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東方魔弾録  作者: 終作
98/98

九十八弾 導

ここは一体何処だろうか。

暗い、暗い闇の中。

そこにあるのは意識だけか。

何も動かせそうにない。

そもそも、意識だけで動かすものがないのか。

残っている記憶を頼りに手や足を動かそうとする。

分からない。

感覚が消えているのか?

考えても分からない。

意識しても感じられないのか。


思考は定まらない。

ここは何処か、自分は何だったのか。

なぜこんな所にいるのだろうか。

何があったのか、他に誰かいないのか。

考えても「分からない」で過ぎ去っていく。

何を頼りにして情報を得ればいいのか。

情報がこんな所にあるのか。

感覚がなければ意識しても無駄になる。

ある情報さえも無駄になり、去っていく。


ああ、段々と嫌になってくる。

ただ何に嫌気をさしたかも分からない。

そもそも嫌気とは何だったか。

逆もあるはずだが、それは何だろうか。

まず、自分が今行っている事はなんだ?

返ってくるものは「分からない」の1つ。

分からない、ワカラナイ、わからない。

分カらなイ、ワからナい、わかラなイ。




ふと、何かが聞こえた気がした。

とても小さい、微かな振動で届けられる、音。

埋め尽くすような「分からない」を全て払い除け、思い出した耳の機能を出来る限り使い、その微かな振動を聴く。

とても小さく、ただ段々と近づいてくるその音を聴き続ける。

コツ、ザッ、ジャリ、カン、ギッ、キュッ、カタ、パタ、バタ、トッ、サク、ガリ、ザリ、ザク、コツ。

恐らく自分の頭であろう場所の前に来たであろう音は唐突に止む。

そして、頭を掴み、持ち上げる。

掴むために付いている箇所に頭を潰すかのような力が掛けられ、痛みを感じ取り続ける中で、それは言葉を発する。



ただ一言、『何故』と。


続かせるように、『何故だ』と。


繋げるように、『答えよ』と。



痛みによって再起動したであろう顔のパーツのうちの瞼を開かせるように力を込める。

込めた力を放つように、ただし痛みに耐えながらゆっくりと瞼を開く。

何かいる筈の目の前には、居る。

その怒りを全て放つように。

その怒りを1点に向けるように。

ただ、その怒りを、全て抱え込むように。

2つの目を、自分の目に向ける誰か。

顔の下には何故か鎧を着て、恐らく両刃の長剣を腰に2つ携え、頭を掴んでいない反対の手は固く握られている。

そんな、白髪黒目で白い髭を持った老人。


また、言葉を発する。



『何故動かぬ。』

『何故抵抗せぬ。』


『何故、抗わぬのか。』


と。



抗う、なんてことは無い筈だ。

そもそも、何に抗っている。

一体何を言っているんだろう、この老人は。

そう考えた時には、吹き飛ばされていた。

体の感覚が戻ってくる。

同時に、全身に文字に出来ない痛みが襲ってくる。

何度か地面を跳ねながら、そして壁に背中を打ち付けられ、止まる。

立ち上がる時には、老人が目の前に存在している。

両刃の長剣2本が両手に持たれ、交差させた状態で迫ってくる。

その刃が身体へと着実に、近づいてくる。

また、言葉を発する。





『どうせそれまで、か。』





漸く、頭の中で返す言葉が出来上がった。




活「うっせぇ、ちっと黙ってろジジィ!」




交差させた長剣の腹目掛けて両手で作り上げた拳を閃かせる。

当たったことが確認できたからそのまま拳を振り抜き、ジジィを腕クロス状態にさせる。

そうすりゃこのままこっちに寄るときについた勢いでダメージが増えるから、そのまま膝蹴りを顔面にブチかましてやる。


老「ブぎっ!?」


取り敢えず距離開けるために宙で上半身をひねって少しでも回転力を上げて、腰から順に下半身を身体の向きを戻すように同じようにひねりながら膝蹴りかました右脚を振り抜く!


