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water  作者: 葉月初
2/3

きっかけ

駄文です。

真っ暗な冷たい水の中を漂っていると眩しい光が私を包みこみ懐かしい光景が見えた。

2~3歳くらいの幼い女の子がプールで溺れている。いや違う、泳いでいる。

「かなた~こっちだよ~」

と子供に呼びかけているのは私の父さん。ならあそこで泳いでいるのは幼い頃の私だ。おぼろげな幼い頃の記憶とこの光景を照らし合わせると、これはおそらく初めて泳いだときだ。

「あぁ~い」

と舌足らずの返事を元気良くして幼い私がバチャバチャと水飛沫を上げて犬かきのような、溺れているようなクロールで一生懸命に泳いでいる。

足は膝から動かしているし、手も完全なパーになっていて、肘が

曲がりすぎてカマキリみたいだし全然なっていない。

でも、幼い私の方が今の私よりずっと楽しそうに泳いでいる。なんでだろう。フォームがなってなくて全然前に進まなくて苦しい筈なのにどうしてなんだろう。

「ゴール、すごいなかなたー。将来オリンピックに出れるんじゃないか。」

なんとか父のところまで泳ぎきってどこか誇らしげな私をこれでもかと言うくらい優しい目で見つめ喜ぶ父。

「えへへーあいー」

嬉しそうに笑う私。微笑ましく温かい幸せな光景。

その後も幼い私は父と泳ぎの練習をしていた。

「頑張れ、頑張れ。」

父に応援されながら、手を引っ張られバタ足の練習をする私。

さっきよりはだいぶましになってきたけど、まだ無駄が多い。気がつけば私も頑張れと応援をしていた。聞こえる筈ないのに。

「とーしゃー」

ふと、バタ足の練習をやめ父の方を向く私。

「どうしたんだ彼方。疲れちゃったかい。休もうか。」

そんな私を心配する父。

「やっ、すりゅ。泳ぐの。かなね、楽しいからねいっぱいすりゅの。えへへー。」

父の心配をよそにふんわりと無邪気にどこか誇らしげに笑って見せる私。

そっかこの頃は初めてのことにワクワクしていたんだ。前に進もうとしても進むどことろか阻んでくる水が面白くて不思議でしかたなかったんだ。

確かこれがきっかけで水泳に興味を持つようになったんだよね。

私、こんなに小さい頃から泳ぐの好きだったんだ。そう思うとほっとして心が暖かくなった。

眠い。私はまた暗闇の中に沈んでいった。




読んでくださってありがとうございます。

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