1
誰かが言っていた気がする。
「触らぬ神に祟りなし 」と。
本当にそうだと思う。何故こんなことになったのか今でも分からないしこれからも分かることはないだろうな……。
今更ながら懺悔することになるとは昨日の僕は考えもしなかっただろう。
正午過ぎ僕は拉致られている、夜中に遊びにいくもんじゃないと痛感するが手遅れ。
コンビニに買い出しの帰りに近くの堤防から銃声が聞こえたので見に行ってみたのだがまさか本当に人が死んでいるとは誰が思うだろう。
ただし、ここで死んでいたのは拳銃を持っていた方であり、対するもう片方は無傷で誰かと電話をしていた。
少し距離があり何を言ってるか分からないが
細身で高身長なのが月明かりで分かった。
このままおとなしく家に逃げ帰ればよかったものの、好奇心とはつくづく恐ろしいものである。何を思ったのかそのまま近付いてみることにしたのだ。
「ぁぁ……ぉぅ」
微かに聞こえるのだが何せ川の側で聞き取りにくい。
途端、影がこちらを向いた。
「誰か…いるな…」
どうやらバレたみたいだ、それにしても何故気付かれたのか…?
「あっ……」
声に出してしまった。ズボンに入れてた携帯の赤外線がうっすら光っている。
獣かてめぇは、なんて視力をしてんだよ。
「てめぇ、みたのか?」
名前を聞かないあたり見たと答えれば殺されかねない、ここはみてないと答えるべきだ。
「まあ、いい。いずれにしても死体は見ただろう。バラすか。」
……無駄な考察だったようだ、結局殺されるのかよ……
明るくなってきた。もう4時くらいかな?
なんて現実逃避してると相手がナイフを持っているのが見えた。これピンチだな(笑)
相手はどうやら女性のようだ
とりあえず……逃げるか!!
後ろを振り向いて走り出した と思った。
体は宙を舞っていた、投げられたらしい。
地面に叩きつけられると肺が潰れそうになった。
途端頭上から蹴りがとんできたので無様に転がって避け、体勢を立て直す。
と同時にナイフで刺しに来たので反射的に腕で防ぐ、否、防いでしまった。当然激痛が走る。
「いっ!っぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
まさか自分からこんな声が出るとは思わなかった、そんな場合ではないが。
血が溢れ出てくる、もしかしたら骨に届いたかもしれない。
瞬間また体は宙にいた。
どうやら足払いされ、倒されたらしい。
一瞬明るい空が見えた後地面にぶつかる。
上から影が覆い被さり、体の自由がなくなる。
無事な方の腕を踏まれ、骨が軋み感覚がなくなってくる。
結果として両腕を潰された状態だ。
「お前やるなぁ、私の前で30秒も耐えるなんてよぉ。さっきの男なんて10秒たたないうちに死にやがったぜ。」
どうやら誉められてるらしいが痛くて反応できない。
「じゃあな。」
ナイフが上から降り下ろされた。喉元に。
ここで僕は死ねばよかったと後悔することになるが今の僕はそんなこと知らない。
結果的に生き残った。
喉元に飛んできたナイフを口で噛んで止めたのである。
念のため言っておくが狙っていた訳じゃなくたまたま口に向かってきたからたまたま噛んでたまたま止められたのであって、僕がそのような対人能力を持っていたわけではない。
決してそうではないのだ。
「……お前ほんとにやるなぁ。」
また誉められた。
「よく止めたな、なかなか出来ることじゃないぜ。」
…この人自分を過大評価しすぎじゃないかのか?
「あー、うん。まあ、いいか。」
どいてくれた。
「お前なにもんだ?」
それは僕の台詞だ取らないでくれ。
「コンビニ帰りの高校生だよ、あんたは?」
「殺し屋A」
Bがいるのかよ……
「次にお前はBもいるのかよ…と言う!」
ワンテンポ遅いし思っちゃったよ俺
まだ言ってないしセーフか…
「Bもいるのかよ……」
言ってあげた優しいなオレ
「死神と呼ばれている」
漫画かよ、んなあほな
「勿論嘘だ。」
キャラすげぇなこの人
「CVは…」
「おいメタやめろ!」
「はっはは、殺す気が失せたぜ小僧。」
「なにしてたんですか?」
「なにしてた? ね、まあ暇潰しに。」
普通暇潰しに人を殺すか?普通じゃないのか
「お前、何か戦闘慣れしてないか?」
「小学生くらいの時によく喧嘩してましたね。」
「そうか…荒れてたのか…。」
小学生は荒れてると言わねーよ
「そろそろサツが来る頃だな。逃げるわ、また縁があれば会おう。このことは他言無用で頼むぜ!じゃあな。」
バイクにまたがる様はちょっとかっこよかったのは秘密にしておこう。
あ、ナイフ忘れていってる。かなり鋭いなこr…
「おい!お前何をしている!両手を挙げてこっちを向け!」
あっ、これやばいパターンじゃねーの?
どうやら警察が来たのだが死体の横に血塗られたナイフを持っていた僕が犯人に見えてるらしい。そりゃそうか(笑)
うーむ。どうしよう弁解でもしてみるか?
無駄だな。敵意丸出しだし多分聞かねぇ。
こういうときは…
逃げる!!
これでも現役高校生だ、足には自信がある。
全く面倒事に巻き込まれたものだ。
だがしかし、嫌いじゃないなこの感じ。
こうして僕は警察に追われることとなった。
こーゆー時にはなんて言うのだろうか…
感情表現は難しいもんだな。
なんて事を考えながら僕は朝日を背にして帰路につくのであった。