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電人的日常論  作者: Hru
:現実世界:
9/11

恒例行事とか言われてもね・・・。

夏休みは終わり、学校は再開する。


この夏休みは、特に大きな動きをしたものの充実したとは言い切れないものだった。 当たり前っちゃ当たり前なのだが。


さて、この時期、やってくるのが学生のお約束イベント修学旅行。

大学生だぞ? なんでだろうなんてぼやいていても仕方がない。



1週間、6泊7日の道内旅行は、そこそこキツメのスケジュール。


1日目、札幌駅集合後、帯広まで行き何かしら観光等した後そこで宿泊。

2日目、午前中少し観光後釧路へ行き、観光、宿泊。

3日目、午前中少し観光後根室へ行き、観光、宿泊。 

4日目、午前中少し観光後知床へ行き、観光、宿泊。

5日目、午前中少し観光後稚内へ行き、宿泊。 観光してる暇はない。

6日目、午前中観光後、旭川へ行き、観光、宿泊。

7日目、午前中観光後、札幌へ戻る。


1日おきに各地を転々とする。 函館の方行きたかったです。


始業式の翌日から、全学年出発する。

俺たちは電車、2年は新幹線、3年、4年は飛行機。 格差。



で、本日はその修学旅行当日。 さっそくピンチ。お約束。 遅刻だ。

出発予定時刻を1時間過ぎている。 というのも、昨日は優華が本来お前のもんじゃないのに修学旅行だとうるさかったせいだ。 寝ない分夜通し騒いでいた。 

構ってほしいのかイアホン付けてもすぐに外され、スマホを密閉すればパソコンに乗り移り、ネット回線切っても「なんかよくわからないけど一度入ったことある物であればネット繋がって無くたって自由に行き来できるようになった」とか言ってパソコンに乗り移り騒ぐ。 

そのせいで寝付けず、オールしようかも考えたが、中途半端なところで寝てしまい、今に至る。

盛大な言い訳ではあるが、とりあえず優華のせいなのは間違いない。


一応晴馬に連絡しようと思ったが同クラスの五十嵐に一応連絡した。


『もう出発した? それなら後で追いつきますって先生に言っといて』


と送った。 すると、


『うん。 出発したよ。 了解。』


と返信が返ってきた。



「さて、とりあえず次帯広行便がどれかだよ。 1時間ってことは今ちょうど行ったかもしれない。」


そういって運行ダイヤを調べると、15分後帯広行があった。 空席もあるので、夏休み中に準備した自分を信じてバッグの中身を確認せず飛び出た。 一応昨日も確認したから大丈夫だろうが。

フラグではない。 はず。


そこそこ遠めかそうでもないかはわからない距離の最寄り駅に乗り込み、札幌駅へ向かう。

この駅は通らないそうなので。


札幌駅に着くと、すぐさまチケットを購入。 出発5分前のアナウンスが流れる。 そろそろ電車も到着するころだろう。


改札を通りバッグを引き釣りながら走り、無事電車に乗り込めた。



「セーフ・・・  なんだこのお約束行事」


ボソッと呟く。


「あのー・・・ 此代さんですか?」


唐突にかけられた声に驚き、その声の主を見る。 なんだこのお約束。


「はい、そうですが、あなたは?」


「同じ大学の高良栄介(こうらえいすけ)です。」


こいつの名前くらいは聞いたことがある。 相当な頭の持ち主だそうで、ついでに晴馬と同じく剣道のサークルにいる。 文武両道ってやつ。 うわ、リア充の典型じゃね? なんて思いながら、話を聞く。


