自己満足
あらすじ:彼女の感じた赤子の気持ちとは。
「っとその前に、今の言葉通じるの?」
「心配なさらずとも、今までいろいろな方と生涯を話してきましたので知らない言葉の方が少ないでしょう。」
「あっそ、じゃあ話に入るわね」
そう言って彼女は目を閉じた。
私は、至って健康な母体から産まれた。空気や栄養の供給は安定していてとても気を使っていたのだと思う。母の中はとても心地よかった。まるでハンギングチェアの中で心地よい温もりのある毛布に包まれているようだった。快適で一生をそこで終えたいくらいに。だけどそういうわけにはいかなかった。
時間が経つにつれ私は大きくなり窮屈になってしまった。でもまだ広がる。まだ大丈夫。そう思ってたのに……
ある日そこから動かされた。なにかに潰されるような感覚だった。なんとか勝手に滑って回避しているだけだった。頭に何かが当たる。だんだん広がっていくがとても窮屈で挟まれた時は死ぬかと思った。
この時、初めて黒以外を知った。まだ開いたことのないまぶた越しに光が入る。それが自立の合図だった。窮屈なものを抜けきると、母とのつながりを断ち切られた。とても辛くて辛くて何よりも苦しい。死ぬ……そう考えたら怖くて、さっきから痛くて、今は苦しくて。そう考えたら、私は辛さを叫ぶ声をあげていた。なのに彼女らは感嘆の声や喜びの声をあげている。
なんであなたたちはあそこから私を出したの?なんで苦しいのに喜ぶの?なんで、私を殺そうとしたの?
この、人でなし。
「この時こう思ったわ、産まれるとは痛みと共存することなんだって、産むとは自分勝手な都合で生まれてくる子供を痛めつけることなんだってね。」
まだ産まれたばかりなので自己紹介はまだまだ続きます。