老「っカァッ!」


するとな、ジジィがそれなりに吹っ飛ぶんだよ。

これで少しゃ止めてくれるといいんだがね。


老「………ふむ、戻ってきたわけか。」


活「あぁはぁ?分かんねぇな。ああ、まあ何か無駄な事考えてた気がするけどジジィの言葉で吹っ切れたよ。取り敢えずあざっす。」


老「さて、では、問おう。」


活「質問返しは駄目ですか?」


老「答えよ、ヌシにはそれしか認められん。」


活「あっ、そういう。了解だぜぃ。」


老「何故、動かぬ。」


どこでの話だろう。まあ、今ここでの状態じゃないのは間違いないな。いや、確かに何か忘れてる気はしなくはないが何だったかはわからないからまあ無難に答えるとする。俺の中での無難だけどな!


活「知らんがな。そもそも、また精神世界パターンだったら戻しゃいいだろ。」


老「…何故、抵抗せぬ?」


抵抗?敵とでも戦っていたのか?恐らくきっとどうせまだ忘れている何かには間違いないな。同じように返答しよう。


活「分からん。俺がなんか動けない理由でも出来たんじゃないのか。だから治して戻せばいいだろ。あいや、これは大分投げやりか。」


老「…何故、抗わぬ?」


活「方法が無くなったんじゃないのか?悲しいくらいに自分の記憶に空いたそれが気にはなるが、如何せん思い出せんのでな。」


老「では、行かぬのか。」


活「行くも行かないも…行かない?」



行かない、行かない…


行か、

な…

い………

で………!!


活「おい爺さん、忘れてた、綺麗サッパリ忘れてた、忘れてしまってたよオイ!行かなきゃなんねぇ、やっべぇなにバカやらかしてんだ俺!」


老「待て若造、わしの問いを忘れたか。」


活「あ!?あ、ああ…そうか、テキトーに答えてたけど無いんだったっけか…つまり、その問いだったのか………」


老「ならどうする。」


活「………分かんねぇな…………………」


老「分からぬのか。答えが返せない、と。」


活「…ああ、分からない、しか返せない、な………」


今になって何が起こっていたのか思い出した。そして、それが覆せない様な状況にも、自分の身がどうなっているのか、すらも。


老「…その心に怒りはあるか?」


活「………ああ、ある。が、な………」


老「どうしたというのだ。」


活「…悲しいんだよ、怒った所で何も出来ない、どうしようもない、この状況が、この状況になってしまった事が、そしてそんな中自分に怒る事しかできない惨めさが………」


老「………そうか………」


俺も爺さんも黙りこくった。無駄な時間が流れていく、俺の中にある悲しさを残して………


老「…その悲しみを無くしたいか、若造。」


活「出来るならな。ただ、そんな都合よく渡されるようには出来上がっちゃないないことはよく分かっているさ。前までの分はさっき還元されたばかりだしさ………」


結局色々あって楽しかった幻想郷での生活も、幻想となってそのまま消え失せるんだろう、と思った。そして、ただただ後悔だけが残り、悲しさをただ産み落としていく。

あぁ、あんまり下がるんじゃなかったな………


老「…認めうるは憤怒の祖、祖の継を今ここに。」


活「…おい爺さん、何言ってんだ?」


老「言った通りだ。本当の力を今ここへと、継に託さんとす。」


活「一体何が始まるんだってばよ…!?」


爺さんが言葉を言い終わった時、何か、今までの憤怒とは違ったものがはめ込まれた気がした。それも、今までが違ったピースだとでも言わんばかりに、馴染んで行く。その力の元は…何だ?


老「うむ、出来はしたようだな。後はその使い方だけだ。一度だ、憶えよ。いや、その力を探れば解るだろう、探るが良い。」


活「え、ここにきて雑じゃね?」


老「さあ行け、大罪の頂を、もう一度………」


活「…分かんねぇけど、これで変えれるなら、変えてやるさ。抗ってやるさ。俺がするこたぁ俺が決める、そして俺の意志を、爺さんの意志を伝えてやるさ。じゃあな、爺さん。」


老「ああ。」


そう話して後ろを向く。ただ1つの、俺の心から望む結末を手にするために。

この手で、掴んでやる為に。
















活「これが、お前の望むことか?終作。」


終「バレたね。ま、後する事は分かるね?」


活「ったりめぇよ。お前に言われなくても変えてやるさ。結末、をな。」


終「それでいい。また後で合流するから、ヨロシク!」


活「ああ。さて、最後の反撃だぜぇ、神さんよぉ!」

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