じゃない人もチラホラ見えるわね。メキシコ辺りから来ましたって感じ」

「ああ。それだけに、治安も良くは無い。うわさじゃ荒くれ共のアジトやら、お尋ね者の隠れ家がわんさかあるとかないとか」

「じゃあもしかしたらリゴーニのアジトもあるかも、って?」

「そう言うことだ。

 幸い今回も、局長を通じて連邦特務捜査局の協力を得られることになってる。アジトを見つけりゃ捜査局の人員を借りて強襲・制圧し、摘発できるだろう。

 万一リゴーニを取り逃がしたとしても――あのボンクラ共じゃ、マジでやりかねないけどな――現場さえ抑えてしまえば、任務は達成できるってわけだ。

 だが一方で、懸念もある。レスリーが『ほとんど何もしないうちに』、用心棒らしき何者かに殺されたことだ。レスリーはまだ、調査を始めたばっかりだったんだ。取引場所の一つも突き止めなてない状況だったのにもかかわらず、だ」

「と言うことは、レスリーが動くより前に、その用心棒がレスリーの存在に気付き……」

「ああ。先んじて始末したってことになる。相当に勘がいいか、頭の切れる奴だと見ておいた方がいいだろうな。

 もしかしたらもう既に、俺たちはその用心棒に目を付けられてるかも知れない。用心しろよ、エミル」

「言われなくても」

 エミルは肩をすくめ、すたすたと歩き出した。

「まずは今夜の宿を探すのと、腹ごしらえにしない? 腹ペコで、おまけにヘトヘトだってのに無駄に気を張ってても、ろくな働きはできないわよ」

「……同感だ。飯にすっか」

 アデルも同じように肩をすくめて返し、エミルの後に続いた。


 宿と食事のために向かったサルーンの雰囲気も、どことなく中南米を匂わせていた。

「これ、何て読むんだ? フリ……ジョレス?」

「フレホーレス。いんげん豆よ。ソパって書いてあるから、豆のスープみたいね」

「エミル、もしかしてスペイン語分かんのか?」

「簡単なものならね。伊達に放浪してないわよ」

「さっすが」

 料理を持ってきてくれたマスターも、スペイン語訛りが強い。

「お待たせしました。豆のスープとタコス、揚げトルティーヤのサルサ煮です」

「うへぇ、辛そう。……くわ、やっぱ辛ぇ」

 一口食べた途端、額に汗をにじませたアデルに対し、エミルは平然と、ぱくぱく口に運んでいく。

「そう? 美味しいわよ。あんた、もしかして辛いの苦手なの?」

「いや、そんなことは、……無いと思ってたんだが、……ひー、舌がしびれてきたぜ」

 食べ始めてから5分もしないうちに、アデルの顔が真っ赤になる。

 料理が辛い以上に、口直しのために、アルコール度数の高いテキーラを早いペースでがぶがぶ飲んでいるからだ。

「大丈夫? 顔、真っ赤よ? トマトみたいになってる」

「らいりょうぶらぁ……。これくらひ、なんれこひょ……」

「どこがよ。あんたの悪い癖ね。傍目から見ても全然大丈夫じゃないって誰でも分かるのに、強がっちゃって。

 マスター、部屋借りていいかしら? こいつそろそろブッ倒れるから、放り込んでおきたいの」

「かしこまりました。1部屋で?」

「2部屋よ。こいつと別にしといて」

 エミルがマスターと話している間に――エミルの予想通り、アデルはテーブルに突っ伏し、いびきを立てて眠り込んでしまった。

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