「此代さんも遅刻で?」


「はい。 恥ずかしながら。」


さすがにこいつも遅刻のようだ。 逆にそうでなかったら何だろうかとも言いたいが、初対面の人にそれはやめておこうと思い、その言葉を飲み込んだ。


「ところで、なんで俺のこと?」


「あ、そうですよね。 晋川君と一緒にいるの見かけて、晋川君から少し話を聞いて。」


「そうなんですか。」


なんだろう。 こいつからはやばい雰囲気を感じるぞ。


と、その時高良が手を出してきた。


「よろしく。」


笑顔でそう言ってきたのに対し、俺も応答する。


「こちらこそ。」


握手をしたが、その握る手はなんだか強かった。 気のせいなのかと思いつつ、何か先ほど感じた雰囲気が鮮明になりそうだ。


「此代さんは、晋川君とは長い付き合い?」


「ええ。中学の時から一緒で。」


取り敢えず今思ったことは大概初対面敬語で始まったら相当仲良くならないとずっと敬語のままだろうななってことだ。


「高良さんは、晴馬と同じサークルですよね。 あいつ強いんですか?」


「うん。 僕も結構強いかななんて思ってたけど大学から始めたっていう晋川君にもう追いつかれそうで。」


若干の苦笑いをしながらそう答える。 


「晋川君は練習熱心で飲み込みも早いんだ。」


「そうなんですか。」


高良は、少しニヤッとしたような笑みを浮かべた。


あー、俺は分かったぞ。こいつは、晴馬のことが好きだわ。 男が好きなのか晴馬だけが好きなのかはわからないが、ほぼ確実にそうだ。


どうせ晴馬と一緒にいたのを見てうらやましいか憎らしい感情を持って若干問い詰める感じで晴馬に聞いたんだろう。


そして、こいつはたぶん勝手に俺のことをライバル視している。 先ほどの笑みが何よりの証拠だろうか。


しかし、察してしまうとその後の付き合い・・・ あるかはわからないが辛くなりそうだな。 特に3人揃ったとき。確実にこいつは何か吹っ掛けてくる。


「此代さん?」


長い間考察していた俺に高良が話しかけた。 さすがにもう俺がその答えにたどり着いたとは思わないだろうが。


「あ、ごめん、何でもないよ。」


「そう。 あ、夏休み前のテストでさ・・・」



帯広に到着するまで高良と話していた。 90%は晴馬の話題だったけど。


「着いた。」


「そうだね。 この後は予定では20分後くらいにホテル行くみたいだけど。」


「そうだな、ホテル行くか。」


そう言ったものの道がわからないので、駅員に聞いて、バスで行くことにした。 バスに乗ってる間、五十嵐にホテルに向かうと連絡した。


バス内では電車の時よりは無言が目立つ状況だった。



「ここか。」


「意外と大きいね。」


時間的にはもうそろそろクラスのみんなが着く頃だろうと思い、ホテルの玄関前で待っていた。


数分後、数台の、俺らのいる大学名が書かれたバスがやってきた。


それぞれのクラスに合流しようということで高良とは別れた。



「先生、すいません、寝坊しました。」


「おう。 五十嵐から話は聞いた。 夏休み気分でいるなよ。 明日も寝坊したらまた置いてくからな。」


「すいません。」


謝って、クラスのみんなと合流した。 五十嵐にもお礼を伝えて。


クラス内に特に仲がいいやつはいないので、追及されることはなかった。


ホテルの部屋に入り、少しすると晴馬がやってきた。


「おいー、遅刻したんだって? また優華さん絡み?」


「んー、まあそんなとこ。」


晴馬に詳しいことは話していないが、夏休み中優華のことについていろいろ調べているという話はしていたので、それに関する理由だろうと思ったらしい。

ある意味そうだけどさ。


その後は、普通に飯食って風呂入って寝た。 何事もなく。 このまま何もなく終わればいいなーなんてフラグを立てながら。


と、寝付きかけた時ふと思った。 今日は優華を一度も見ていない。


そう思い、寝ている部屋の人を横目にスマホをつけた。


そこにはぐったり倒れこんでいる優華。


「!?  おい、優華!」


ほかの人もいるので、小声で呼びかけた。


「優華! おい!」



〈・・・ ゆ・・・ぅやぁー・・・〉


「おい!生きてるのか!?」


〈ん・・・ ふぁあ・・・」


「()」


盛大な大あくびをした優華。


「お前・・・?」


〈あー、おはよー・・・ 寝てた。〉


「なんで寝てるんだよ。 てかどうして今になって寝るんだよ」


〈んー・・・ 多分、昨日はしゃぎすぎたせいだ・・・〉


「そうじゃねえ、なぜ今になって眠気が襲ってきたんだよ」


〈んー、多分この体だと眠気が凄く襲わなくなるんだと思う・・・ ないわけじゃないんだよ~・・・・・・〉


「あ、そう。」


肩透かしを食らった気分。 電源を消して寝た。



翌朝---


アラームが鳴り響く。


いち早く目が覚めた俺はそのアラーム源を奪い、止めた。


ぞろぞろと部屋の奴らが起きてくる。


「うるさい」


〈朝だよ!雄哉!〉


「っ・・・」


電源を即座に消した。 こいつはTPOというのを知らないようだ。



荷物をまとめてホテルを出た。


やっと観光ができる。 しなくてもいいんだけど。

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